
- 「やることリスト」をつくっても、予定を詰め込みすぎて結局終わらない。
- 「仕事も勉強も趣味も、全部頑張りたい」と思うけれど、どれも中途半端に感じてしまう。
こんなふうに悩んでいませんか?
タスク管理や自己成長は大切ですが、あれもこれもとすべてを完璧にこなそうとすると、心も体も疲れてしまいます。
そこで今回は、あえて1日のタスクを「3つ」に絞るというシンプルな方法、「ピックスリー」をご紹介します。
筆者の実践例も交えながら、やり方や続けるコツをわかりやすく解説します。
ピックスリーとは?
ピックスリーは、フェイスブックの創業メンバーのひとり、ランディ・ザッカーバーグ氏が提唱したタスク管理の考え方です。
やり方はとてもシンプル。
まず、自分の人生にとって欠かせない大切なカテゴリーを5つ選ぶ。そして毎日、その中から3つを選び、実践する。*1
カテゴリーには、仕事、運動、睡眠、家族、友人などがあります。
このうち、自分がその日に大切にしたい3つを選び、その3つに集中するのです。
ザッカーバーグ氏は、ピックスリーのメリットとして「もっと集中でき、もっとうまく優先順位をつけられ、もっと効率よくそれらを行える」と述べています。*1
つまり、あれこれ手を出すよりも、少数に絞って丁寧に取り組むことが、結果的に自分の満足度や成果につながるのです。

「すべてを完璧に」は幻想
「仕事も家事も勉強も、全部大事で選べない」
「やることを絞ったら、サボっている気がする」
このように思う人もいるかもしれませんが、そもそも全部をやろうとすることが間違い。
『エッセンシャル思考 最少の時間で成果を最大にする』(2014年,かんき出版)の著者グレッグ・マキューン氏は、私たちの周りに選択肢や情報が多すぎることで、次のような問題が起きていると指摘しています。
- 何が大事で何がそうでないかを見分けられなくなっている
- 自分の時間とエネルギーをどこに注ぐか決められずにいる *2
このような状態が続くと、限られた時間やエネルギーをムダに使ってしまい、結果として成果が出にくくなります。
たとえば「仕事で忙しい時期に無理をして資格試験の勉強をしても、集中できずに不合格になる」といったことが起こりかねません。
さらに、選択肢が多すぎることによる「決断疲れ」も、集中力や判断力を低下させる原因です。
スタンフォード大学経営大学院教授のジョナサン・レヴァブ氏らが実施した実験では、決断の繰り返しが判断力の低下につながる可能性が示されました。
裁判官による仮釈放の判断を、時間帯別に調査。
- 午前中の早い時間では65%が仮釈放を認められたが、時間が経つにつれほぼ0%に。
- 昼食休憩を挟むと再び65%まで戻った。
*3をもとに筆者がまとめた
レヴァブ氏らは「裁判官が判決を繰り返し下す場合、現状維持を支持する判決を下す傾向が強まる」と、実験の結果を分析しています。*3
つまり判断の連続で疲労がたまると、判断を避けるような選択をしてしまうのです。
私たちも毎日、服を選び、食事を決め、仕事の順番を考えるなど、小さな決断を何度も繰り返しています。
そうした日常の「選ぶこと」に疲弊しないためにも、自分にとって本当に大切なことに意識を向け、余計な選択肢を減らすことが大切なのです。

