
誘いの文面をなんとか書き上げたのに、読み返すたびに自信がなくなって、下書きに残したまま数日が過ぎていく……。その文面、直すべきは言い回しではなく、組み立ての順番かもしれません。手が止まる原因は、たいてい言葉づかいの外側にあるからです。
『「誘える人」がぜんぶ手に入れる』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)の著者・五百田達成さんは、シリーズ累計120万部を数えるコミュニケーション本の書き手であると同時に、私生活では毎日のように誰かを誘い続ける実践者でもあります。
連載第2回のテーマは、OKされる「誘い方」の技術。多くの人がやりがちなNGから、「忙しかったらスルーで」に代表される「断ってもいいよ感」のつくり方まで、実例たっぷりに語ってくれました。読み終える頃には、送れなかったあの下書きの直し方が見えているはずです。
取材・構成・写真/STUDY HACKER編集部
【プロフィール】
五百田達成(いおた・たつなり)
心理カウンセラー。米国CCE,Inc.認定GCDFキャリアカウンセラー。東京大学教養学部卒業後、KADOKAWA、博報堂、博報堂生活総合研究所を経て、五百田達成事務所を設立。個人カウンセリング、講演、執筆など、多岐にわたって活躍中。専門分野は「コミュニケーション心理」「ことばと伝え方」「SNSと人づきあい」。会社員としての実体験と豊富なカウンセリング実績に裏打ちされた、人間関係、コミュニケーションにまつわるアドバイスが好評。「あさイチ」(NHK)、「ヒルナンデス!」(日本テレビ)ほか、メディア出演も多数。著書に『察しない男 説明しない女』『不機嫌な長男・長女 無責任な末っ子たち』『話し方で損する人 得する人』『超雑談力』『不機嫌な妻 無関心な夫』『会話IQ 本当に頭がいい人の話し方』(以上、ディスカヴァー・トゥエンティワン)などがあり、シリーズ120万部を超えている。文章・エッセイ教室「おとなの寺子屋」も好評。
誘いのLINE、初心者は「全部逆」をやっている
本では誘い方を5つのステップにまとめましたが、初心者はおそらく、その全部の真逆をやるんだと思います。
まず、人選から間違える。「よし、隣の部署の佐々木さんを誘ってみるか」と、年齢も性別も違う、しかも忙しそうな人を誘う。まず無理でしょう。
次に、大義名分がない。「お疲れさま会」「上半期振り返り会」「七夕ワイン会」などと言わずに、「佐々木さん、僕とご飯食べに行きませんか」と言ってしまう。それは断られます。相手はびっくりしますから。
さらに、店・人・コンテンツという"保険"を張らない。「近くにいい焼き鳥屋を見つけたんで」とも、「最近一緒に仕事をしている面白い人を紹介したいんで」とも、「阪神対ヤクルトのチケットがたまたま取れちゃったんで」とも言わずに、「僕とご飯に行きましょう」だけで勝負する。
そして、言葉選び。「佐々木さんくらいの人気者だとお忙しいと思いますが」「年度末なので厳しいかもしれませんが、気楽にご検討ください」といった、相手が断れる逃げ道を用意する一言がないまま、「絶対に佐々木さんと仲良くなりたいので、ご検討ください」と迫る。
この4つを全部逆張りでやると、立派な失敗の完成です。
実際、いるんですよ。僕も18歳の頃は、気になっていた女性にこの真逆をやっていたと思います。
「保険」は、あの映画のタダ券
だいぶ仲良くなった相手に「ちょっとデート行きましょうよ」とまっすぐ言う変化球もあります。でも、初心者のうちはやらない方がいい。相手のためにも保険を張りまくるのが、大人の誘い方です。
昔、みんな「親からもらった映画のタダ券があるんだけど」と、ありもしないタダ券を口実にしましたよね。ああいうのは、いいことだと思います。
| 観点 | やりがちなNG | OKされる誘い方 |
|---|---|---|
| 人選 | 年齢も性別も違う、忙しそうな人 | 断られてもお互い気まずくない、近い相手 |
| 大義名分 | 「僕とご飯食べに行きませんか」 | 「お疲れさま会」「上半期振り返り会」と名前をつける |
| 保険 | 自分だけで勝負する | いい店・面白い人・チケットを添える |
| 言葉選び | 「絶対に仲良くなりたいので、ご検討ください」 | 「お忙しいと思いますが、気楽にご検討ください」 |
※インタビューでの発言をもとに編集部作成

「忙しかったらスルーで」。断る理由は、こちらからプレゼントする
本にも書いた「忙しかったらスルーで」のような一言は、「断ってもいいよ」「あなたが断るのも当然だよ」と、先に伝えておく技術です。
具体例を挙げると、最近、大学生を誘ったとき、たしか試験中だと聞いていた気がしたので、「試験で忙しいかな?」と一言添えました。すると「今回は試験勉強します」と。「そうだよね」で終われるんです。あるいは、「何かとお忙しい時期かと思いますが」とか。
諦めた例もあります。相手が地方に住んでいるようだったので、「すみません、距離のことを考えずに誘っちゃいましたけど、浜松でしたっけ。だとしたら東京で時間を作りにくいですよね」とフォローした。
そういう「断ってもいい感」を用意するんです。
カギカッコで、心の声を代弁する
テクニカル版としては、カギカッコで相手の心の声を代弁する方法もあります。「いやいや、五百田とこれ以上話すことなんかそれほどねえよ、かもしれませんが」と書いて、冗談めかしつつ逃げ道を作る。
「『来月だったら行ってやってもいいよ』など、いろいろあるかと思いますが、ご検討ください」と書くと、「来月ならいいよ」と言ってくれたりする。僕のちょっとしたやり口です(笑)。
