「美しい顔」とは

・ 「美しい顔」とは、講談社の文芸誌『群像』2018年6月号に掲載された、北条裕子氏による小説。第61回群像新人文学賞に選ばれ、第159回芥川龍之介賞の候補作としても選出された。しかし、複数の箇所において既存書籍との類似が発覚し、著作権侵害の有無などをめぐって議論が起こっている。

・ 「美しい顔」は、北条氏にとってデビュー作となる。東日本大震災で母親が行方不明になった女子高生を主人公とした一人称形式の小説だ。北条氏自身は、被災地に入ったことはないとのこと。「日刊ゲンダイDIGITAL」によると、新人文学賞の選評においては「新星のごとく現れた期待の大型新人」と絶賛されたという。

「美しい顔」をめぐる出版社の対応

・ 講談社は7月3日、「美しい顔」を『群像』に掲載するにあたって「参考文献未表示の過失」があったと公表した。また、既存書籍とのあいだに「被災地の描写における一部の記述の類似」があることも認めた。『群像』8月号に、以下の告知文および5つの「主要参考文献」が掲載されるという。

小誌二〇一八年六月号 P.8~P.75 に掲載した第六十一回群像新人文学賞当選作「美しい顔」(北条裕子)において描かれた震災直後の被災地の様子は、石井光太著『遺体 震災、津波の果てに』(新潮社)に大きな示唆を受けたものです。主要参考文献として掲載号に明記すべきところ、編集部の過失により未表記でした。
文献の扱いに配慮を欠き、類似した表現が生じてしまったことを、石井氏及び関係各位にお詫び申し上げます。
また、東日本大震災の直後に釜石の遺体安置所で御尽力された方々に対する配慮が足りず、結果としてご不快な思いをさせたことを重ねてお詫び申し上げます。

(引用元:講談社|群像新人文学賞「美しい顔」関連報道についてのお知らせ

・ それに先立つ6月29日、「主要参考文献」として挙げられたルポルタージュ『遺体 震災、津波の果てに』(以下、『遺体』)を著したノンフィクション作家の石井光太氏と、出版元の新潮社は、北条氏および講談社から謝罪文を受け取ったと発表した。新潮社は「複数の類似箇所が生じていることについては、単に参考文献として記載して解決する問題ではない」「類似箇所の修正を含め、引き続き誠意ある対応を求めています」と述べた。これに対し、講談社は「小説という表現形態そのものを否定するかのようなコメント」と反発し、「北条氏は大きな衝撃と深い悲しみを覚え、編集部は強い憤りを抱いて」いると主張した。

【法人様 ご導入事例】英語パーソナルトレーナーによる「90日集中研修」で英語人材を科学的に育成!
人気記事

「美しい顔」と「主要参考文献」との類似

・ インターネット上では、「美しい顔」の作品中における「主要参考文献」との類似を批判的にとらえる人が目立つ。AbemaTVのニュース番組『AbemaPrime』は、独自に検証した結果、少なくとも10カ所で『遺体』との類似を見つけたという。たとえば、「美しい顔」における「うっすらと潮と下水のまじった悪臭が流れてくる」という部分は、『遺体』の「うっすらと潮と下水のまじった悪臭が漂う」とよく似ている。

・ 小説家の盛田隆二氏は、上記のような類似点についてTwitter上で言及した。自身も「戦争小説を書く時、戦争体験記を参照します」としつつ、「行軍が何日続いたかなど事実を書くのは問題ないけど、兵士の心象まで引き写したらアウト」だと述べた。

(参考)
講談社|群像新人文学賞「美しい顔」関連報道についてのお知らせ
講談社 群像 公式サイト|群像2018年6月号
文藝春秋ホームページ|芥川龍之介賞 最新情報
Abema TIMES|芥川賞候補作「美しい顔」、ノンフィクションとの類似表現が独自検証で10か所超 それでも“著作権侵害”を問うのが難しい理由
日刊ゲンダイDIGITAL|芥川賞ノミネート 3度目の正直狙う松尾スズキの下馬評は?
Twitter|盛田隆二『焼け跡のハイヒール』祥伝社
朝日新聞デジタル|新潮社「修正を含め対応要望」 芥川賞候補作の類似表現