予定が崩れても動じない人は、最初の数十秒が違う。差し込みに強くなる3つのアクション

焦っている男性

丁寧に立てた一日の予定が、差し込み案件ひとつで崩れていく。元の仕事も新しい仕事もどちらも中途半端になり、焦りからミスまで重なってしまう。

臨機応変にさばいていく同僚を横目に、「自分は要領が悪い」と責めてしまう。心当たりがあるかもしれません。

でも、それは能力不足や性格の問題ではありません。急な変更に弱いのは、脳が「予期せぬ認知負荷」に対応しきれず、一時的にフリーズしているだけ。だとすれば、その場で脳を落ち着かせる手順さえ知っておけば、対応する力は後から身につけられます。

本記事では、急な差し込みに動じないための「3つのアクション」を、脳科学的な視点から紹介します。

今日から使える3つのアクション 1. 差し込みが来た瞬間、手を止めて「視界を遮断」する
2. ノートに3つの要素を書き出す「5分間の脳内片付け」
3. 元の仕事への「復帰メモ」を1行だけ残す アクションの詳細をすぐ見る

なぜ、急な変更で仕事が「ぐちゃぐちゃ」になるのか?

理由1: 脳の「作業机」であるワーキングメモリがパンクするから

人間が何かを考えたり判断したりするとき、情報を一時的に置いておく「作業机」のような領域を使います。これを心理学ではワーキングメモリと呼びます。

このワーキングメモリの容量はとても小さく、限られた量の情報しか同時に扱えません。*1

元のタスクの記憶を机の上に置いたまま、そこへ新しい差し込み案件の情報が飛び込んでくると、机の上は一瞬で散らかってしまいます。

何から手をつければいいのか判断がつかなくなる、あの「頭が真っ白」になる感覚は、まさにワーキングメモリが処理しきれる容量を超えてしまった状態そのものなのです。

頭がパンクしている

理由2: 「計画の錯誤」によって、変更そのものに抵抗を感じるから

もうひとつの理由は、心理学でいう「計画の錯誤」です。人は自分の立てた計画について、無意識のうちに「うまくいくはずだ」と楽観的に見積もる傾向があります。*2

過去に何度も予定どおりに進まなかった経験があるにもかかわらず、今回だけは順調にいくと思い込んでしまうのです。

そのため、いざ差し込みや仕様変更を突きつけられると、「立てた計画は崩れないはず」という思い込みが裏切られたショックから、強い心理的抵抗が生じます。感情の切り替えに時間がかかり、その間に焦りだけが積み重なっていくのです。

コラム 臨機応変な人と何が違う?

差し込みに動じない人は、生まれつき冷静なわけではありません。ある研究では、割り込みが作業に与える影響の大きさには個人差があり、それが新しい状況への開放性や、きちんとした段取りを好む度合いといった性格の傾向と関連することが報告されています。*3

とはいえ、この研究が示しているのは、あくまで受ける影響の大きさに個人差があるということ。感じ方や受ける影響の大小にかかわらず、割り込み直後にとる「行動」を変えれば、その後の混乱は抑えられます。性格そのものを変えなくても、次に紹介する行動を身につければ、差し込みへの強さは後から育てられるものなのです。

突然の差し込みに強い人がやっている「3つのアクション」

ここまで見てきた「ワーキングメモリのオーバーフロー」と「計画の錯誤」、このふたつが頭を真っ白にする正体です。だとすれば対処のカギは、机の上が散らかりきる前、思い込みが崩れた直後の「数十秒〜数分」にあります。この短い時間に何をするかで、その後の展開が大きく変わるのです。

ここでは、すぐに実践できる3つのアクションを紹介します。

成功の鍵を見つけた男性

1. 差し込みが来た瞬間、手を止めて「視界を遮断」する

こんなときにおすすめ

急な仕事を振られた瞬間、心臓がバクバクして焦り、元の仕事も新しい仕事も手がつかなくなってしまうとき。

こうしてみよう

すぐに新しい作業を始めたり、パソコンの画面を凝視したりしないこと。いったんキーボードから手を離しましょう。ノートの白紙ページを開く、目を閉じる、窓の外を見るなど、パソコンの画面(元の仕事の視覚情報)を物理的に視界からシャットアウトします。