【実践】「ピックスリー」を試してみた
ここからは、筆者が実際にピックスリーを試した様子を交えながら、そのやり方を紹介します。基本のステップは、次の3つです。
- 5つのカテゴリーを設定する
- 毎日3つだけ選んで実践する
- 記録をつける
1. 5つのカテゴリーを設定する
まずは5つのカテゴリーを設定します。
今回はザッカーバーグ氏の著書を参考に「仕事、睡眠、運動、家族、友人」に設定しました。
それぞれの内容は以下のとおりです。*4を参考に筆者がまとめた
- 仕事:普段の仕事、キャリアアップに向けた勉強や講義、慈善活動など。
- 運動:体を動かすだけでなく、心身を整えるためのセルフケアも含めた、健康全般にかかわる活動。
- 友人:自分が楽しいと感じること。趣味や個人的な興味、仕事や家族以外で喜びをもたらしてくれる人や活動も「友人」と考える。
- 睡眠・家族は言葉のとおり。
2. 毎日3つだけ選んで実践する
5つのカテゴリーのなかから、毎日3つだけを選びます。
「前日と同じ3つを選んでもいいし、気分を変えて別の3つを選んでもいい」とザッカーバーグ氏。
代わりに「選ばなかった二つについて、1秒たりとも罪悪感ややましさを抱かないこと」を強調しています。*4
選ばなかったカテゴリーは別の日に選べばいいと割り切って、その日は3つだけに集中するのがポイントです。
3. 記録をつける
ピックスリーを続けるうえで、記録を残すことも重要なポイントです。
ザッカーバーグ氏は「毎日どの三つを選んだかを書きとめ、その内容を振り返るときに最も効果を挙げる」と述べています。
なぜなら「日々の選択を記録すれば、人生を俯瞰できるし、もっと努力したほうがいい部分も見えてくる」からです。*4
そこで筆者は、毎晩「その日に選んだ3つのカテゴリー」と、簡単な日記をつけてみました。
日記には、選んだ理由や実際にやったこと、その日の感想などを自由に書いています。


またピックスリーを続けるうえで「五つのカテゴリーをまんべんなく選べているかどうか」確かめるといいそうなので、各カテゴリーの選択回数をまとめる欄も作成しました。*4
1週間実践した結果が、以下のとおりです。

【継続】ピックスリーを続けるための2つのヒント
ピックスリーを実践して感じたのは、「集中力」と「満足度」の向上です。
以前は1日に仕事・家事・読書・趣味などを詰め込みすぎて、作業中に「あれもやらなきゃ」と気が散ることが多く、どれも中途半端になりがちでした。
しかし、「今日はこの3つだけ」と決めることで、目の前のことに集中しやすくなり、終わったときの達成感も増えました。
継続するうえで効果的だと感じたポイントは、次のふたつです。
1. 1日の時間配分を考える
3つのカテゴリーを決めたら、「それぞれにどれだけ時間を使うか」をざっくり決めておくといいと思います。
実践で、仕事に時間を割きすぎてしまう日があったためです。
たとえば「仕事に8時間、家族に2時間、趣味に1時間」といった形で配分しておくと、やりたいことが無理なくこなせるでしょう。
タスク管理ツールやスケジュールの活用もおすすめです。
2. 5つのカテゴリーの見直し
最初に決めた5つのカテゴリーの見直しも大切だと感じました。
筆者の場合、「家族」や「睡眠」は選ぶ機会が少なかったため、代わりに「勉強」や「趣味」といった具体的な項目に入れ替えました。
自分に合うかたちに調整することで、より続けやすくなるはずです。

***
ピックスリーは事前準備や道具などが必要なく、簡単に始められます。やることが多すぎて管理しきれない人や、不完全燃焼な日が続いている人はぜひ試してみてください。
※引用の太字は編集部が施した
*1 東洋経済オンライン|世界でバズった「毎日3つ選ぶだけ」幸福術
*2 グレッグ・マキューン(2014),『エッセンシャル思考 最少の時間で成果を最大にする』, 株式会社かんき出版.
*3 Danziger, S., Levav, J., & Avnaim-Pesso, L (2011), “Extraneous factors in judicial decisions,” Proceedings of the National Academy of Sciences, Vol.108, No.17, pp.6889-6892.
*4 ランディ・ザッカーバーグ(2020),『ピック・スリー 完璧なアンバランスのすすめ』, 東洋経済新報社.
藤真唯
大学では日本古典文学を専攻。現在も古典文学や近代文学を読み勉強中。効率のよい学び方にも関心が高く、日々情報収集に努めている。ライターとしては、仕事術・コミュニケーション術に関する執筆経験が豊富。丁寧なリサーチに基づいて分かりやすく伝えることを得意とする。