仕事がたまりがちな人へ。3秒でできて、効果バツグン「3行ハック術」とは

書類に囲まれた女性

朝から、忙しく働いた日。チャットに返事をし、資料を修正し、会議にも出て、企画案も考えた。でも、想定していた量と比べると、思ったより進んでいない。

そんな日に心当たりはありませんか?

実はこれは、能力や仕事の速さだけの問題ではないようです。この記事では、「思ったより仕事が進まない問題」の解決策を、心理学に基づいて考えていきます。

終わっていない仕事のことが頭に浮かぶと、目の前の仕事が止まる

ある実験を紹介します。

まだ果たしていないタスク(タスクA)がある参加者に、そのタスクAとは無関係の文章を読ませるというもの。この実験の参加者は、読んでいる最中にタスクAのことが頭に浮かんでしまうそうです。そのせいで、続けて出された別の課題の成績が下がってしまったそうです(フロリダ州立大学の研究者らの研究による)。*1

実験の流れ

タスクAが未完了
→
無関係の文章を読む
→
読んでいる最中にタスクAが浮かぶ
→
別の課題の成績が下がる

目の前の文章を読むことと、タスクAはまったく別の作業です。そして、タスクAが浮かぶことで、処理の能力が落ちてしまう。

日々の仕事に置き換えるとどうでしょうか。

あなたは企画を考えている。あたまに、「見積もりへの返信」「上司に相談すべき案件」「修正が必要な書類」などが浮かんでくる。よくあることですよね。

実はそのたびにあなたの判断力や処理能力は削られているのかもしれません。ここから導かれるのは、あなたの仕事が思ったより進まないのは、終わっていない仕事が「頭に浮かぶ」からということです。

パソコンに向かう女性

作業中、別の仕事のことを考えないようにするには?

実験には続きがあります。

タスクAが未完了のままの参加者に、今度はタスクAの処理方針を具体的に作ってもらいました。「いつ、どこで、どう進めるか」を決めてもらい、そのあと無関係の文章を読んでもらいました。

すると、文章を読んでいる最中にタスクAが浮かぶことがなくなり、続けて出された課題の成績が下がることもなかったそうです。*1

実験の続き

タスクAが未完了
→
タスクAの計画を立てる
→
無関係の文章を読む
→
タスクAが浮かばず、成績も下がらない

仕事全体の量は変わっていません。「タスクA+文章を読む+課題」の3つですね。違いは計画を立てたかどうかだけです。

方針を立てた時には、タスクAが割り込んでこなくなり、処理能力は削られなかった。問題は「仕事の量そのもの」ではなく「あなたの中への割り込み」だと言えそうです。

だとすれば、頭に別の仕事が浮かんでくるという状態にならないように、計画をたてればいいだけです。

次に、「忙しい中、どう計画をたてればいいのか」を解説します。たくさんの仕事がある中、案件をすべて書き出して計画をたてるなんてなかなか難しいものです。そんなことやってられない、というあなたのための、簡単な方法を紹介しましょう。

ペンとメモ帳

ハック1 3秒でできる「再開メモ」

一つ目のハックは「再開メモ」。仕事を途中で中断しなければならないときに「いつ、どこで、何から」をメモしておくだけです。

会議の時間になる、電話が鳴る、上司に呼ばれる。仕事はいつもキリのいいところで終わりません。むしろ中断が入るほうが普通ですよね。

例としてはこんなかんじ。

会議終了後15時、自席で、見積もりの35行目から37行目の数字を埋めるところから

付箋に書いてPC画面のど真ん中にでも貼ってみてください。それを剥がさないと何もできないので、自動で即座に再開できます。

ポイントは2つ。1つめは「いつ」は時間まで書くこと。2つめは「どう」は最初の数分でできる動作を具体的に書いておくこと。大きすぎる単位(見積もりを仕上げるなど)だと、結局何をするのか考えるところから始めなくてはならなくなりますから、「見積もりの35行目から37行目の数字を埋める」のように動作単位で書くのがポイントです。

