付き添い問題とは

・ 付き添い問題とは、患者が入院する際、家族が付き添って世話をすることを病院側から要求されることに関わる問題。特に子どもが入院する際、一部の病院が24時間の付き添いを求めることで、付き添う側に肉体的・精神的・経済的な困難が生じることが問題視されている。

・ 付き添い問題を精力的に取材しているのが、ハフポストの記者・錦光山雅子氏である。錦光山氏の呼びかけにより、ハッシュタグ「#病院の付き添いを考える」を使い、Twitter上で多くの人が子どもの入院に付き添った際の過酷な経験を語っている。

子どもの入院に付き添う親の生活

・ 入院する子どもに24時間付き添うことを病院側から求められると、親はほぼ病院に住み込むことになる。しかし、病院に親が生活できる環境は整っておらず、病室内の簡易ベッドや椅子で寝起きしたり、食事はコンビニで買ってきたりといった生活を送る人が多い。Twitter上には、「子供のご飯はあっても大人がないから基本的に寝てる間にダッシュで売店か外のコンビニ」「簡易的なソファベッドに寝るか、自己責任で子供のベットに添い寝」「24時間病室に缶詰で食事風呂トイレ無しで拘束される」などの経験談が投稿されている。

・ 上記のような「付き添い生活」が長期間続くと、入院中の子どもに付き添う家族側に重大な問題が生じる。肉体的・精神的なストレスが生じるだけでなく、ほかの子どもの世話ができなくなったり、仕事を辞めざるをえなくなったりするのである。共働きの場合、夫婦いずれかが退職することで世帯収入が大きく減少し、ひとり親家庭の場合は退職によって生活基盤が破壊されてしまう。Twitter上には「疲れや感染で体調不良になる」「兄弟に寂しい想いをさせた」「子供の付き添いで2週間休むって言ったら、即効クビ」などの体験談が見られる。

・ 青森県立中央病院において、総合周産期母子医療センターの副センター長を務める網塚貴介氏は、付き添い問題に対する以下の意見を朝日新聞に投稿し、子どもの入院によって家族が窮地に立たされるという状況を指摘した。網塚氏の投稿は、2014年1月14日の朝刊に掲載された。

小児病棟に入院した我が子に母親が付き添う。ごく当たり前な光景だが、実は建前上は家族の付き添いは「不要」で、あくまで「家族の希望」として扱われていることをご存じだろうか。(中略)
働く母親にとって、子どもの入院に付き添うことは、時に失業と背中合わせとなる。実際、私が担当の早産児でも、入院に付き添ったがために退職せざるを得なかった母親が何人もいる。(中略)
問題は、小児看護の建前と現実の矛盾にある。「家族の希望」と言いながら、実のところ小児看護は主に母親の付き添いに依存してきたのだ。(中略)
看護師の増員と医療費増は必須となるが、これは避けて通ることのできない問題である。子どもの入院によって家族が窮地に立たされるような事態を許してはならない。少子化対策の一環と考え、素早い対応を求めたい。

(引用元:青森県立中央病院 総合周産期母子医療センター 新生児科・成育科|朝日新聞のオピニオン欄に投稿しました

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付き添い問題に関わる制度

・ 患者にその家族が付き添って世話をする「付添看護」は、1994年の健康保険法改正によって廃止された。病院側の看護体制を充実させることで、患者側の負担を減らすことが目的である。

・ しかし実態として、病院側による付き添いの要求は行われている。網塚氏が指摘しているように「家族の希望」という建前をとっているのである。Twitter上では、「付き添い申請書をポンと渡され『患児に精神安定のため』って書いて出してくださいねって言われた」「『家族付添許可願』の理由欄に『病院から家族の付添いを要請されたため』と事実を記入したら、この理由では許可されないので書き直してと。『情緒不安定のため』という虚偽の理由に直して提出」などの事例が報告されている。

・ あくまで付き添いは家族側の要望だとせざるをえない背景には、厚生労働省によって定められた以下の規定がある。

看護は、当該保険医療機関の看護要員のみによって行われるものであり、当該保険医療機関において患者の負担による付添看護が行われてはならない。ただし、患者の病状により、又は治療に対する理解が困難な小児患者又は知的障害を有する患者等の場合は、医師の許可を得て家族等患者の負担によらない者が付き添うことは差し支えない。なお、患者の負担によらない家族等による付添いであっても、それらが当該保険医療機関の看護要員による看護を代替し、又は当該保険医療機関の看護要員の看護力を補充するようなことがあってはならない。

(引用元:厚生労働省|基本診療料の施設基準等及びその届出に関する手続きの取扱いについて

・ 上記のように、付添看護は禁止されているものの、医師の許可を得て患者の家族が付き添うことは許可されている。そのため、看護の人手が足りない病院側は、「家族が希望した」という建前で付き添いを要求するのである。しかし、「当該保険医療機関の看護要員の看護力を補充するようなことがあってはならない」と記載されているように、患者の家族に付き添いを強要し、看護をさせることは明確に禁じられている。網塚氏や錦光山氏が問題提起し、多くの親が苦境を訴えているように、付き添い問題は解決されるべき重要な課題だといえる。

(参考)
ハフポスト|大阪・住吉市民病院が「付き添っても付き添わなくてもいい」を実現できた理由
ハフポスト|病児の付き添いで病院に24時間缶詰め それって人間的ですか
朝日新聞デジタル|乳幼児の入院付き添い、なぜ24時間?(記者の一言)
青森県立中央病院 総合周産期母子医療センター 新生児科・成育科|朝日新聞のオピニオン欄に投稿しました
Twitter|#病院の付き添いを考える
コトバンク|付添看護
コトバンク|健康保険法の改正