配られたカードで勝負しなくていい。ベストセラー著者が語る「人間関係の自炊」のすすめ

五百田達成が語る「誘える人」がぜんぶ手に入れる理由|人間関係を自炊する大人のコミュニケーション術

「今度、ご飯でも行きませんか」。そこまで打った誘いのLINEを、「これでいいのかな」と結局送れずに消してしまう。気づけば週末の予定がなく、最近は誰かに誘われる回数も減った……。そんな心当たりがあるかもしれません。

シリーズ累計120万部を超えるコミュニケーション本の著者で心理カウンセラーの五百田達成さんが、最新刊『「誘える人」がぜんぶ手に入れる』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)で正面から向き合ったのは、まさにその「誘う」という行為です。

なぜ大人になると人間関係は縮んでいくのか。そして、自分から誘えるようになると何が手に入るのか。人間関係を「自炊」するという考え方について、五百田さんが語ってくれました。

取材・構成・写真/STUDY HACKER編集部

【プロフィール】
五百田達成(いおた・たつなり)
心理カウンセラー。米国CCE,Inc.認定GCDFキャリアカウンセラー。東京大学教養学部卒業後、KADOKAWA、博報堂、博報堂生活総合研究所を経て、五百田達成事務所を設立。個人カウンセリング、講演、執筆など、多岐にわたって活躍中。専門分野は「コミュニケーション心理」「ことばと伝え方」「SNSと人づきあい」。会社員としての実体験と豊富なカウンセリング実績に裏打ちされた、人間関係、コミュニケーションにまつわるアドバイスが好評。「あさイチ」(NHK)、「ヒルナンデス!」(日本テレビ)ほか、メディア出演も多数。著書に『察しない男 説明しない女』『不機嫌な長男・長女 無責任な末っ子たち』『話し方で損する人 得する人』『超雑談力』『不機嫌な妻 無関心な夫』『会話IQ 本当に頭がいい人の話し方』(以上、ディスカヴァー・トゥエンティワン)などがあり、シリーズ120万部を超えている。文章・エッセイ教室「おとなの寺子屋」も好評。

「偏食家こそ自炊せよ」。好きな人とだけ生きるのは、夢ではない

僕は「コミュニケーションのプロ」と名乗ってこういう本を書いているので、朗らかで誰とでも仲良くできるオープンマインドな人だと誤解されがちです。でも実際は、年齢を重ねてどんどん「うるさい人」になっている。

好き嫌いが激しくて、「あの話し方が気に食わない」「あの人とはテンションが上がらない」と思ってしまう。そういう人間なんです。もちろん表面的には、社会人として「どうも、お世話になっております」とやりますけどね。

大人は「もうサラダやめた」でいい

学校教育では「みんなと仲良くしなさい」「わがままは良くないよ」と教わります。でも、ある程度の大人になったら、好きな人とだけ暮らしたいと思うわけです。

給食は「好き嫌いせず食べなさい」と言われますよね。与えられているんだから、子どもはそれでいい。でも大人になったら、「もうサラダやめた。雰囲気で食べてたけど、別に好きじゃないし、食べなくても死なない」と開き直る人も結構増えました。

「この店の味は落ちた」なんて言っているグルメな"うるさい人"は、最終的に家で肉を焼けばいいんです。実際に焼いている。それが本物のグルメですよね。人間関係も同じで、「偏食家こそ自炊せよ」。開き直って、自分の好きなようにコントロールしていいと思うんです。

僕はたまたま会社員ではない職業なこともあって、ハッピーな人とだけ付き合える状態になっています。その延長で、気の合う人とだけ積極的に誘い合っていれば、24時間365日、ハッピーな人とだけ暮らせる。それはとても夢のようなことなんじゃないか。この実感が、本書の出発点にあります。

「ぜんぶ手に入れる」は実利の宣言

タイトルを「うまくいく」にするか「ぜんぶ手に入れる」にするかは、編集者と喫茶店で4時間ほど行ったり来たりしました。「うまくいく」は、幸せな日常がふわっと広がるイメージ。一方「ぜんぶ手に入れる」には、もう少し実利があります。

パートナー、結婚、仕事の可能性、素敵な未来を、自分から取りに行く。「誘う」というたったひとつのアクションで、人生のいろんなことが手に入る。そういうメッセージを掲げたタイトルです。

人を食ったような言い方ですが、真実を言えている気もします。『ドラゴン桜』に「バカほど東大へ行け」というような逆説的なメッセージがありましたが、あれに近いイメージかもしれません。

30歳から孤独になる理由と友達が自動供給されなくなる大人の人間関係の縮小メカニズム

30歳から孤独になるのは「当たり前」

一方で、そんな「夢」に反して、30歳から孤独になるのは当たり前だと僕は思っています。要因は大きくふたつあります。

友達は、枝分かれしていく

1つめは、ライフステージの分岐です。1年B組にいた同級生たちも、進学したりしなかったり、就職したりしなかったり、結婚したりしなかったり、転勤したりしなかったり。ひとつの源流だった友達が、どんどん枝分かれしていく。

分岐した先の人同士は、話が合わなくなっていきます。中学のとき同じ先生の悪口を言っていた友達と、20年後に話が合うわけがないんです。だから孤独になるのは当たり前で、問題は「その先で友達を作れるか」です。

