複数のタスクが舞い込むと混乱してしまう。結局どれも中途半端になってしまうから、改善したい……。
業務が終わらず休憩やリフレッシュ時間がとれない。ストレスが溜まる状況をなんとかしたい……。
こんな状況に悩んでいる中堅社員の方はいませんか? 「タスクに追われる」のではなく「タスクを追う」にはどうすればいいのでしょうか。
あなたが仕事に「追われてしまう」理由
「次々にやることが増えていくとプレッシャーで緊張状態が続いてしまう」「複数の仕事をうまく処理できず、周りの評価が下がっていると感じる」 そんなあなたはタスクの対処に課題を感じているかもしれません。実は、これは職位や経験年数に関係なく、多くのビジネスパーソンが直面する悩みなのです。
たとえば、若手社員は、基本的な業務スキルの習得に加え、部署特有の専門知識や社内システムの使い方まで、覚えることが山積み。その一方で、日々の業務もこなさなければなりません。「この作業、もっと効率的なやり方があるのでは?」と感じながらも、先輩社員に質問するタイミングを見計らったり、マニュアルと格闘したり。「仕事を覚える」と「仕事をこなす」の両立に、多くの若手が頭を悩ませているのではないでしょうか。
中堅社員ともなれば、さらに状況は複雑になります。ラーニングイノベーション総合研究所「中堅社員の意識調査(直面する壁 TOP3)」でも、「仕事の量の多さ」は中堅社員にとって高い壁になりやすい要因のひとつとして挙げられています*1。自身の担当プロジェクトに加え、若手の指導や部門間の調整役も担うため、気づけば1日中会議や打ち合わせで予定が埋まってしまうのです。
ベテラン社員も例外ではありません。経験と実績があるからこそ、重要案件や複数部署にまたがる大規模プロジェクトのかじ取りを任されます。また、経営層からの相談役や社外との折衝など、即断即決を求められる場面も増えていきます。
このように、立場は違えども「仕事に追われる」という課題は共通しています。では、どうすれば「仕事を追う」側に回れるのでしょうか。
仕事を「追う」ビジネスパーソンになるためには
では、「仕事に追われる」感覚から脱し、「仕事を追っている」感覚になるためにはどうしたらいいのでしょうか? 今すぐに改善させるには、「自分の業務の優先順位や進行状況を把握しながら計画的に仕事を進めてみる」のがおすすめです。
時間管理コンサルタントで(有)ビズアーク取締役社長の水口和彦氏も「仕事量はアポイントメントとタスクの合計」だと述べ、自分の仕事を見える化しタイムマネジメントの計画を立てることをすすめています。*2
たしかに「見える化」すれば、タスクの詰め込み過ぎなどの問題が把握できるようになり、「仕事に追われる」感覚から抜け出せるでしょう。
でも、「見える化」したところでタスクは減らせない……そうお悩みの方は「仕事を断る」選択肢をもつことも大切です。
BMコンサルティング代表取締役でビジネス数学教育家の深沢真太郎氏は「仕事を断る」というスキルを身につけ、「抱える仕事を減らせばいい」と言います。*3
同氏いわく、仕事を断るうえで必要なのは以下のたった2種類の数値。
①時間(できないものはできない)
②お金(ビジネスとして適切でない)*3
それぞれ具体例を挙げてみます。
- 時間(できないものはできない)→時間を理由に断ってみる
たとえば、チームで進行中の重要プロジェクトの締切直前期のあなた。そんな中、他部署から「新規プロジェクトの企画会議に参加してほしい」という依頼が来たとしましょう。この場合、現在のプロジェクトの具体的な作業量を示しながら、断ることができるはずです。
ところが、周囲の期待に応えたい方や、部署間の関係性を気にする方は、「なんとか時間を作ります」と引き受けてしまいがちです。結果として、本来集中すべき締切間近のプロジェクトにも、新規の企画会議にも中途半端な対応となってしまうのです。
- お金(ビジネスとして適切ではない)→お金を理由に断ってみる
毎月の営業報告書について「これまで通り手作業でExcelに入力してほしい」と上司から言われたとします。この作業に月10時間(給与換算で3万円)かかっているとき、自動化ツールを使えば初期費用5万円で月1時間(給与換算で3千円)に削減できます。
半年で比較すると:
現状:3万円 × 6ヶ月 = 18万円
新方式:初期費用5万円 + (3千円 × 6ヶ月) = 6.8万円
削減効果:11.2万円
このように具体的な数値で示すことで、「現状のやり方では、他の重要な業務に使えるはずの時間とコストが無駄になっている」と説明できるでしょう。会社の利益を考えた建設的な提案として受け止めてもらいやすく、上司のやり方を否定することなく改善案を出せるのがポイントです。
筆者も実践!「見える化」から始める仕事の整理術
まず私がとった行動は、一週間のスケジュールを可視化すること。タスク管理表をスプレッドシートで作成しました。その際、前述の水口社長の言葉「仕事はアポイントとタスクの合計である」を意識してアポとタスクをわかりやすくわけてみました。
見やすくするために色分けもしたのですが、書き出してみて愕然としました。スケジュールはびっしり。そして2つの問題点が浮かび上がってきたのです。
1つ目の問題は、「予定を入れる場所」と「作業する場所」の区別ができていなかったこと。クライアントとの打ち合わせやミーティングだけをスケジュール管理し、残りの時間で必死に作業を詰め込もうとしていたのです。
2つ目の問題は、すべての作業を「今すぐやるべきこと」として抱え込んでいたこと。そこで、各タスクに対して以下の質問を投げかけてみました。
- 本当に今週やらねばならない作業か?
- この作業は必要不可欠か?
この2つの質問で仕分けした結果、特に集中力の落ちる午後の時間帯のタスクを見直すことができました。優先順位の低いものは後回しにし、その結果、午後に適度な空き時間が生まれたのです。
この変化で気持ちに余裕が生まれ、重要な仕事により集中できるようになりました。
仕事に追われてしまう人は、筆者のように目の前の仕事に対応することに一生懸命になりすぎてしまっているのではないでしょうか。まずやるべきなのは、「自分の仕事の優先順位を考える時間や計画を立てる時間」を意識的にとること。これが客観的になるための一歩だと思いました。
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マルチタスクに「追われる」のではなくて「追う」方法をご紹介しました。仕事に追われる方にとって、本記事が役に立てば幸いです。
*1 PR TIMES|【調査レポート】「育成の空白地帯」中堅社員600名へ初調査!中堅社員がつまずくターニングポイントが明らかに!
*2 ダイヤモンド・オンライン|仕事に追われる人が陥る「今週中に終わればいい」という甘い罠
*3 東洋経済オンライン|時間に追われる「仕事を断れない人」の深刻盲点
橋本麻理香
大学では経営学を専攻。13年間の演劇経験から非言語コミュニケーションの知見があり、仕事での信頼関係の構築に役立てている。思考法や勉強法への関心が高く、最近はシステム思考を取り入れ、多角的な視点で仕事や勉強における課題を根本から解決している。