そのノウハウ、みんなに伝えてる? 「暗黙知」を共有できる組織が最後には勝つ。

暗黙知とは

・ 暗黙知(tacit knowledge)とは、言葉を通して他者に伝えることのできない、自然に修得した知識や身体感覚。ハンガリー生まれの科学者マイケル・ポランニー(1891~1976)によって提唱された。ビジネスの世界では、「イノベーションを起こすために組織内で共有されるべき、個人の内面的な知」というような意味で理解されることが多い。近年、個人の蓄積した暗黙知を集団で共有することの有用性が注目されている。例えば、優秀な会社員が持つノウハウ・経験を直属の後輩に伝達させるだけではなく、部署や社内全体に修得させる、といった具合である。

・ コミュニケーションの研究者である大崎正瑠氏は、暗黙知を以下のように説明している。人間がまっすぐ歩いたり、さまざまな人間の顔を見分けたりできるのは、このような暗黙知が働いているからだという。

「暗黙知」は通常の認知の枠組みを超えており、直接他人に伝達することは不可能であり、個人が独自に習得する独特な知識である。一般的には他人と共有しているかどうかを確認することは難しい。
職人が自分の技能を弟子に伝えようとするとき、たとえば自分の技能についてのマニュアルを用意し、口頭による補足の説明を追加し、さらに必要に応じて見様見真似で伝える。(中略)これでもなおどうしても伝えることができない知識がある。これがすなわち「暗黙知」である。

(引用元:東京経済大学|暗黙知を理解する

ビジネスにおける暗黙知

・ ビジネスの分野で使われている「暗黙知」という言葉は、経営学者の野中郁次郎氏によって広まったものである。野中氏は、暗黙知およびその対義語としての「形式知」を以下のように説明している。なお大崎氏によると、野中氏の「暗黙知」は他者への伝達が可能であるため、ポラニーの「暗黙知」とは「別物」だという。

知には、暗黙知と形式知の二つの次元がある。「暗黙知」は、言語や文章で表すことが難しい主観的で身体的な知であり、「形式知」は、言葉や文章で表現できる客観的で言語的な知である。具体的には、思い、視点、熟練、ノウハウなどと呼ばれ経験的に形成されるのが暗黙知であり、コンピュータネットワークやデ ータベースなどの情報技術(IT)を活用して容易に蓄積したり、組み替えたりできる言語知が形式知である。

(太字は編集部による) (引用元:J-STAGE|イノベーションの本質

・ 「暗黙知」という言葉を「暗黙の了解」「暗黙のルール」と同じ意味で使う人もいる。しかし、この場合の「暗黙」とは、「はっきりと口には出されないが関係者間で共有されている常識」を指しており、「旅行に行ったら部署の全員におみやげを買う」「会議室では常に同じ席に座る」のように、言語化が容易である。また、すでに関係者間で共有されているという点でも、野中氏の「暗黙知」とは異なる。

暗黙知とナレッジ・マネジメント

・ 暗黙知および形式知という概念を用いた経営手法に、ナレッジ・マネジメント(knowledge management)というものがある。野口氏によると、ナレッジ・マネジメントとは「新しい知識を創り続けることによる経営」、つまり「知識創造の経営」を意味する。全ての知の根幹は「個人の主観的な暗黙知」にあり、それが「集団、組織 、そして社会の知」に膨らむことによって、「新しい知」が生まれるのだという。

・ ナレッジ・マネジメントの基礎理論として知られているのが、野口氏の提示した「SECI(セキ)モデル」だ。SECIモデルは、知識創造における以下の4つのプロセスを図式化したものである。このように、暗黙知と形式知は相互に変換される。

S:Socialization(共同化) 個人の暗黙知を組織で共有する。 E:Externalization(表出化) 共有した暗黙知を形式知へと転換させる。 C:Combination(連結化)  個別の形式知を体系的な形式知へとまとめる。 I:Internalization(内面化) 形式知が個人のなかで新たな暗黙知となる。

・ 経営学を専門とする大西幹弘教授(名城大学)によると、連結化を除くそれぞれのプロセスでは以下のようなことが行われる。

共同化: - 弟子が師匠を観察・模倣することで技能を学ぶ。 - ブレストを通してアイディアを明確化・共通認識化する。 表出化: - 共有した暗黙知を言語化し、明確なコンセプトとして表す。 内面化: - 完成したマニュアルやサクセスストーリーを通じ、個々人が他者の経験を追体験する。

・ そして連結化の段階では、次のことが行われる。

- コンセプト同士を関係づけ、モデルを構築する。 - 形式知を組織内で普及・共有させる。 - ITを利用し、組織内に分散する形式知を収集・分類する。

(参考) 東京経済大学|暗黙知を理解する 日本学術会議|イノベーションの本質 J-STAGE|イノベーションの本質 人工知能学会 AI書庫|知識管理から知識経営へ : ナレッジマネジメントの最新動向(<特集>「ナレッジマネジメントとその支援技術」) 日本ナレッジ・マネジメント学会|暗黙知とは何か(2) 東洋大学学術情報リポジトリ|知の創造プロセスとSECIモデル

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