なぜ効くのか

先ほど見たとおり、ワーキングメモリの容量はもともと限られています。*1 突発的な差し込みで動揺しているときに、そのままパソコンの画面を見つめ続けると、元のタスクの視覚情報が入り続け、ただでさえ圧迫されている「作業机」にさらに情報が積み上がってしまいます。

差し込みへの対応そのものは急いでいても、視界を変えて新しい情報の流入をいったん止めることは、決して回り道ではありません。入ってくる情報量を絞ることで、ワーキングメモリに余白が生まれ、冷静な判断がしやすい状態に立て直せます。

2. ノートに3つの要素を書き出す「5分間の脳内片付け」

こんなときにおすすめ

「あれもこれもやらなきゃ」とパニックになり、頭の中だけでぐるぐると優先順位を悩んで時間が過ぎてしまうとき。

こうしてみよう

焦ってすぐ動くのは厳禁です。「5分だけ時間をください」と周囲に伝え、手元のノートに次の3つを書き出しましょう。

①いま中断したタスクの現在地
②飛び込んできたタスクの締め切りとゴール
③今日ほんとうにやるべきことの再選定(優先順位の引き直し)

なぜ効くのか

情報を紙に書き出して脳の外に預け、内部での処理負担を減らす行為は「認知的オフロード」と呼ばれ、容量の小さいワーキングメモリの負荷を軽くし、高い認知負荷のかかる場面でのパフォーマンスを高めることが確認されています。*4

情報が目に見える形で整理されると、脳は「状況をコントロールできている」と判断しやすくなります。頭の中だけで優先順位を組み立てようとするよりも、いったん書き出したほうが、結果的に合理的な判断がしやすくなるのです。

3. 元の仕事への「復帰メモ」を1行だけ残す

こんなときにおすすめ

差し込み案件をやっている最中も、「元の仕事が終わるかな……」と気になってしまい、目の前の作業に集中できずミス連発してしまうとき。

こうしてみよう

差し込み案件を「今すぐやる」と決めたなら、元の仕事はいったん完全に忘れます。そのために「15時に提案書作成に戻る。次は4ページ目のデータ挿入から」など、元の仕事に復帰するための一歩を1行だけノートに残しておきましょう。

なぜ効くのか

未完了のタスクが頭に残り続け、集中を妨げる心理現象があります。人は達成できていない目標を、達成した目標よりも強く記憶にとどめ、関係のない作業をしているときにまでその目標が意識に割り込んでくることがわかっています。*5

ところが、その目標について具体的な計画を立てるだけで、こうした侵入的な思考や作業への干渉はほとんど消えることも確認されています。*5 「次にやるべきこと」を1行書き記しておくだけで脳は安心し、いま目の前にある差し込み案件にリソースを集中させられるのです。

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臨機応変に対応できる人と自分を比べて、性格や能力の違いだと思う必要はありません。差し込みが来た直後の「行動」だけ変えればいいのです。

Change habits

よくある質問

Q. 差し込みのたびに5分もかけていたら、かえって時間が足りなくなりませんか?
パニックのまま手をつけて後からミスの手直しに追われる時間を考えると、最初の5分は決して無駄にはなりません。書き出す作業によって優先順位が明確になり、結果的にやり直しが減ります。
Q. 復帰メモはどのくらい具体的に書けばいいですか?
「次にやる一歩」がわかる程度で十分です。「提案書の続き」ではなく「4ページ目のデータ挿入から」のように、再開したときすぐ手が動くレベルまで具体化すると効果的です。

【ライタープロフィール】
柴田香織

大学では心理学を専攻。常に独学で新しいことの学習にチャレンジしており、現在はIllustratorや中国語を勉強中。効率的な勉強法やノート術を日々実践しており、実際に高校3年分の日本史・世界史・地理の学び直しを1年間で完了した。自分で試して検証する実践報告記事が得意。