なぜあの人は「待ち時間」がないのか。仕事を止めない4つの戦略

時計を見つめる男性

「あの件、○○さんの確認待ちで動かせない」。そう思いながら、ほかの作業に移る。真面目に取り組む人ほど、こうした「待ち」の案件がいくつも積み上がっていきます。

やっかいなのは、待っているあいだも気持ちのどこかがその案件に引っかかり、目の前の仕事に集中しきれないこと。しかも動き出すタイミングは相手次第で、自分ではどうにもできないもどかしさがつきまといます。

けれど、待つしかないように見えるこの状況にも、自分の側でできることは残されています。相手の返信をただ待つのではなく、相手が動きやすくなる働きかけをあらかじめ組み込んでおく。そんな「先手」の発想が、待ちの時間を縮める鍵になります。

なぜ「待ち」が仕事を詰まらせるのか

「確認待ち」の時間には、2つの損失が発生し続けています。

ひとつめの損失は、ワーキングメモリを消費し続けることです。未完了のタスクは、思考の片隅に居座り続け、脳の処理能力を奪っていきます。心理学では「ツァイガルニク効果」と呼ばれ、未完了の物事は完了した物事より記憶に残りやすいことが知られています。*1

ほかの仕事をしていても、頭のなかでは常にその件が動いているのです。

ふたつめの損失は、仕事のリズムが他人に支配されることです。「相手が返信をくれたら動く」状態は、自分のスケジュールの主導権を相手に渡していることに等しいといえます。

つまり「待ち」とは、思考力と主導権の両方を奪われている状態なのです。抜け出す鍵は、自分の仕事の組み立て方を変えることにあります。

先手戦略1 「たぶんこうなる」で動き出す先行着手

100%の正解を待つ必要はありません。「おそらくこうなるだろう」という仮の前提を立てて、今できる部分から手を動かす。これが「先行着手」です。

80%done

ポイントは、「変わりにくい部分」から先に進め、迷いが残る部分だけを「保留」として区切ること。8割が固まっていれば、あとで多少の修正が入っても、ゼロから作業するより圧倒的に速く仕上げられます。

こんな人におすすめ

・確認待ちで、いつも手が止まってしまう人

・「勝手に進めていいのか」と着手をためらいがちな人

こうしてみよう!

・変わりにくい部分から先に手を動かす(たとえば、構成案が固まっていれば資料の骨組みを先につくる)

・迷いが残る部分だけを「保留」として区切る

・進めた内容はあとで共有できるようメモしておく

先手戦略2 相手が「YES」しか言えなくなる選択肢提示

「どうしましょうか?」という白紙の質問は、相手にとって負担が大きく、返信が遅れる原因になります。コロンビア大学のシーナ・アイエンガー氏らの研究では、選択肢が多すぎるとかえって決断力が鈍ることが示されています。*2

そこで、相手が「選ぶだけ」で済むよう質問を設計することが有効です。

改善例を挙げておきます。

 「A社への提案について、A案(価格重視)とB案(付加価値重視)を検討しました。個人的にはA案が良いと思いますが、いかがでしょうか。ご異論なければこのまま進めます。」

こんな人におすすめ

・「どうしましょうか?」と聞いてしまいがちな人

・依頼のメールになかなか返信がもらえない人

こうしてみよう!

・選択肢を2〜3案に絞り込む

・自分がおすすめする案と理由を添える

・「YES」か「A・B」で返信が完結する形にする

先手戦略3 沈黙を「承認」に変えるデッドライン宣言

「お手すきの際に」は永遠に訪れないことが多く、案件がそのまま眠ってしまいます。有効なのは、期限までに反応がなければこちらの案で進めるという「オプトアウト型」の宣言です。ヘブライ大学の研究でも、締め切りがあると無駄が減り、集中力や生産性が高まることが報告されています。*3

「反応しない」こと自体が実質的な「承認」になるため、催促のストレスを与えずに、仕事を止めずに済みます。yes/noを選択する男性

ただし前提として、期限は相手が現実的に反応できる余裕をもって設定してください。判断の重さに見合わない短い期限で宣言すると、承認の手間を省く工夫ではなく一方的な通告として受け取られ、かえって信頼を損ねます。軽い確認なら2〜3営業日、判断を要する内容ならさらに長めが目安です。

例を挙げておきます。

 「7月3日(金)17時までにご返信がない場合は、この方針で進めさせていただきます。異なるご意見があればご一報ください。」

こんな人におすすめ

・「お手すきの際に」と書いた案件が放置されがちな人

・催促に気まずさを感じる人

こうしてみよう!

・依頼の文末に、相手の状況と判断の重さに見合った具体的な期限を明記する

・「期限までに返信がなければこの方針で進めます」と添える

・「異なるご意見があればご連絡ください」と選択の余地も残す

先手戦略4 「動けるタスク」だけを残すタスクの仕分け術

ToDoリストに「動けるタスク」と「待ちタスク」が混在していると、それが停滞感の正体になります。APAによれば、異なる種類のタスクを頭のなかで行き来すること自体が「切り替えコスト」を生み、生産性を損なうことがわかっています。*4

対策は、この2種類を明確に分けて管理することです。

こんな人におすすめ

・ToDoリストを見ても何から手をつけるべきかわからない人

・催促を忘れて案件を放置してしまった経験がある人

こうしてみよう!

・ToDoリストを「動けるタスク」と「待ちタスク」に分ける

・「待ちタスク」には着手日ではなく「催促予定日」を書き込む

・「動けるタスク」から優先して着手する

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「待ち」をゼロにすることはできません。けれど、待ちを減らす工夫は、自分の仕事の組み立てに組み込めます。仮の前提で動く、選択肢を渡す、期限を告げる、タスクを分ける。どれも今日から試せる小さな一手です。次に「確認待ち」の案件に出会ったら、まずひとつ、自分から先に動いてみてください。

take action

よくある質問(FAQ)

Q. 先行着手で進めた部分が、あとでやり直しになったら意味がないのでは?
変わりにくい部分から着手すればリスクは小さくできます。迷う部分は「保留」として区切りましょう。
Q. デッドライン宣言は高圧的な印象を与えないか?
相手が現実的に反応できる期限にすることが前提です。そのうえで「異なるご意見があればご一報ください」と添えれば、返信の手間を減らす配慮として伝わり、一方的な印象を避けられます。
Q. 待ちタスクが多すぎて管理しきれない場合は?
依頼した時点で「催促予定日」を書き込んでおくと、都度考える必要がなくなります。

【ライタープロフィール】
柴田香織

大学では心理学を専攻。常に独学で新しいことの学習にチャレンジしており、現在はIllustratorや中国語を勉強中。効率的な勉強法やノート術を日々実践しており、実際に高校3年分の日本史・世界史・地理の学び直しを1年間で完了した。自分で試して検証する実践報告記事が得意。