
「メールを見れば、その人の仕事力がわかる」――。これまで20年にわたってビジネスメール教育の現場で活躍してきた平野友朗さんがそう語るのは、「メールとは仕事に対する考え方や相手への気遣いを映す鏡である」という考えからだそうです。ここでは、平野さんが提唱するメール術における、「基本のキ」について解説してもらいます。
構成/岩川悟 取材・文/清家茂樹 写真/石塚雅人
【プロフィール】
平野友朗(ひらの・ともあき)
1974年生まれ、北海道出身。一般社団法人日本ビジネスメール協会代表理事。株式会社アイ・コミュニケーション代表取締役。実践塾シェアクラブ主宰。筑波大学人間学類で認知心理学専攻。広告代理店勤務を経て、独立。ビジネスメール教育の専門家。得意とする分野は、メールコミュニケーションの効率化や時間短縮などの業務改善、ウェブマーケティングの戦略立案やメルマガ・ウェブサイトの改善、メディア戦略を含めたブランド構築や出版プロデュースなど多岐にわたる。メールスキルの向上指導、組織のメールのルール策定、メールの効率化による業務改善や生産性向上などを手がけ、行政機関、企業、学校などへのコンサルティングや講演、研修回数は年間150回を超える。自らのメルマガ「毎日0.1%の成長」では、コミュニケーションやウェブマーケティング、ブランディング、ビジネスモデル構築など幅広い話題を取り上げ、スキルアップに有益な情報を送り続けている。著書は『ずるいメール術』(PHP研究所)、『仕事が速い人はどんなメールを書いているのか』(文響社)など合計38冊。
一般社団法人日本ビジネスメール協会
株式会社アイ・コミュニケーション
メールには、仕事に対する考え方が凝縮している
「ビジネスメール教育の専門家」として20年ほど活動してきたなかで、確信していることがあります。それは、「仕事ができる人かできない人かは、メールを見ただけで判断できる」ということです。
メールには、その人の仕事やコミュニケーションに対する考え方、相手に対する気遣いといったものが凝縮されています。たとえば、メールを開封したときに最初に目に入る部分であるファーストビューについて言えば、仕事ができる人は「伝えたいことの全体像がわかる書き方」をしているのです。
ほかにも、実際に読み始めたときに、すらすらと読める書き方であるのも大切です。よって、「この言葉ってなんだろう?」「この人、なにが言いたいんだろう?」というように、読み手に立ち止まらせる書き方の人は、仕事ができない人である可能性が高いと言えます。
あるいは、メールのキャッチボールを減らす工夫や気遣いをするのもポイントです。なんらかの依頼をするケースなら、「いつまでに」というように具体的な日程を示したほうが親切ですよね。でも、相手を気遣おうとするあまり、「お任せします」と伝える人も多いのです。
日程は仕事を受けるかどうかの重要な条件ですから、「お任せします」と伝えられた相手は、「締切はいつですか?」「○月△日頃まででよければお受けできます」のように確認しなければなりません。それだけキャッチボールが増え、気遣ったつもりが逆に相手にとっては迷惑になるのです。

7つの要素で構成されるメールの「型」
メール術のうち、ここでは「基本のキ」と言えるポイントについて解説していきます。まず知ってほしいのはメールにおける構成要素で、以下の7つとなります。
- 宛名
- あいさつ
- 名乗り
- 全体のテーマ(要旨)
- 詳細
- 結びのあいさつ
- 署名
先方の名前である「1. 宛名」に始まり、「お世話になっております」「ご無沙汰しております」といった「2. あいさつ」、自分が誰であるかという「3. 名乗り」と続きます。そして、「結論」「要旨」と言ってもいいですが、なにを伝えたいのかという「4. 全体のテーマ」を書き、それを具体的に説明する「5. 詳細」を示したら、「よろしくお願いいたします」といった「6. 結びのあいさつ」、自分の「7. 署名」で終えます。
なかには、「宛名や名乗り、結びのあいさつはいらない」「用件だけのほうが効率的だ」と主張する人もいます。でも、これら7つの要素は、いわば「型」のようなものであり、大半の人が使っていますから、相手にとっても理解がしやすいのです。
仮に、宛名や名乗り、結びのあいさつがないメールを受け取ったら、相手は違和感を覚えます。違和感を覚えるとはつまり、「手を抜いているのではないか?」「常識を知らないのだろう」「嫌われているのかな?」というように、そこに「なにか理由がある」と考えることを意味します。つまり、それだけ相手に無駄な負担をかけてしまうのです。せっかく多くの人が使っている型があるのですから、奇をてらわずその型にのっとることが得策でしょう。
これらの要素が抜けていると、「失礼だな」など、場合によっては相手が不快感を覚えることもあるでしょう。ここが大きなポイントです。私は、メールにおいて最も重要なことのひとつは、「相手に不快感を与えない」ことだと考えているのです。7つの要素がなくて不快感を覚える人はいても、7つの要素があって不快感を覚える人はいませんから、やはり型通りに書くほうがいいのです。

相手に不快感を与えないため、「宛名はコピペ」を徹底する
不快感を与えないという点で言えば、「宛名」の書き方にも注意が必要です。私の場合、「友朗」の「朗」の字を間違っているメールを受けることもあります。あるいは、弊社名「アイ・コミュニケーション」が「アイ・コミュニケーションズ」と書かれていることもあります。当たり前ですが、名前を間違われたらいい気はしませんよね?
ですから、宛名については「絶対に間違えない」ことが大前提となります。そうするためには、相手の署名などから「宛名はコピペ」するのを徹底するのが無難です。「山田さんは簡単だから入力、齋藤さんは難しいからコピペ」のように考える人もいるかもしれませんが、エラーはその中間のところで起きます。ですから、エラーを起こすリスクをともなう判断をするのではなく、どのような名前の相手であっても「宛名はコピペ」と決めて処理しましょう。
また、宛名については「CC」の扱いにもポイントがあります。CCについては、「CC:〇〇様」「CC:関係者各位」といった記載が必要かという議論がありますが、私からは毎回書くことをおすすめします。そうすることで、相手が「一対一のメールだ」と勘違いするのを防げるからです。
一対一のメールだと勘違いすると、本来共有すべきではない人に重要な情報が漏れてしまうリスクもあります。CCの記載を怠ったがために、相手が自分の上司がCCに入っていることに気づかず、「すいません、うちの上司が使えなくて」なんてメールを送らせてしまえば目もあてられません。
ここで挙げたポイントはごく一部ですが、とにもかくにもメールにはその人の仕事力が表れています。「たかがメール」と侮らず、できる人になるためのメール術を身につけてほしいと思います。

【平野友朗さん ほかのインタビュー記事はこちら】
仕事が速い人のメール時短術。1日2時間を解放する実践テクニックとは?
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清家茂樹(せいけ・しげき)
1975年生まれ、愛媛県出身。出版社勤務を経て2012年に独立。ジャンルを問わずさまざまな雑誌・書籍の編集に携わる。