佐々木さん、お疲れさまです。近くにいい焼き鳥屋を見つけたので、今度「上半期お疲れさま会」をやりませんか。最近一緒に仕事をしている面白い人も紹介したいです。お忙しい時期かと思いますが、気楽にご検討ください。「来月だったら行ってもいいよ」でも大丈夫です。
※インタビューで語られたフレーズをもとに編集部が構成した、"正解版"の文面例
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大義名分は、無限に転がっている
僕が20代、30代の頃によく使っていた、少しお恥ずかしい例を挙げます。気になる相手との約束が、相手の体調不良で流れたとします。「残念ですね」と言って、2週間後、ひと月後に「快気祝い」と称してもう一度誘う。
「前回残念だったので。体調どうですか? 涼しくなってきたし、快気祝いでビールでもどうですか」と。ほとんど言い訳ですが、前向きな言い訳です。
もっと身近なところにも大義名分は転がっています。
ハロウィン、ありがとう
営業をしている友人とも話したのですが、日本の四季折々のイベントは、よくできているんです。「お月見しましょう」「お花見しましょう」「枝豆ビールの会をしましょう」と、季節のことを言っておけばいい。
クリスマスがあって、最近は10月にハロウィンまである。昔はなかったのに。あれによって、人々は誘いやすくなりました。
「内輪でハロウィンがてらホームパーティーをしようと思ってます。いかがですか」「え、コスプレとかできないんですけど」「全然OKですよ、もう、形だけなんで」。それで多くの人が仲良くなっている。ハロウィン、ありがとう、です。
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「調整さん」と「LINEグループ」は使わない
段取りにも、僕なりのルールがあります。日程調整ツールで全員の空き日を募ったり、グループに一斉に連絡を投げたりは、原則としてしません。1つめは、それっぽい話です。参加者の人数が多くなると、みんな力を抜く。いわゆる、「リンゲルマン効果」ですね。
ひとりの力を100とします。2人で重い荷物を持ち上げるときは全力を出すので、合計は200になる。ところが、4人で持ちましょうとなった瞬間、必ず誰かが手を抜く。合計が400になるはずが、300にしかならない、みたいなことです。
一斉連絡も同じで、コミット度合いが下がるんです。
これは、連絡手段の使い分けの問題でもあります。「部署全体にこれを見ておいて」なら、メーリングリストやグループチャットに流せばいい。
でも、「明日までにきっちり返事してね」を一斉送信しても、誰も返事しない。健康診断の入力なんて、誰もやらない。「お前の出欠で部が滞ってるんだ」というシリアスな連絡は、きちんと個別で送りますよね。誘いも同じことです。
そして僕は個人的に、前向きでコミット度が高く、その会をみんなで楽しもうとするハッピーな人たちが好きで、そういう人とだけ遊びたい。自然と、会はどんどんスモールになっていきがちです。
会は「単発」にする
2つめは、リアルな話で、その裏返しです。単発にすれば、「気が合わない人と遊ばなくてよくなる」んです。
たとえば「暑気払い」を開いて、10人くらいで楽しかったとします。「これを定例会にしましょう」と会が発足してしまったら、バイブスの合わない人がいても、もう外せない。僕は好き嫌いが激しいので、それでは困ってしまう(笑)。
だから毎回、単発でやる。面白い人がいたら、後日その人に個別でメッセージをして、「先日はありがとうございました。あのお話をもう少し詳しく聞きたいので、何人かでご飯に行きませんか」とやる。誰を含めるかはその都度決めて、広がったり縮んだりすればいい。
その場では「楽しかったです、またやりましょう」とだけ言って、合わない人を弾くようなことはしません。ただ、たまにありますよ、合わない人を明確に外して、新規で立ち上げること。それはしょうがない。
便利なものには裏がある、という当たり前の話です。コミット度と熱の問題、そして、人の好き嫌いの問題ですね。
***
本書には、ここまで紹介した誘い方の技術を1枚にまとめた一覧表が収録されています。取材中、それを眺めていた編集部員は、思わず「デスクに貼っておかないといけません」と口にしました。
佐々木さんを誘って玉砕するくだりは、笑いながら聞いているうちに、過去の自分の文面を思い出して背中に汗をかく時間でもありました。表の各行に、それぞれ苦い記憶のある読者もいるかもしれません。
そして印象的だったのは、どの技術も、相手を動かすためというより、相手が断るときの労力まで想像した気づかいでできていることです。誘いが軽くなるのは、相手の負担を軽くしているからなのだと、取材を通して感じました。
※第1回では、なぜ大人は「誘えない」のかを、第3回では、職場・疎遠な友人・憧れの人への応用を紹介します。
【五百田達成さん ほかのインタビュー記事はこちら】
- 配られたカードで勝負しなくていい。ベストセラー著者が語る「人間関係の自炊」のすすめ
- 「誘う」とは、誰とどう生きるかを決めること。最初の一歩は「近い相手に3通」(※近日公開)
岡 健作(おか・けんさく)
株式会社新恵社 代表取締役/株式会社スタディーハッカー創業者。1977年生まれ、福岡出身。2014年、メディア「STUDY HACKER」を立ち上げ。以後運営に携わる。
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/ 著書(amazon)
