
週末はしっかり寝た。本も読んだ。よく休んだ。なのに月曜の朝、なぜか頭が重い。会議で気の利いた発言が出てこないし、新しい企画もどこかで見たような案ばかり。
そんなとき、私たちは「休みが足りないんだ」と考えがちです。でも、休むほどに調子が戻るわけでもないなら、足りていないのは休息の量ではないのかもしれません。
私たちは長いあいだ、時間を「仕事(オン)」と「休息(オフ)」に分けて考えてきました。けれど神経科学の知見は、この2分法から抜け落ちている第3のモードがあることを示しています。それが「遊び」です。
成果を出したい人ほど、休むだけでは足りない。この記事では、その理由を脳科学の視点からひもといていきます。
脳には「3つのモード」がある

休みの日はゆっくり休めば十分。そう思われがちですが、神経科学的に見ると、脳には3つの異なるモードがあり、それぞれ別の仕事をしています。
注目したいのは、休息と遊びが正反対だということ。遊んでいるとき、脳はノルエピネフリン(ノルアドレナリン)という物質を増やします。これが注意力を高め、神経可塑性、つまり脳が新しい回路をつくる力を後押しするのだそうです(神経科学者のジュリー・フラタントーニ氏による)。*1
要はこういうことです。
休息は脳を「回復」させ、遊びは脳を「成長」させる。役割が違う以上、片方をいくら積んでも、もう片方の穴は埋まりません。
そして、この「新しい回路をつくる力」こそ仕事の成果に直結します。新しいスキルが身につくのも、思いがけないアイデアが浮かぶのも、前例のない問題に応用が利くのも、その回路があってこそです。
ところが実際には、遊びは休息のなかに押し込められています。「休日に遊ぶ」という言い方があるとおり、遊びはオフの一部という扱いです。
けれど休んだつもりで遊びまで済ませた気になっていると、脳は「回復」しかしておらず、「成長」のモードに一度も入らないまま週末が終わります。休んだのに冴えない月曜の朝は、たぶんこうして生まれます。
欧米には遊び(play)を専門に研究する機関があり、独立した研究テーマとして扱われてきました。一方、日本語の「遊び」はどこか「サボり」と地続きで、オフの一部として片づけられがちです。
だからこそ、成果を出したい人ほど、休息と同じ真剣さで「遊び」を確保するべきなのです。遊びはサボりではなく、仕事に効く脳を育てる投資なのですから。
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そもそも「遊び」とは何か

ここまで読んで「よし、脳のために遊ぶぞ」と意気込んだ方には申し訳ないのですが、その意気込みこそが遊びを台無しにします。
遊びの研究で知られる精神科医スチュアート・ブラウン氏は、遊びを明確に定義するのは難しいと断りつつ、こう説明します。ある活動に夢中になり、それを楽しみ、時間の感覚さえ忘れてしまうような心の状態。それが遊びだと。*2
もう少し具体的には、次の要素が目安になります(心理学者ピーター・グレイ氏が挙げた5つの要素にもとづく)。
まじめな人ほど、これを読んで「全要素を満たさなきゃ」と考えがちです。でも、それでは本末転倒。
前章で「遊びは成果に効く」と書いておいて矛盾するようですが、これは順番の問題。効くから遊ぶのではなく、夢中で遊んだ結果、脳が育つ。狙うと逃げる、くらいに思っておくのがちょうどいい。
判断基準は、自分の心が満たされるかどうか。それだけです。「楽しそう」と思ったものに、深く考えずに手を出してみる。それくらい軽くていいのです。
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大人が「遊び」を忘れる理由と、取り戻し方

とはいえ、いざ「遊ぼう」としても、何をしていいかわからない。なぜ私たちは遊べなくなるのか。理由はだいたい3つあるようです。
どれも、まじめに働いてきた人ほど強く持っているものです。裏を返せば、この3つを手放すことが、遊びを取り戻す第一歩になります。
最後の「イベント型と日常型」は、忙しい社会人にこそおすすめです。たとえば筆者は、ときどき紅茶のワークショップに出かけ(イベント型)、そこで習ったことを家でいろいろ試しています(日常型)。特別な日の遊びと、いつでもできる遊び。両方あると、遊びがぐっと生活に入りやすくなります。
きっかけがほしい人のために、具体例も挙げておきます。
ピンとくるものがなければ、無理に選ばなくて構いません。自分が思わず夢中になれるものさえ見つかれば、何だっていいのですから。
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休息が脳を守り、遊びが脳を育てる。どちらが欠けても、私たちは本来の力を出しきれません。もし脳の目的が「長く、健やかに働き続けること」だとすれば、遊びは怠けでも余りものでもなく、一番割のいい投資かもしれません。
成果を出したいなら、まじめに働き、しっかり休み、そして、ちゃんと遊ぶこと。今度の休日は、効率も意味もいったん忘れて、心が動くほうへ。
よくある質問(FAQ)
Q. 休息と遊びは何が違うのですか?
Q. なぜ大人になると遊べなくなるのですか?
Q. 仕事に効く「遊び」とはどんなものですか?
Q. スマホや動画を見るのは「遊び」になりますか?
Q. どのくらいの頻度で遊べばいいですか?
*1: POOSH|The Science of Why Your Brain Craves Play
*2: National Institute for Play|The Foundations of Play
柴田香織
大学では心理学を専攻。常に独学で新しいことの学習にチャレンジしており、現在はIllustratorや中国語を勉強中。効率的な勉強法やノート術を日々実践しており、実際に高校3年分の日本史・世界史・地理の学び直しを1年間で完了した。自分で試して検証する実践報告記事が得意。