あらゆる立場の人が身につけるべき「デザイン思考」とは

・ デザイン思考(design thinking)とは、モノやサービスを利用する人からのフィードバックと改善を重ねることで、既成概念をくつがえすような新しいイノベーションを生み出す思考方法。2004年頃から米国で認知が広まり、2014年頃から日本でも注目されるようになった。デザイン思考はビジネスのほか、社会問題や日常の悩みなど、さまざまな分野における問題解決に活用することができる

・ そもそもデザインとは、モノの見た目を決定することだけではなく、モノの機能やシステムの全体像を設計することをも意味する。そのためデザイン思考は、グラフィックデザイナーだけでなく、サービス業に従事する人や技術者など、あらゆる立場の人にとって有用である。

・ デザイン思考という手法に注目しているビジネスパーソンは多いため、デザイン思考を習得するための研修や講座を提供している企業も複数ある。たとえば、イノベーションに関する研修・ワークショップを手がける「アイリーニ・マネジメント・スクール」の附属機関である「デザイン思考センター」は、4日間の集中クラス「デザイン思考マスター・クラス」を開講。初心者でもデザイン思考の理論を理解し、活用できるようになるという。

・ デザイン思考によるイノベーションの創出は、あらゆる分野にあてはめることができるが、特にITにおいて重要だとされる。このことについて、社会企業論を専門とする須藤順氏(高知大学)は次のように語る。

 これからのIT領域、技術者には、これまで以上に自ら主体的に、現場に足を運び、他者との協働を通じてユーザーの潜在的なニーズを見付け出し、ソリューションを提案できる力が求められる
 そのための1つの方法がデザイン思考なのだ。そして、デザイン思考を身に着けるには、とにかく、実践してみることが何よりの近道となる。

(太字による強調は編集部にて施した)
(引用元:Build Insider|デザイン思考の活用事例

数字よりも実際の観察! 「デザイン思考」のコンセプト

・ デザイン思考には、いくつかの重要なコンセプトがある。

ユーザーへの主観的な共感
- 数値データを客観的に分析することより、フィールドワークでユーザーを実際に観察することを重視する。
- ユーザーと同じ行動をしてみることで、ユーザーの心情に寄り添う。

チームメンバーとのコミュニケーション
- 同じプロジェクトに加わっているメンバーとの対話を重視する。
- メンバーと密にコミュニケーションをとることで、仮説の検証や改善を速いテンポで行う

トライアンドエラー
- 最初から完璧に仕上げることを重視しない
- 試作品をつくり、チームメンバーやユーザーからのフィードバックを受けて改善する流れを繰り返す。

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「共感」から始まる、「デザイン思考」5つのプロセス

・ デザイン思考には以下の5つのプロセスがあり、これらを反復することによって徐々に完成へと近づける。

1. 共感
- ユーザーを観察し、得られた映像や音声のデータを分析することによって、ユーザーの心情・価値観を分析する。
- ユーザーの体験を可視化することで、ユーザーがこれまで当たり前だと思い込んできたことへの違和感を発見する。

2. 問題の定義
- 観察を通じて明らかになったことから、解決するべき課題を設定する。
- ユーザー自身も自覚していない、本当のニーズを明らかにする

3. アイディアの創出
- 定義された問題を解決できるアイディアを量産する。
- 質より量を重視し、ブレインストーミングなどによってできるだけ多くのアイディアを出す。

4. 試作
- 出されたアイディアを基に、簡易な試作品をつくる
- アイディアが可視化されることで、新たな気づきが生まれる

5. 検証
- つくった試作品を、実際のユーザーに使ってもらう
- フィードバックを得て、改善につなげたり、コンセプトから練り直したりする

・ 『デザイン思考の道具箱―イノベーションを生む会社のつくり方』(早川書房、2007年)などの著書がある奥出直人教授(慶應義塾大学大学院)は、デザイン思考のプロセスのうち「観察・分析」の部分を「コンテクスト(文脈・背景)を膨らませる」重要な作業だとしている。観察・分析の過程に充分な「人、時間、お金」を投資しないと、アイディアは表層的なものに留まってしまうという。しかし、観察・分析によってコンテクストが膨らめば、「ターゲットペルソナ(理想の顧客人物像)」を浮かび上がらせることができるとのことだ。

アップルでもIBMでも。デザイン思考の事例

・ デザイン思考によって生み出されたイノベーションの有名な成功例には、米アップル社の携帯音楽プレーヤー「iPod」がある。iPodのチームは、ユーザーが既存の音楽プレーヤーを使っている様子を徹底的に観察した(共感)。その結果、ユーザーはCDに収録された音楽をPCに取り込み、さらに音楽を1曲ずつプレーヤーに移すことを手間に感じていることがわかったので、この手間を解消できる機能を新製品に盛り込むことにした(問題の定義)。チームメンバーで話し合ったことにより、iPodとPCを自動で同期させる「auto-sync」といった斬新なアイディアが生まれた(アイディアの創出)。そして試作検証を繰り返し、2カ月で100以上の試作品をつくった末に、iPodが完成した。この間、わずか11カ月であった。

・ 2001に発売されたiPodは世界中で大人気となり、それまでSONYのウォークマンが席巻していた携帯音楽プレーヤー市場の様子を一変させた。iPodは、メモリーの容量が大きいだけでなく、手間をかけずにPCと同期することができるため、文字通り「自分の音楽を全て持ち歩く」ことができる。それに加え、タッチパネルによって直感的でわかりやすい操作ができることも、人々が気づいていなかった潜在的なニーズに合致した。

・ 情報システムに関する製品・サービスを提供する米IBM社は、2012年に「IBMデザイン」という組織を設置し、全社的にデザイン思考を取り入れている。当時の会長兼CEOは「顧客体験の改善にフォーカスすべきだ」と主張し、そのためにはデザイン思考が必要不可欠だと考えたという。

いまでは、IBM製品およびサービスのほぼすべてが、クラウドで提供され、短期間にアップデートを繰り返している。こうした変化に対応した開発体制を実現するには、デザインシンキングが不可欠だ。常に顧客の声を聞き、それを実現するためにスピード感を持って対応し、アジャイル型のビジネスモデルで開発し、製品やサービスをリリースするといった繰り返しを行うからだ。

(引用元:ダイヤモンド・オンライン|IBMが本気で取り組む「デザインシンキング」の現場

(参考)
Build Insider|0から1を創り出すデザイン思考 ― 新たなイノベーション創出手法
Build Insider|デザイン思考の活用事例
Study Hacker|シリコンバレー発のイノベーション創出メソッド 「デザイン思考」
富士通|デザイン思考
BPA JAPAN|デザイン思考を実践するiPodの父トニー・ファデル
Mugendai|企業の中にこそ必要な「デザイン思考」の今——慶應義塾大学・奥出教授インタビュー
アイリーニ・デザイン思考センター
ダイヤモンド・オンライン|IBMが本気で取り組む「デザインシンキング」の現場