ファブレスの仕組み
・ ファブレスとは、工場を表す「fab(fabrication facility)」と「less」を組み合わせた造語。ファブレス企業、ファブレスメーカーとも言う。また、そうした経営スタイルをファブレス経営と呼ぶ。
・ ファブレスは、生産は外部企業に完全に依存し、自社は企画・設計や技術・研究開発、販売と販売後フォローに専念する。製造委託先企業にて生産された製品を、OEM供給を受ける形で調達し、自社ブランドの製品として販売する。工場を持たないことで、自社の経営資源を企画や開発に集中でき、生産設備や人員を自社で保有するリスクを避けることができる。ファブレスから委託されて製品を生産する企業は、ファウンドリと呼ばれる。
・ ファブレスの起源は、1980年代のシリコンバレーにさかのぼる。半導体設計に特化した企業が、製品の製造を、生産能力に優れる日本の企業に委託したことが始まりとされる。その後1990年代には、IBMやヒューレット・パッカードなどが業績悪化から自社工場を売却し、ファブレス化の流れが進んだ。日本でもバブル崩壊後、半導体産業を中心にファブレス企業が多く生まれた。
・ ファブレスは、半導体産業で特に発展してきた。その理由は、半導体産業では設備投資費や維持費に莫大な費用がかかるため。また、頻繁に製造プロセスが更新されることや製品ライフサイクルが短いことなども、設備コストの負担が大きい要因である。
・ 半導体業界以外にも市場の変化やトレンドの入れ替わりが激しい業界では、生産設備を自社で保有するとリスクになるのでファブレスが向いている。例えば、トレンドが毎年変わるアパレル業界、技術革新が起きやすいデジタル機器業界、商品が激しく入れ替わる清涼飲料業界など。また、工場を保有する余裕のない、資本力に劣るベンチャー企業にも有効な手法である。
ファブレスのメリット、デメリット
・ ファブレスのメリットは、次のような点。
‐ 企画・設計、研究・開発、マーケティングなど付加価値の高い分野に経営資源を集中できる。市場の変化に素早く対応でき、経営戦略のスピーディな転換も可能。 ‐ 生産量を柔軟に調節できる。 ‐ 設備費がかからず、人員も小規模に抑えられる。 ‐ 複数の工場に委託すれば、工場間での競争が生まれ、さらなるコストダウンや納期短縮が可能になる。
・ 一方、以下のようなデメリットもある。
‐ 製品の品質が、製造委託先企業のレベルに左右される。監視やコントロールが難しい。 ‐ 生産に関するノウハウが、自社には蓄積しない。 ‐ 情報漏えい、模倣されるリスクがある。
ファブレス企業の一例
・ ナイキ(スポーツ用品) 各国の提携先外部工場に製造を委託し、自社は企画、マーケティング、販売に専念。
・ 任天堂(玩具・ゲーム) WiiやニンテンドーDSなど、委託先企業が汎用性のある部品で組み立てている。ファブレス化によって浮いたコストを企画・開発に投下することで、高品質なヒット商品を生み出している。
・ ダイドードリンコ(飲料) 商品開発と、地域密着型の自販機網の拡充に経営資源を集中し、質の高い自販機オペレーションを構築。飲料の製造・物流だけでなく、自販機もリース調達している。
(参考) 水戸証券|持たないビジネス ファブレス企業 コトバンク|ファブレス Wikipedia|ファブレス Weblio辞書|ファブレス 日本の人事部|ファブレス経営 財経新聞|国内のファブレス企業とは 起業家のための成功法則|設計図と模型を売ることでも成り立つモノ作り起業の方法