再開メモは、取りかかりのスピードを上げてくれるだけではなく、中断中の会議でそのことが頭に浮かびにくくなるという効果があるのは、実験の通りです。

再開メモには、頭の中に邪魔をさせないことと、再開が迅速になること、二つの効果があります。

パソコンを打つ男性

ハック2 1行で送れる「期日返信」

二つ目のハックは「期日返信」。すぐには答えられない依頼が来たとき、返事の中身より先に、いつ返すかだけを送ってしまう方法です。

メールやチャットで、すぐには答えられない依頼が届く。きちんと考えてから返そう、と置いておく。丁寧なようですが、置いているあいだ、その返信はずっと未完了のタスクです。実験のタスクAと同じで、別の作業をしている最中に何度も頭に浮かんできますよね。

たとえば、こんな一文です。

ご依頼ありがとうございます。金曜の昼までに、見積もりを添えてお返事します。

中身はまだ書きません。返す日時を決めて、それだけを送ります。届いた瞬間に送ってしまうのがコツで、あとで送ろうとすると、その「あとで」がまた未完了のタスクになります。

書き方で気をつけたいのは、日時と中身です。日時は「金曜の昼」のように具体的に。「後日改めて」では、いつ返すかが決まっていないので、頭に浮かぶのは止まりません。中身は、「見積もりを添えて」のように何を返すかを一言添えます。ここまで書いておくと、返信の中身も決まった状態になり、書くときに迷いません。

期日返信を送った返信は、計画のある仕事です。実験の通り、別の作業をしているあいだに浮かびにくくなります。

期日返信は、頭の中に邪魔をさせないだけでなく、相手を待たせずに、考える時間を確保する方法でもあります。

***

朝から忙しく働いたのに、思ったより進んでいない。その原因は、仕事の量ではなく、終わっていない仕事が頭に浮かんで、あなたの処理能力を削っていたことにありました。

浮かんでこないようにするには、「いつ、どこで、何から」を決めておけばいい。そのために今日からできることを、ふたつ紹介しました。

  • 再開メモ 仕事を中断するとき、「いつ、どこで、何から」を付箋に書いてPC画面に貼る
  • 期日返信 すぐ答えられない依頼には、中身より先に「いつ、何を返すか」だけを送る

どちらも数秒で終わります。次に席を立つとき、付箋を1枚、試してみてください。

よくある質問(FAQ)

Q. 全部終わらせないと、仕事は進みませんか。
実験では、未完了の目標について具体的な計画を立てただけで、目標のことが浮かばなくなり、別の作業の成績も下がらなくなりました。目標はまだ果たされていない状態です。次の一手を決めた時点でその仕事は頭に浮かばなくなり、目の前の仕事が進みます。
Q. 中断するときの1行には、何を書けばいいですか。
いつ・どこで・何から再開するかの三つです。「明日10時、自席で、見積の数字を3行埋めるところから」のように、時刻と場所と最初の数分でできる動作を書きます。書くのは、いま離れる仕事の1件だけです。「見積、続き」のような名前だけのメモでは、何をするかが決まっていないので計画になりません。この1行で、次に取りかかる仕事に集中でき、置いた仕事も再開のときに迷わず始められます。
Q. 返事の中身を考える時間が取れないとき、返信はどうすればいいですか。
返事を考え始める前に、「金曜の昼までに、見積を添えてお返事します」のように、いつ・何を返すかだけを先に送ります。返す日時を決めて送った返信は計画のある仕事になり、目の前の仕事をしているあいだに浮かばなくなります。返信そのものも締め切りが決まるので、その前に時間を取って書くことになり、中身を考える時間はそこで確保できます。
(参考)

*1: Masicampo, E. J. & Baumeister, R. F. (2011), Journal of Personality and Social Psychology, 101(4), pp.667–683|Consider it done! Plan making can eliminate the cognitive effects of unfulfilled goals

【プロフィール】
岡 健作(おか・けんさく)

株式会社新恵社 代表取締役。
1977年生まれ、福岡県出身。同志社大学文学部英文学科卒業。2010年に株式会社恵学社(現・株式会社イングリッシュカンパニー)を創業。2014年に学習メディア「STUDY HACKER」を立ち上げ、編集長を通算10年以上務める。STUDY HACKERは最大で月間500万PV、STUDY HACKERのInstagramは月間700万PV、フォロワー28万人(2026年10月7日時点)。2026年に新恵社を設立し、自社のメディアで読者と直接つながる「広報のD2C」を掲げる。著書に『勉強の戦略』(朝日新聞出版)など。
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