真面目な人ほどハマる "説明しすぎ" の罠。伝わらないなら、伝えるのをやめてみる

余白を残し、聞いて引き出す視点に変えたプレゼン

「言葉を尽くしても反応がイマイチ」
「何度説明してもメンバーが動かない……」

このように、現場で頭を抱える人は決して少なくないはずです。

そんなとき、真面目な人ほど説明や資料をさらに加えようとするのではないでしょうか。

しかし、その行動は、むしろ逆効果かもしれません。

聞く側が求めているのは、それ以上説明を重ねることでも、情報を増やすことでもないのです。それどころか、説明の細かさや情報量の多さに圧倒されて、話についてこれていない可能性があります。

だからこそ、ここで発想を変えましょう。
伝わらないなら、伝えるのをやめてみませんか?

本記事では、伝えようと頑張るほど伝わらなくなる理由と、具体的な対処法を解説します。

なぜ「伝えようとする」ほど届かない?

相手に伝えようと前のめりになると、意外な落とし穴にはまってしまうことがあります。たとえば次のようなことです。

  • 情報が多すぎる
  • 自分が伝える情報だけに集中する

それぞれ詳しく説明しましょう。

◇ 情報過多で相手が処理できない

「ちゃんと説明しなきゃ」と思うあまり、こんなことをしてはいないでしょうか。

  • スライドに文字をギュウギュウに詰め込む ✖
  • 長々と細部まで説明する ✖

脳神経外科医の天野惠市氏はこう説明しています。

「脳のキャパシティは決まっていて、一度にインプットできる情報量や、情報処理能力には限りがあります」*1

つまりそれは、一度に大量の情報を伝えても、相手がキャパオーバーになり、せっかく伝えた情報がはじかれている可能性があるということです。

◇ 一方通行になっている

私たち人間には、"人からされたこと" に対して、お返しをしなければと感じてしまう「返報性の原理」という心理作用があります。

特に、「好意や親切などポジティブなこと」に関する返報性をご存知の方は多いかもしれません。しかし、「攻撃や批判などネガティブなこと」にも同様の作用があります。

つまり、一方的に話をする人に対し、人は同等の返報をする可能性があるのです。たとえば――

  • 商談なら成立しにくくなる
  • プレゼンなら動いてもらいにくくなる
  • 企画等の提案なら通りにくくなる

といったところ。

伝えることばかりに集中しすぎると、どうしても「自分がどう話すか」ばかりに意識が向いてしまいます。しかし、聞き手に寄り添わなければ、どんな言葉も届きにくくなってしまうのです。

情報過多で一方通行なプレゼン

「伝えないほうが伝わる」という発想転換

こうした状況は、「一生懸命に伝えようと頑張る人」ほど起こりやすいはずです。だからこそ、押してダメなら引いてみましょう。

伝えようと頑張るのを、いったんやめてみるのです。

それは、決して心や情報を閉ざすことを意味するわけではありません。視座を変え、余計なものを差し引いて、相手に届くかたちにしてあげることを意味します。

ここで、ふたつのアプローチを紹介しましょう。

1.「情報を詰め込む」のをやめて「余白を残す」

熱意があるからこそ、資料にあれもこれも詰め込み、長々と説明してしまうもの。しかし、情報過多で相手を混乱させては、通るはずの企画も通りません。

販促コンサルタントで株式会社アカウント・プランニング代表取締役の岡本達彦氏は、「今の時代、人々はスマホの1秒スクロールで情報を判断する時代です。だからこそ、情報を『すべて載せる』のではなく、『選び抜く』力が問われています」と語っています。*2

また、同氏によれば、情報が多いほど「何が大事かわからない」「読み切る気力が湧かない」などと、混乱や不安を招いてしまうといいます。*2

伝える情報を厳選し、あえて余白を残すことで、相手に「受け止める・咀嚼する」ゆとりを与えることができるのではないでしょうか。

◇ アクション例

実際に、この「情報を詰め込むのをやめて余白を残す方法」を、ビジネスシーンに当てはめてみましょう。

  • 資料
    ・スライドは「1枚=1メッセージ」と決め、伝えたい結論だけを大きく載せる
    ・補足データや根拠は別紙にまとめ、「必要な人だけが見る」構成にする

