「変なトイレの夢」を見る科学的な理由。SNSで話題のあの夢が教えてくれる、脳からのSOSサイン

トイレの迷路

用を足したいのに、目に入るのは汚れた個室ばかり。ドアがなかったり、床が水浸しだったり、便器の形がやけに使いづらかったり。そんな「変な構造のトイレをさまよう夢」を見たというSNSの投稿に、「自分も見たことがある」というコメントが驚くほど多く集まり、大きな話題になりました。

無機質でどこか不気味なその光景は、リミナルスペース(用途のない、宙ぶらりんな空間)と呼ばれる独特の気味悪さをまとっています。「自分も見た」と心当たりがあった人のなかには、なぜ自分がこんな夢を見るのか、気になった方もいるかもしれません。

じつはこの「変なトイレ」の夢は、忙しい毎日のなかで、脳が「まだ休めていない」と発している小さなサインかもしれません。トイレの夢を入り口に、その正体と、脳をしっかり休ませるためにできることを見ていきましょう。

その「変な夢」は、脳が休めていないサインかもしれない

なぜ、これほど多くの人が同じような夢を見るのでしょうか。変なトイレの夢には、脳の「いまの状態」が映し出されていると考えられます。まず「なぜトイレなのか」、そして「それが何のサインなのか」の順で見ていきましょう。

なぜ「トイレ」の夢なのか

布団がはだけて寒くなり「雪山で遭難する夢」を見た、という経験はありませんか。このように、外部や内部からの刺激が夢の内容に組み込まれる現象は「ドリーム・インコーポレーション(夢への刺激の取り込み)」と呼ばれています。

膀胱に尿がたまったときも、同じことが起こります。この感覚が信号として脳に届くと、夢のなかで「必死にトイレを探す」シーンとして現れやすくなるのです。ところが睡眠中は、脳の排尿コントロールシステムがはたらき、実際に尿が出るのは強く抑えられています。*1 いわば身体は「トイレに行きたいのに行けない」という矛盾した状態にあるわけです。

つまり「トイレ」という舞台そのものは、体からの信号がたまたま夢に取り込まれた結果ともいえます。ここまでは、多くの人に起こりうるごく自然な現象です。問われるべきは、そのトイレがなぜ「汚くて、使えなくて、後味が悪い」姿をとるのか、のほうです。

「ドリーム・インコーポレーション」を示した実験

アメリカの研究者デメントとウォルパートは、被験者に水分を控えてもらってから眠らせる実験を行ないました。すると、レム睡眠中に見た15件の夢のうち5件に、喉の渇きに関連する内容が含まれていたそうです。*2

なぜ、それが「脳が休めていない」サインなのか

心理学の領域では、トイレや排泄を「ストレスや抑圧された感情のデトックス」の象徴としてとらえる解釈があります。あくまで比喩的な見方であり、医学的に実証されたものではありませんが、レム睡眠中に実際に起きている脳の働きと重ね合わせると、興味深い符合が見えてきます。

睡眠研究者マシュー・ウォーカー氏は、レム睡眠(体は休んでいても脳は活発に働く眠りの段階)が、感情の記憶からつらい感情の部分だけを引き離し、やわらげていく時間だと提唱しています。*3 日中にたまったネガティブな感情の高ぶりを、脳は眠りのあいだに整理し、いわば「排出」しているというわけです。

苦しげに寝ている女性

そう考えると、うまく用を足せない不快なトイレの夢が繰り返されるのは、この「感情の排出」が追いついていないサインなのかもしれません。変な夢を見たこと自体より、繰り返し見て後味が悪い、眠ってもすっきりしない、という感覚のほうが、脳が十分に休めていないサインだといえます。

「脳のオーバーフロー」が起きているのかも

ここまで見てきたように、変なトイレの夢の裏側には、体の感覚を後回しにしてでも眠り続けようとするほど「休息を求めている脳」と、日中のストレスや感情を発散しきれていない状態が隠れています。不快な夢が頻繁に続くなら、脳がまだ十分にリラックス・回復できていないのかもしれません。まずは、脳をしっかり休ませてあげることから始めましょう。

脳を休ませる3つのアクション

だからこそ、トイレの夢に限らず、いわゆる変な夢を見たときには、「気味が悪い」で終わらせず、脳を休ませるきっかけに変えていきましょう。ここからは、脳のキャパシティに余裕をつくり、しっかり回復させるための3つのアクションを紹介します。

アクション1 寝る前は「情報を入れない時間」をつくる

□ 就寝1時間前になったら、スマホは手放す

□ イヤホンを外すなど、耳からの情報も減らす

情報を入れない時間をもつことで、脳が余計な情報の処理に追われるのを防ぎ、リラックスモードに切り替わりやすくなります。

アクション2 紙に書き出して、頭のなかをスッキリさせる

□ 明日以降やらなきゃいけないことを、紙にすべて書き出す

□ モヤモヤしているなら、感情も書き出す

未完了タスクが頭に残ったままだと、寝つきが悪くなったり、眠りが浅くなったりすることがあります。寝る直前にすべて書き出すことで、脳が「もう覚えておかなくて大丈夫」と安心し、深い眠りに入りやすくなるといわれています。

アクション3 寝ているあいだのストレス要因を取り除いておく

□ 寝室の温度を快適に保つ(夏はエアコンを活用する)

□ 締めつけの少ない、楽な寝間着を選ぶ

脳のしくみで見たように、体のちょっとした違和感が不思議な夢につながることがあります。あらかじめ体の不快感を取り除いておくことで、深い眠りにつながります。

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忙しい毎日を送る私たちにとって、脳をリセットする時間は欠かせません。

「変な夢」を面白がるだけで終わらせず、脳が休息を求めているサインとしてとらえ、自己管理に活かしてみませんか。

スッキリ目覚めた女性

よくある質問(FAQ)

Q. 変な夢を毎日見るのですが、病気の心配はありますか?
変な夢を見ること自体は、多くの人に起こる一般的な現象です。ただし、極端に寝覚めが悪い状態や、日中の強い眠気・集中力の低下が続くようであれば、睡眠専門の医療機関に相談することをおすすめします。
Q. 寝る前にどうしてもスマホを見てしまいます。少しならよいですか?
完全に断つのが難しい場合は、まず時間を区切ることから始めてみましょう。たとえば「就寝1時間前から」など具体的な時間を決め、それ以降は別の部屋に置くようにすると、少しずつ習慣化しやすくなります。
Q. 寝る前にトイレに行ったのに、夜中に目が覚めてしまいます。なぜですか?
就寝前の水分やカフェインの摂り過ぎ、寝室の温度が快適でないことなどが原因の場合があります。就寝1〜2時間前は飲み物の量を控えめにし、季節に合わせて室温を調整してみましょう。

【ライタープロフィール】
柴田香織

大学では心理学を専攻。常に独学で新しいことの学習にチャレンジしており、現在はIllustratorや中国語を勉強中。効率的な勉強法やノート術を日々実践しており、実際に高校3年分の日本史・世界史・地理の学び直しを1年間で完了した。自分で試して検証する実践報告記事が得意。