「タスクを小さく分解する」は逆効果? 重要なタスクを先延ばしにしてしまう人に伝えたいふたつの対策

タスクの分解「大きなタスクは、小さく分解すると先延ばしがなくなる」

こんなアドバイスを聞いて、さっそく実践してみた人は多いはず。もちろん筆者もそのひとりです。

この方法でうまくいく人がいる一方で、毎日たくさんのタスクをこなしているはずなのに、なぜか一番重要な作業だけが締め切り直前に残って大慌てしてしまう……というケースも少なくありません。

それもそのはず。「タスクを小さく分解する」という手法には、じつは大きな落とし穴が存在するからです。

今回は、このタスク分解に潜む落とし穴を解説し、本当に重要な仕事を着実に前へ進めるための対策をご紹介します。

なぜ一番大事なタスクが進捗ゼロなのか?

タスクを分解すること自体は大正解

まずお伝えしたいのは、「大きなタスクを小さく分解する」という手法自体は間違いなく効果的だということ。

これは、習慣化コンサルタントの古川武士氏が著書で紹介している「チャンクダウン」と呼ばれる考え方にも通じるもの。できるかぎり小さなタスクに分解することで、「これくらいならできるかも」と感じ、行動しやすくなるのです。

また、ほんの少しでも「前進できた!」と実感できれば、意欲や満足度が向上することも研究で示されています。*1

犯人は「脳の省エネモード」と「偽の達成感」

では、なぜ一番重要な作業だけが残ってしまうのでしょうか? それは、私たちの脳に「小さくてラクな作業」ばかりを優先して選んでしまうクセがあるからです。

私たちの脳には、できるだけ省エネでいようとする性質があります。*2

そのため、タスク一覧を見たとき、「これは少し大変そうだぞ」と感じるものがあると、無意識に後回しにしてしまうのです。

タスクの先延ばし

さらにタスクを完了してチェックをつける行為は、強い達成感をもたらします。その結果、脳はより手軽に達成感を得ようと、「簡単なタスク」ばかりを優先して消化しようとするのです。*3

どんなに細かく分解したとしても、重要度の高い作業ほど一定の負荷がかかるのは当然のこと。だからこそ、脳は無意識に逃げ腰になってしまうのです。

しかし、この「脳の逃げ腰」は、タスクとの向き合い方を少し変えるだけで簡単に防ぐことができます。次から、具体的な対策をご紹介します。

重要なタスクを前に進めるためのふたつの対策

問題は、分解したタスクのなかから簡単なものばかりを優先し、少し負荷のかかる重要なタスクを先送りにしてしまうことでした。ここでは、この構造を逆手に取るふたつの対策を紹介します。

対策1 簡単な作業は「ウォーミングアップ」として使う

1日の作業時間のなかに、あらかじめ「少し負荷のかかるタスク」のための時間をつくっておきましょう。

とはいえ、いざその時間になると拒否反応が出るもの。やりたくない、と感じるのが普通です。そんなときに、あえて簡単なタスクから手をつけるのです。

作業をしていると、脳の側坐核が刺激されてだんだんやる気が出てくる「作業興奮」という現象があります。簡単な作業に手をつけることで作業興奮が起き、重要なタスクに取りかかる前の「助走」となるのです。結果として、負荷の大きい作業に取り組みやすくなります。

ここに注意!

簡単な作業でウォーミングアップをする際は、必ず「時間の上限」を決めておきましょう。時間制限を設けないと、「もう少しだけ……」とラクな作業を続け、肝心の重要タスクを先延ばしにしてしまうからです。

行動力のブースト

対策2 「重要なタスクの進捗率」で達成感を得る

1日の終わりにタスクリストを眺めて、「いくつタスクが消せたか」を振り返るのはやめましょう。その代わりに、「重要なタスクが何%進んだか」を評価の軸にするのです。

タスクを消すたびに得られる小さな快感は、進捗が積み重なっていく実感からも同じように得られます。たとえば、メモに簡単な進捗グラフを書いておくと、より達成感を得やすくなるのでおすすめです。もちろんアプリを使ってもかまいません。

ここに注意!

進捗率は、あくまで目安として使いましょう。厳密に測ろうとしすぎると、それ自体が新しいタスクになってしまいます。「だいたい3割」くらいのアバウトな感覚で十分です。

***

タスクを小さく分解する方法は、行動力をブーストしてくれます。ですが、本当に重要な作業を進めるには、それだけでは少し物足りないのも事実です。重要なタスクとの向き合い方を少し工夫するだけで、締め切り前に慌てる場面は確実に減っていきます。

(参考)

*1: Harvard Business Review|The Power of Small Wins
*2: Journal of Experimental Psychology: General|Decision Making and the Avoidance of Cognitive Demand
*3: Management Science|Task Selection and Workload: A Focus on Completing Easy Tasks Hurts Performance

よくある質問(FAQ)

Q. 小さな成功体験を積むのは、悪いことなのですか
着手のためのスモールステップと、達成感で満足して止まってしまうことは別物です。前者は最初の一歩を軽くするための工夫であり、後者はチェックを消すこと自体が目的化してしまった状態を指します。分けて考えるのがポイントです。
Q. 「ウォーミングアップ」のつもりが、結局そのまま1日が終わってしまいそうです
もっとも起こりやすい失敗です。タイマーなどで時間を物理的に区切り、鳴ったら重要な作業に移ることをあらかじめ決めておきましょう。時間ではなく「気分が乗ったら」で区切ろうとすると、ほぼ確実に延長してしまいます。
Q. 「重要なタスクの進捗率」は、どうやって測ればいいですか
厳密である必要はありません。「構成案が3割形になった」「見積もり表の半分が埋まった」など、自分の感覚で10%刻みにメモする程度で十分です。数字にすること自体が、消したタスク数への意識を薄める効果を持ちます。
Q. チームのタスク管理にも応用できますか
応用できます。チームの進捗会議でも「今週消化したタスク数」ではなく「主要な成果物が何%進んだか」を共有する運用に変えるだけで、メンバー全員の達成感が重要なタスクに向きやすくなります。

【ライタープロフィール】
柴田香織

大学では心理学を専攻。常に独学で新しいことの学習にチャレンジしており、現在はIllustratorや中国語を勉強中。効率的な勉強法やノート術を日々実践しており、実際に高校3年分の日本史・世界史・地理の学び直しを1年間で完了した。自分で試して検証する実践報告記事が得意。