新生活が始まり、環境や生活リズムがガラッと変わったという方も多いのではないでしょうか。
想像以上に疲労がたまり、勉強や趣味など、仕事以外でやりたかったことができず、落ち込んでしまうこともあるかもしれません。
しかし、新生活で疲れ切ってしまい、やりたいことがやれないのは、脳科学的に見ても当たり前のことなのです。
この時期は、無理に頑張ると逆効果。「ほどほどにやる」という姿勢が効果的です。
本記事では、疲れていてもやりたいことを継続できる具体的な方法を紹介します。
新生活で疲れ切ってしまうのは普通のこと

初対面の人との会話、新しい仕事を覚えること、環境に馴染む努力をすること——このような新生活での行動は、私たちが思っている以上にストレスとなり、脳にも大きな負荷を与えています。
産業医の池井佑丞氏は、ネガティブなことだけでなく、ポジティブな変化も、これまでの習慣や生活パターンを変化させる必要に迫られるためストレスとなると指摘しています。*1
その結果、脳疲労が起こり、「もう何もしたくない」という状態につながります。
とはいえ、疲れていても「何かしたい」「前に進みたい」という気持ちまで消えるわけではないでしょう。そんなときに取り入れたいのが、「脳に負荷をかけにくいやり方」です。それが「ほどほど」です。
私たちは何かに取り組む際、「しっかりやる」か「何もせず休む」かの二択で考えがちです。しかし、「できる範囲で、ほどほどにやる」という第三の選択肢が取れるようになると、理想と現実を上手にすり合わせることができます。
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「ほどほどにやる」2つのメリット

「ほどほど」とは、完璧にやろうとせず、今の自分にできる範囲で小さく動き続けること。この姿勢には、疲れているときだからこそ効いてくるメリットがあります。
1. 習慣化され、自己効力感が高まる
どんなに些細な行動でも、やりたいことに関連する取り組みを続けていると、だんだんその行動をするのが当たり前になります。つまり、「ほどほど」であっても習慣化されるのです。
「やりたいのに、何もできていない」という状態から抜け出し、「毎日少しずつ前進できている」という実感が生まれます。生活にもハリが戻るでしょう。
習慣化により行動自体がどんどん楽になるという効果も期待できます。
2. 疲れていても、心身に負担をかけずに続けられる
新生活で疲れているときは、心身のメンテナンス——つまり、睡眠時間の確保や栄養バランスのとれた食事、リラックスすること——が第一です。
そんなときに、いくらやりたいことでも無理に取り組むと、心身に大きな負荷がかかり、回復に時間がかかってしまいます。
しかし、「ほどほどにやる」という意識をもつことで、脳や体へのストレスを最小限に抑えながら取り組みを続けることが可能になるのです。
「ほどほど」の具体的なやり方3つ

「ほどほどが大事なのはわかった。でも、具体的にどうすればいいんだろう」——そう思った方のために、疲れていても無理なく動き続けるための方法を3つ紹介します。
◇「すぐできる小さなToDo」を書いておく
新生活の疲れを軽くするには、取り組む量を減らすだけでは不十分です。「さて、何をしようか」と考える回数——つまり決断そのものの回数が増えることも、脳への負担になっています。
だから「ほどほど」を実現する最初の一手は、やり始めるまでの負荷を下げることです。
あらかじめ「すぐできる小さなToDo」を書き出しておくと、迷わず着手できます。
疲れているときは、「何をしよう?」と考えるだけでも大きな負担になります。事前に何をするか決めておくことで、この負担を回避でき、とりあえず手を付けることを習慣化できるのです。
◇やめどきを先に決めておく
一度手を付けると、いわゆる「作業興奮」*2 が起こり、疲れていても、もっと取り組みたくなってしまうことがあります。
しかし、もともと疲れている状態で頑張りすぎるのは、心身に大きな負担がかかります。
そこで、「◯時にはやめて布団に入る」「1ページ書いたら終わり」といったように、あらかじめ「終了ライン」も決めておきましょう。
これには、習慣化を後押しする効果もあります。「タスク・ブラケティング(Task-bracketing)」と呼ばれる、行動の「始まり」と「終わり」を設計することで大脳基底核を刺激し習慣化を促すメソッドです。*3
たとえば、「22時になったら、『小さなToDo』をひとつやる」→「23時になったら、途中でもストップ。寝る支度をする」というように決めておくと、無理しすぎることを防ぎつつ、習慣化することができます。
◇「結果を出すこと」を目指さない
つい、「せっかく勉強するなら、ちゃんと理解しよう」と思ってしまいますよね。
しかし、疲れているときに「理解する」「覚える」といった「結果」を目指すと、脳への負荷が高まります。
そこで、その日に「結果」を得ることを目指さず、「ただ知識に触れるだけ」にすることがおすすめです。「目を通す」「聞き流す」といった軽い行動でも、記憶には影響があります。
事前に情報に触れておくことで、その後の理解や記憶が促進される「プライミング効果」が起こることが、心理学の研究でわかっています。*4
つまり、無理に頑張らなくても、触れ続けること自体に意味があるのです。
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新生活、ついつい頑張りたくなる気持ちはとても大切です。しかし、その勢いで無理をして疲れ果て、続かなければ本末転倒。
「ほどほど」は手を抜くことではありません。どんなコンディションでも動き続けるための、賢い選択です。今の自分にできる小さな一歩を、まず踏み出してみましょう。
よくある質問(FAQ)
Q. 新生活で疲れすぎて何もできないのはなぜですか?
新しい環境に馴染むための行動がストレスとなり、「脳疲労」を起こしているからです。ポジティブな変化であっても、これまでの習慣や生活パターンを変える必要があるため、脳には大きな負担がかかります。
Q. 疲れていても勉強や趣味を続けるにはどうすればいいですか?
「しっかりやる」を手放し、やり始めるまでの負荷を下げることが第一歩です。あらかじめ「すぐできる小さなToDo」を書き出しておくと、「何をしようか」と考える手間がなくなり、迷わず着手できます。
Q. 疲れているときに勉強しても頭に入らないときはどうしたらいいですか?
「覚える」という結果を目指さず、「目を通すだけ」「聞き流すだけ」にとどめましょう。事前に情報に触れておくことで記憶を促す効果(プライミング効果)があるため、触れ続けること自体に意味があります。
Q. 「ほどほどにやる」と中途半端になりませんか?
疲れているときの「ほどほど」は中途半端ではなく、継続するための最適解です。無理に頑張って心身を消耗させるよりも、小さな行動を積み重ねるほうが、長期的に見てはるかに多くのことを前に進められます。
*1 プレジデントオンライン|就職、昇格、結婚もストレス源になる…産業医が解説「新生活のストレス」に強い心と体をつくる方法
*2 作業興奮:作業を始めることで脳が活性化し、意欲が高まる現象。心理学・脳科学の分野で広く知られる概念。
*3 HUBERMAN LAB|The Science of Making & Breaking Habits
*4 Tulving, E., & Schacter, D. L. (1990). Priming and human memory systems. Science, 247(4940), 301–306.
柴田香織
大学では心理学を専攻。常に独学で新しいことの学習にチャレンジしており、現在はIllustratorや中国語を勉強中。効率的な勉強法やノート術を日々実践しており、実際に高校3年分の日本史・世界史・地理の学び直しを1年間で完了した。自分で試して検証する実践報告記事が得意。