女性のライフコースについては、「子どもが成人して介護も終われば、いつかまた合流する。それまでのしばしの別れだよ」という言い方をよくします。でも、30年後に友達が帰ってくるまで孤独に耐えるわけにはいかないので、今ここで頑張るしかないんです。

人間関係は、もう「供給」されない

2つめの要因は、「供給されない」ということ。多くの人にとって会社は、いわば40年制の学校のようなもので、転職でもしない限りシャッフルが起きません。

中学や高校のように、1年ごとに「はい、クラス替え」、さっちゃんと気まずくなったら別のクラスでみきちゃんと出会えました、なんてことは誰もやってくれない。学生生活の"自動供給"に慣れたまま卒業すると、「職場に面白い人いない、終了」「合コンとか無理、終了」で、人間関係はどんどん減っていくんです。

学生時代はカードが勝手に配られていた、と言い換えてもいいでしょう。なんなら「お前とは絶交だ」なんて、贅沢にカードを捨てたりもしていたわけですから。それなのに、卒業した途端、カードは配られなくなる。

恋愛には、マッチングアプリという大きな革命が起きました。でも、友達のマッチングアプリはありません。一緒に映画に行く友達、ライブを観に行く友達は、自分で誘って作っていくしかないんです。

「誘われ待ち」でいられるのは期間限定

「私、誘われたらフットワークよく行くんで」という芸風で、結構なところまでは行けます。でもそれは20代、30代まで。周りが結婚などで抜けていって、自分が最後のひとりになってしまう。そうすると当たり前ですが、誘われません。

年齢が上がっても同じことが起きます。40歳の人は20歳を誘いますが、20歳の人はあまり40歳を誘わない。「今回は部長クラス以上だけを呼びました」というバーベキューは聞いたことがないはずです。逆方向の権力勾配のようなものがあるんですね。

だから人はどこかで、誘う側に回らなくてはいけない。それなのに、みんなその技術を身につけずにうかうかしているんじゃないか。ちょっと脅すようですけど。

誘えない人は誘いたい人|断られても傷つかずカードを配り直す大人の友達の作り方

「誘えない人」は「誘いたい人」

とはいえ、「誘うのはハードルが高い」という気持ちもよくわかります。ただ、ここで少し考えてみてほしいんです。半分言葉遊びかもしれませんが、「俺は誘わない。面倒くさいもん。一人の方がいいもん」という人は、"誘わない人"です。

"誘えない人"は、誘いたいけど誘えない。can'tなんです。「誘えない」と悩んでいる時点で、あなたは「誘いたい人」なんですよ。「誘いたいけど誘えない」という日本語は、ちゃんと成立しますから。

断られても、傷つかなくていい

誘えない理由は、「断られたくない」「迷惑をかけたくない」「めんどくさい」の3つに整理できます。どれでつまずくかは三者三様ですが、心理的に大きいのは「断られたくない」です。

実は僕も、続けて断られると誘わなくなります。昔はいちいち傷ついていました。「そうか、この人は僕と仲良くなりたくないのか」と。

でも今は、「ご縁がなかった」と思えます。僕に配られたカードだと思ったけれど、そのカードは有効ではなかった、と。そう思えないと、人は固執してしまう。恋愛にありがちですが、「1分でもいいから」「お茶だけでも」と、待ち伏せのような方向にエスカレートしていくんです。

そうではなく、山札にまだカードがあると思えれば、「ダメだったか。残念。じゃあ次のカードを引こう」と思えます。

カードは、配り直せる

スヌーピーの「配られたカードで勝負するしかないのさ」という有名な言葉があります。普遍的なメッセージとしてはいいのですが、僕が言いたいのはその逆です。

カードは配り直せる。山札から、自分で引けばいい。残りのカードが2枚になったら、それは苦しいですからね。自分でカードを増やせるということは、学生時代に「絶交」と言ってカードを捨てていた、あの贅沢な権利を取り戻すということでもあります。

大人は「偏食家」でもいい。一晩中チーズケーキだけ食べていいのは、大人だけです。子どもの頃は「そんなにバカみたいに食べないの」と言われたけれど、大人ならいい。夕飯が食べられなくなったって、楽しく生きて死ねばいいんです(笑)。

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「好き嫌いが激しい」と繰り返し語る五百田さんですが、取材では、いろいろな人と遊ぶ話をするときがいちばん楽しそうでした。「ちょっと脅すようですけど」と笑いながら差し出される言葉は、脅しというより、遊び上手な大人からの招待状のように響きました。

取材に同席した編集部員から思わずこぼれたのは、「読むと、誘いたくなる」という一言。この第1回を読んで、誰かの顔が浮かんだ人もいるかもしれません。

※第2回では、やりがちなNGな誘い方と、OK率を上げる「断ってもいいよ感」のつくり方を紹介します。

五百田達成さん ほかのインタビュー記事はこちら】

  • 「僕とご飯に行きませんか」はなぜ断られるのか。誘いのLINE、初心者は「全部逆」をやっている(※近日公開)
  • 「誘う」とは、誰とどう生きるかを決めること。最初の一歩は「近い相手に3通」(※近日公開)
「誘える人」がぜんぶ手に入れる

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【ライタープロフィール】
岡 健作(おか・けんさく)

株式会社新恵社 代表取締役/株式会社スタディーハッカー創業者。1977年生まれ、福岡出身。2014年、メディア「STUDY HACKER」を立ち上げ。以後運営に携わる。
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