
「議事録はAIに任せろ」——わかってる。でも、どのAIに、どう指示すればいいのか。
試してみたけど、なんか違う。使いこなせている気がしない。結局、自分でやった方が早いかも……。
そんなふうに感じたことはありませんか?
「AIを活用すべき」という正論はもう十分聞いた。問題は具体的な手順です。何をどのAIにどう投げて、空いた時間で何をすればいいのか。
本記事では、AIへの具体的な任せ方から、空いた時間で鍛えるべき「課題設定・仮説構築力」の実践習慣まで、仕事の再設計を一歩ずつ進めるための手順をお伝えします。
まず「捨てる仕事」を棚卸しする
まず「何をAIに任せられるか」を明確にするところから始めましょう。以下のチェックリストで、今週やった仕事を振り返ってみてください。当てはまる項目が「AIに任せる候補」です。
- 議事録の清書・整形に15分以上かけた
- 資料のデザイン調整・フォント揃えに時間をとった
- 情報収集・調査のためにWebを何十分もブラウジングした
- メールの文面作成・返信に毎回時間がかかっている
- 日報や週報の定型文をゼロから書いている
これらはすべてAIが得意とする作業です。人事プロフェッショナル支援を行う株式会社コーナーが企業の人事部門役職者・担当者259名を対象に実施した調査(2025年12月)では、人事が「これから評価・育成したい人材像」として「問いを立てる力」「仮説構築力」が挙がった一方、「業務スピード」や「正確性」の優先度は相対的に下がっています。*1 まずこのリストを使って、「この仕事はAIに任せられるか?」と自問するところから始めましょう。
AIへの任せ方——具体的な手順

何をどう指示すればいいかわからず、結局自分でやってしまう——それがAI活用が進まない最大の原因です。業務ごとに、今日から使える指示の型を紹介します。
⚠️ 機密情報の取り扱いに注意
AIに業務内容を入力する際は、顧客名・社員名・未公開の数値・個人情報など機密性の高い情報をそのまま貼り付けないようにしましょう。固有名詞は「A社」「〇〇部長」などに置き換え、具体的な数値は伏せたうえで指示を出すのが基本です。また、社内でのAIツール利用ポリシーを事前に確認しておくことを強くおすすめします。
◇議事録・メモの整形
会議中にメモアプリ(またはスマホの音声入力)で走り書きしたものをそのままAIに貼り付け、こう指示します。
「以下のメモをもとに、決定事項・TODO・次回確認事項の3項目に整理してください。」
箇条書きの走り書きでも、音声文字起こしのような乱れたテキストでも、AIは構造化してくれます。清書に費やしていた20〜30分が5分以下になります。
◇定型的な資料・メール文面の作成
「資料を作って」ではなく、目的・相手・盛り込みたい要素の3点を最初に伝えるのがポイントです。
「目的:〇〇部長への月次報告。相手:数字よりストーリーを好む。要素:先月の実績・課題・来月の対策。A4・1ページ程度でまとめてください。」
出てきたものをそのまま使うのではなく、自分の言葉で手を入れる前提で使うと、圧倒的に速く質の高いアウトプットが出ます。
◇情報収集・調査
「〇〇について調べて」ではなく、何のために知りたいのかを添えます。
「競合A社の最近の動向を、来週の戦略会議で話す材料として3点にまとめてください。」
「来週の会議で話す材料」という文脈を伝えるだけで、AIのアウトプットの粒度と方向性が変わります。
「課題設定・仮説構築力」を実務で鍛える