  • 説明
    ・冒頭30秒で「今日はこの1点だけ決めたい」とゴールを共有する
    ・メリットが3つあるなら、あえて最も重要な1つだけを強調する

こうした工夫によって、聞き手は「何を理解すればいいのか」「どこを判断すればいいのか」が明確になり、話についていきやすくなるはずです。

話す側も聞く側も、リラックスしているプレゼン風景

2.「伝える」より「聞いて引き出す」

自分の意見を一方的に話すのをやめ、相手の考えを聞くことに集中してみましょう。伝えるより先に聞いて引き出すのです。そうすることで相手の視点や要求がわかり、伝えるポイントを絞り込むことができます。

その際に意識したいのが「積極的傾聴技法」(active listening)という聞き方の姿勢です。

パフォーマンス心理学の第一人者でハリウッド大学院大学特任教授の佐藤綾子氏によれば、この姿勢で傾聴できると相手は「自分の話をよく聞いて、理解してくれる人」と感じ「信頼と満足の感情」を抱くようになると述べています。*3

すると相手にも「こんなに私の意見を聞いてくれるのだから、相手の話も聞いてみよう」と返報性の原理が働くはず。

具体的には、以下のポイントを押さえて相手の話を聞きます。*4

(1) 相手にまっすぐに向かい合う(Squarely)

(2) 開いた姿勢の(Open posture)

(3) 背筋を傾ける(Lean)

(4) 目を見つめる(Eye contact)

(5) 緊張しすぎないゆとり(Relaxed)

◇ アクション例

実際に、この「伝えるよりまず相手の話を聞いて引き出す方法」を、ビジネスシーンに当てはめてみましょう。

  • 新サービスの提案(社外)
    冒頭で「御社がいま一番困っている点は何ですか?」と質問し、相手の言葉で課題を語ってもらう。その内容を要約して確認してから、「ではその点を前提にご提案します」と話を組み立てる。

  • 新しいプロジェクトの説明(社内)
    最初に概要だけを伝えたうえで、「ここで不安な点はありますか?」「似た経験をした人はいますか?」と問いかけ、出てきた意見を拾いながら説明の順番や深さを調整する。

相手の言葉を起点に話を組み立てることで、「押しつけられている説明」ではなく「自分ごとの話」に変わっていくはずです。

***
伝わらないとき、私たちはつい「もっと説明しなければ」と考えやすくなります。

しかし本当に必要なのは、言葉を足すことではなく、相手が考える余地を残すことかもしれません。情報を削り、問いを投げ、相手の言葉を起点に話を組み立てる。

そうした姿勢こそが、理解と納得を生み、結果として人を動かすコミュニケーションにつながっていくのです。

よくある質問(FAQ)

Q一生懸命説明しているのに相手に伝わらないのはなぜ?

A情報の詰め込みすぎで相手がキャパオーバーになっている可能性があります。脳が一度に処理できる情報量には限りがあるため、伝えたい情報を厳選し、相手に「考える余白」を残すことが大切です。

Q話が一方通行になっていると感じたときの対処法は?

A「積極的傾聴技法」を意識し、まず相手の話を聞くことに集中しましょう。相手の言葉を起点に話を組み立てることで、「押しつけられている説明」ではなく「自分ごとの話」へと変わります。

Q資料やスライドでの「余白」の残し方のコツは?

Aスライドは「1枚=1メッセージ」を徹底し、補足データは別紙にまとめましょう。聞き手が「何を理解すればいいのか」を明確にすることで、話についてきやすくなります。

Q「返報性の原理」をコミュニケーションでどう活かせばいい?

Aまず自分から相手の話を聞く姿勢を見せると、「こんなに聞いてくれるなら、自分も聞いてみよう」と相手にも返報性が働きます。傾聴によって信頼と満足の感情を引き出しましょう。

【ライタープロフィール】
柴田香織

大学では心理学を専攻。常に独学で新しいことの学習にチャレンジしており、現在はIllustratorや中国語を勉強中。効率的な勉強法やノート術を日々実践しており、実際に高校3年分の日本史・世界史・地理の学び直しを1年間で完了した。自分で試して検証する実践報告記事が得意。