「デジタル暗黒時代」とは
・ 「デジタル暗黒時代」とは、デジタルによって構成されている情報が読み取れなくなり、後世の人々にとって過去を知るための資料が失われている状態。21世紀に入って以来、情報の多くがデジタル方式で保存されるようになった一方、将来的に21世紀が「デジタル暗黒時代」になりかねないという懸念が専門家たちから表明されている。
・ 世界史において、紀元前12~8世紀頃のギリシャは「暗黒時代」と呼ばれることがある。当時の様子が分かる文字資料がほぼ残っていないためだ。このことから、21世紀は後世の人々にとって「暗黒時代」となってしまうのでは、という懸念を表明する際に「デジタル暗黒時代」という言葉が使われている。
「デジタル暗黒時代」が訪れかねない理由
・ 2013年、公益社団法人・日本工学アカデミーは、「デジタルデータを超長期間、安定かつ安価に保管することを可能とする技術開発の必要性」を提言した。それによると、「妥当なコストで電子データ、デジタルデータを長期間安定に保存する手段」が現在なく、「将来保存したデータを読み出すことができ、そして読み出したデータの意味を理解できるという保障」もない。そのため、同アカデミーは「人類にとって貴重な情報の多くが消失する危機にさらされている」と警鐘を鳴らしている。
・ 国立国会図書館によって2003年にまとめられた「電子情報保存に関わる調査研究報告書」によると、紙の寿命は250~700年と長いため、情報の長期保存に適している一方、磁気ディスク・光ディスクの寿命はわずか20年。しかも、ディスクのようなデジタル媒体が存続したとしても、技術変化によって再生環境が失われるため、デジタル媒体は紙よりも情報損失のリスクが高いという。
「デジタル暗黒時代」への対策
・ 「インターネットの父」と呼ばれている米国のヴィントン・サーフ氏は、21世紀が「デジタル暗黒時代」となることを防ぐため、あらゆるソフトウェアとハードウェアをクラウドサーバー上に保存することを提唱している。それにより、技術変化が進んでも、過去のデータを再生できるようになるという。
・ 工学者の竹内健教授(中央大学)は、電機メーカーのパナソニックなどと共同で、デジタル情報を100年間以上保管できるシステムを開発している。将来的には1000年間デジタル情報を保管できる媒体を開発したいという。
(参考) 日本工学アカデミー|提言「デジタルデータを超長期間、安定かつ安価に保管することを可能とする技術開発の必要性」 国立国会図書館デジタルコレクション|電子情報保存に関わる調査研究報告書(平成15年3月) 朝日新聞デジタル|(科学の扉)「想定外」を考える 消えるデータ、失われる過去 短命のデジタル媒体、社会・文化引き継げず BBC News|Google's Vint Cerf warns of 'digital Dark Age' CREST|【竹内 健】デジタルデータの長期保管を実現する高信頼メモリシステム