AIに任せた時間で何をするか。それが「課題設定・仮説構築」です。しかし「問いを立てろ」と言われても、日常業務の中でどうすればいいかわからない人も多いはずです。ここではAIを活用しながら実践できる習慣を3つ紹介します。
◇習慣1:AIを使って、上司の指示を「目的レベル」で再定義する
「この資料を作って」と言われたとき、すぐ手を動かすのではなく、まずAIにこう投げてみましょう。
「〇〇部長への月次報告資料を作るよう頼まれました。この資料を通じて相手が判断したいことは何だと思いますか? 資料に盛り込むべき要素を整理してください。」
AIが「相手の判断軸」を整理してくれることで、自分では気づかなかった切り口が見えてきます。指示をそのままこなすのではなく、目的から再設計する習慣がここから生まれます。
◇習慣2:AIを使って、「なぜ?」を3回掘り下げる
日常業務の中で「うまくいかなかったこと」が起きたとき、AIを相手に原因を掘り下げます。
「先月の提案が通りませんでした。表面的な原因は『意思決定者に響かなかった』ことだと思っています。なぜそうなったのか、さらに深い原因を3つ挙げてください。」
自分一人で「なぜ?」を繰り返すのは難しくても、AIを相手にすることで思考が止まりにくくなります。出てきた原因に「それは本当か?」と自分でツッコミを入れながら進めると、仮説の精度がさらに上がります。
◇習慣3:AIを使って、立てた仮説を検証する
仮説を立てたら、AIに穴を突いてもらいましょう。
「先月の提案が通らなかった原因として『事前に意思決定者の関心を確認していなかった』という仮説を立てました。この仮説の弱点と、見落としている可能性がある原因を教えてください。」
AIは「答えを出す道具」ではなく、自分の思考を鍛える壁打ち相手です。仮説が間違っていても構いません。AIとの対話を重ねるほど、課題を見抜く力が身につきます。
空いた時間を「信頼構築」に使う
AIで定型作業を圧縮したなら、その時間を「人間にしかできない仕事」に使います。一例をあげれば、顧客・社内メンバーとの関係構築です。
これはただの「残った仕事」ではありません。AIが発展すればするほど、人間関係を築く力の価値は相対的に高まります。情報処理や文章生成はAIに任せられても、「この人だから話す」「この人だから任せる」という信頼はAIには作れないからです。
さらに言えば、人間関係の構築力は仕事の評価だけでなく、幸福感とも深く結びついています。良質な人間関係が主観的幸福度を高めることは、多くの研究が示しています。AIが得意なことをAIに任せ、人間が人間らしくいられる時間を増やすこと——これがAI時代の働き方の本質とも言えます。
では、その力をどう磨くか。すぐ実践できる行動を挙げます。
- 週1回、顧客や関係部署に「困っていることはないか」と連絡する
用件がなくても連絡する習慣が、いざというときの信頼になります。 - ミーティングの前後5分を雑談に使う
議題に入る前の一言、終わった後の雑談が積み重なって関係性が深まります。 - 社内の他部署の動きを把握する時間をつくる
「あの部署が困っていることをうちで解決できないか」という視点が、プロジェクトを横断して動く力につながります。
AIが代替できるのは「情報処理」です。「この人だから話す」「この人だから任せる」という信頼はAIには作れません。定型作業から解放された時間を、ここに集中させることが長期的な評価につながります。
筆者が実践してわかったこと

本記事で紹介した指示の型を、筆者自身も実際に試してみました。
最初に変化を感じたのは、議事録の整形です。これまでは走り書きのメモを「読める形」に整えることに毎回15〜20分かけていました。「決定事項・TODO・次回確認事項の3項目に整理してください」という指示を試したところ、同じ作業が3分程度で終わりました。
より大きな変化は、資料作成の指示の型を使い始めてからです。「目的・相手・要素」の3点を最初に伝えるようにしたところ、AIが出してくる構成の質が明らかに変わりました。以前は「なんか違う」と感じてゼロから書き直すことが多かったのですが、この型を使うようになってから、手を入れる量が格段に減りました。
気づいたのは、指示を具体的にする作業自体が、自分の思考を整理することにもなっているということです。「誰に・何のために・何を伝えるか」を言語化する過程で、資料の目的が自分の中でクリアになる。AIへの指示を書くことが、そのまま仕事の設計になっていました。
一気に全部を変えようとする必要はありません。まず一つの型を試してみるだけで、手探りの感覚は変わります。
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「捨てる→任せる→深める→つながる」の順で、一気に変える必要はありません。まず今週、チェックリストの項目を一つだけAIに任せてみる。その5分の節約が、手探りから抜け出す最初の一歩になります。
AIの得意不得意を把握しておくと効率がさらに上がる
AIにも得意不得意があります。議事録整形・文章要約・定型文生成はどのAIも得意ですが、最新情報の調査や数値計算の精度はツールによって差があります。ChatGPT、Gemini、Claude、Copilotなどを使い分けながら、自分の業務に合ったものを見つけていくのが近道です。
よくある質問(FAQ)
Q. AI時代に評価される人とされない人の違いは何ですか?
「AIにできる作業を手放し、問いを立てる力・仮説構築力・信頼関係の構築に時間を使えているか」が最大の違いです。作業量ではなく思考の質と人間関係が評価軸になっています。
Q. AIへの指示で一番大事なことは何ですか?
「何のためにやるのか」という目的・文脈を最初に伝えることです。「資料を作って」より「来週の会議で〇〇部長に判断してもらうための資料を作って」と伝える方が、AIのアウトプットの質は大きく変わります。
Q. 課題設定や仮説構築が苦手です。何から始めればいいですか?
まず「なぜ?を3回繰り返す」習慣から始めてみましょう。日常で起きた「うまくいかなかったこと」に対して3回掘り下げるだけで、表面的な原因ではなく本質的な課題が見えてきます。慣れてきたら、AIを壁打ち相手にして仮説の精度を上げていきましょう。
Q. 信頼関係の構築に時間を使うとは、具体的に何をすればいいですか?
週1回、顧客や関係部署に「困っていることはないか」と連絡する、ミーティングの前後5分を雑談に使う、社内の他部署の動きを把握する時間をつくるなどが実践しやすい方法です。用件がなくても連絡する習慣が、長期的な信頼につながります。
*1 PR TIMES|AI時代、人事が評価する人材はどう変わるのか。業務スピードから「問い・判断・テクノロジー活用力」へ
柴田香織
大学では心理学を専攻。常に独学で新しいことの学習にチャレンジしており、現在はIllustratorや中国語を勉強中。効率的な勉強法やノート術を日々実践しており、実際に高校3年分の日本史・世界史・地理の学び直しを1年間で完了した。自分で試して検証する実践報告記事が得意。