邪魔が入って進まない! そんなあなたのための "即復帰"の技術

驚いた表情の男性

集中して仕事していたのに、電話やメール、チャットで、あるいは同僚との会話などに割り込まれるのは職場でもよくあることです。

割り込みから仕事に戻ると、10分経っても、20分経っても、さっきの調子に戻れない……「切り替えが下手だな」「集中力がないな」と自分に苛立つ。

しかし、集中に戻れないことには、集中力や能力とは別に、脳の仕組みが関わっています。

「すぐ戻れない」をつい自分のせいにしてしまう

そもそも、タスクの切り替えは脳の処理速度の低下をもたらすことが心理学の実験で確認されています。*1

アメリカ心理学会(APA)も、タスクを行き来するときに生じる短い思考の空白の積み重ねが、生産的な時間の最大40%を奪いうると説明しています。*2

切り替えには、誰の脳にも一定のコストがかかります。また、中断される前のタスクが未完了のままだと、注意の一部が前のタスクに取り残された状態になります。これは「注意の残留」と呼ばれる現象で、意志の強さや集中力の高さとは関係なく起こります。*3

電話やメール、会話やチャットといった割り込みに応じるたびに、さっきまでの作業の名残りが注意力を削っていくのです。多くの人が「本気を出せばすぐ切り替えられる」「集中力があればすぐ集中に戻れる」と無意識に考えていますが、それは大きな誤解なのです。

あなたは無意識に「気合いで集中は戻せる」と思っていませんか?

次のうち、当てはまる項目はいくつありますか。

  • 中断されたあと、「気合を入れ直せばすぐ戻れるはず」と思っている
  • なかなか集中に戻れないと、「今日は自分の調子が悪い日だ」と結論づける
  • 戻れないとき、深呼吸や気合で何とかしようとする
  • 「本気を出せば、中断してもすぐ切り替えられるはずだ」と思っている
  • 戻れない自分に対して、内心「サボっているのでは」と少し疑う

当てはまる項目が多い人ほど、「集中は意志ひとつで制御できるもの」という思い込みが強いということです。でも、ここまで見てきた通り、その思い込みは間違っています。意志だけでは集中は戻せません。自分の切り替え能力への自己評価が実際の能力と一致しないことは、研究でも確かめられています。*5

割り込みから数秒で戻るための「1行メモ」

対策は、割り込みの前、つまり離席するときや電話や会話に応じる前に、「今どこまで進んだか」と「次に何をするか」の2点だけを1行で書き残すことです。

タスクに割り込みがあると、「何をしていたか」「どこまでやっていたか」といった記憶が割り込み中に薄れてしまい、戻ったときに、またゼロから思い出す時間が発生します。逆に、中断の直前に「次に何をするつもりだったか」を確認する数秒の準備があるだけで、戻ったときの再開が速くなることが実験で確認されています。*4

1行メモは、その準備を紙の上で確実に行う方法です。ポイントは、きれいに書こうとしないことです。「資料は3章まで完了、次は4章の見出しから」程度の一言で十分です。この一言があるだけで、再開が数秒で済み、集中への復帰も早まります。

日付に丸をつける手

割り込みを「減らす」「消す」のも大事

とはいえ、理想は割り込みがない状態です。実際の職場で1日中「電話を取り次がないでくれ」とか「話しかけないでくれ」というのは無理がありますが、ある程度の環境を設計することはできます。

「割り込み不可時間」を90分だけつくる

通知をオフにし、チャットのステータスを変え、できれば場所も変えて、90分だけ「割り込み不可時間」を設定する。最近はオフィス環境も柔軟になっているので、できる人も多いと思います。

割り込みの受付時間を決めておく

前項にも被りますが「毎時50分にまとめて返信する」など、自分なりの巡回ルールを決めておきます。立場によってできる範囲に制限はありますが、あなたのオフィスにも「報告はあとでまとめて受ける」といったように割り込みをコントロールしている人がいれば、そのやり方を参考にしてください。

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戻れないのは、注意の残留という、誰の脳にも起きる仕組みの結果です。意志の弱さや集中力の欠如を責める必要はありません。今日、1行のメモから集中力の復帰を試してみてください。

よくある質問(FAQ)

Q. 「1行書くだけ」で本当に効果があるんですか?
はい。中断の直前に「次に何をするか」を確認する準備をしただけでも、準備なしで中断されたときに比べて、戻ったときの再開が速くなることが実験で確認されています。メモはその準備を確実にする手段で、脳の記憶が担っていた負担を紙に肩代わりさせています。
Q. マルチタスクが得意な人もいるのではないですか?
「自分はマルチタスクが得意」という自己評価は、記憶と注意のテストで測った実際の能力とは相関しなかった、という研究があります。しかも、日ごろマルチタスクをよくする人ほど、テストの成績は低い傾向でした。自己評価と実際の能力は、必ずしも一致しません。
Q. 「注意の残留」とは、具体的にどんな現象ですか?
中断される前にやっていたタスクに、注意の一部が無意識に残り続ける現象です。心理学者Sophie Leroy氏が2009年に提唱した概念で、意志の強さとは関係なく誰にでも起こります。新しい作業に取りかかっても、頭の片隅で前の作業が気になり続けるため、集中の質が落ちてしまうのです。
Q. 上司からの割り込みは断れません
断る必要はありません。「30分後でもいいですか」と、時間をずらす交渉に切り替えるだけで十分です。
Q. 通知を切ると、重要な連絡を逃しそうで不安です
家族や特定の相手からの連絡だけは通す、といった例外設定をしておけば、緊急連絡を逃す不安はかなり減らせます。

【ライタープロフィール】
STUDY HACKER 編集部

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