“笑顔作り” が仕事の人は燃え尽き症候群になりやすい。「感情労働」に潜む深刻な危険。

肉体労働でも頭脳労働でもない!? 感情労働とは

・ 感情労働(emotional labor)とは、主にサービス業において、顧客などに対応するために労働者が自身の感情をコントロールすることが特に求められる種類の労働。「肉体労働」「頭脳労働」に次ぐ第3の労働形態だとされ、看護師や教師などをはじめ、幅広い職種が該当する。社会学者であるアーリー・ホックシールド氏が、著書『管理される心―感情が商品になるとき』(世界思想社、2000年)において提唱した。感情労働に従事する人が抱えやすいストレスは、日本でも社会問題として注目されている。

・ 2018年11月、毎日新聞は「『感情労働者』が抱えるストレスなどの障害について、予防策の充実を求める声が高まっている」例として、産業別労働組合のUAゼンセンが同8月に「悪質クレーム(迷惑行為)の抑止・撲滅に向けて必要な対策を講じることを求める要請」署名を厚生労働相に提出したことを挙げた。UAゼンセンは、サービス業の現場における「悪質クレーム(迷惑行為)」の被害を防ぐため、法制化などの具体的な対策を求める署名活動を展開しており、同2~6月で176万5,223筆の署名を集めたという。

・ UAゼンセンの流通部門では2017年、接客対応をしている組合員を対象にしたアンケート調査が行われた。その結果によると、客からの迷惑行為に遭遇したことがあると回答した人の割合は70.1%。迷惑行為の種類(複数回答)としては、「暴言」が66.5%で最も多かった。暴言の内容としては、「ブス」「低能」「殺してやる」などがあるという。

労働者の感情が「支配」されている!? 感情労働の特徴

・ ホックシールド氏が提唱した感情労働には、以下の特徴がある。たとえば看護師の場合、患者の精神的不安を解消し、笑顔で落ち着いた態度を保つことが求められているため、感情労働だといえる。

(1)対面あるいは声による接触が不可欠であること、(2)他人の中に何らかの感情変化を起こさねばならないこと、(3)雇用者は、研修や管理体制を通じて労働者の感情活動をある程度支配すること

(引用元:環太平洋大学研究成果リポジトリ|感情労働研究概観(I)―対人援助職と教職―

・ ホックシールド氏によると、サービス産業が発達するにつれ、労働者は顧客満足度を高めるために自身の感情を「商品の一部」として売らなければならなくなった。たとえば接客業では原則として、にこやかで友好的な態度が求められる。その際、意識して笑顔を作ったりするなどの行為は「表層演技」、自然に笑顔が浮かんでくるよう、客に対して感謝の気持ちを抱くよう努めるなどの行為は「深層演技」と呼ばれる。

オン/オフを区別しないと危険! 感情労働における「バーンアウト」問題

・ 感情労働に従事している者は「バーンアウト・シンドローム(燃え尽き症候群)」に陥りやすいといわれている。社会心理学者のクリスティーナ・マスラック氏によるバーンアウトの説明は以下の通り。

長期にわたり、人を援助する過程で心的エネルギーがたえず過度に要求された結果引き起こされる極度の心身の疲労と感情の枯渇を主とする症候群であり、卑下、仕事嫌悪、思いやりの喪失をともなうもの

(太字による強調は編集部で施した) (引用元:一般社団法人 日本看護研究学会|日本版MBI(Maslach Burnout Inventory)の実用性の検討

・ バーンアウト・シンドロームは、3つの症状で構成されている。バーンアウトを研究する久保真人教授(同志社大学)によれば、客などの立場を思いやって行動し、信頼関係を築くには、多大な情緒的エネルギーが必要とされる。そしてエネルギーを使い果たすと、防衛反応として客などと距離を置くようになる。しかし、結果としてサービスの質が低下したことを自覚すると、強い自己否定や離職につながってしまうこともあるという。

- 情緒的消耗感(emotional exhaustion):仕事によって情緒的な力を使い果たし、消耗しきっている。 - 脱人格化(depersonalization):客などに対して、非人間的で思いやりのない態度をとる。 - 個人的達成感 (personal accomplishment)の低下:職務における、有能感・達成感が低下する。

・ 産業カウンセラーの大美賀直子氏によると、感情労働にやりがいを感じる人には、仕事と個人を分けて考えず、仕事にのめり込む人が少なくないという。しかし、そのままでは精神的なエネルギーを消耗し、バーンアウトに至ってしまう。そのため、感情労働に従事する人は「仕事に打ち込む時間や気持ちの込め方に制限をかけることも意識し、オンとオフのメリハリをつける」必要があるという。就業時間外には仕事のことを考えないようにし、自分の趣味などを楽しむべきだといえる。

(参考) 毎日新聞|感情労働者:保護求め労組署名提出 笑顔必要な仕事で苦痛 UAゼンセン|悪質クレーム(迷惑行為)撲滅へ向け、176万5223筆の署名と要請書を加藤厚生労働大臣へ提出 UAゼンセン|池内教授悪質クレーム対策(迷惑行為)アンケート分析結果 環太平洋大学研究成果リポジトリ|感情労働研究概観(I)―対人援助職と教職― コトバンク|感情労働 目白大学リポジトリ|感情労働が職務満足感・バーンアウトに及ぼす影響についての研究動向 一般社団法人 日本看護研究学会|日本版MBI(Maslach Burnout Inventory)の実用性の検討 独立行政法人 労働政策研究・研修機構|バーンアウト(燃え尽き症候群) All About|「感情」を使う仕事につく人の「心」の守り方

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