
「職場での経験を積むにつれ、同僚や後輩から人間関係の悩みを打ち明けられる機会が増えてきた」
「どこまで踏み込んでいいのか、どんな言葉をかけるのが正解なのか迷う」
相談を受けるのは、信頼されている証。しかし対応を誤ると、自分が消耗したり、トラブルに巻き込まれたりすることもあります。本記事では、相手との関係性に応じて使い分ける相談対応のコツを解説します。
相談を受けることで起こりうるリスクを知っておく
職場での相談対応は良好な人間関係の潤滑油になる一方で、対応を誤ると自分自身が消耗したり、思わぬトラブルに発展したりするリスクをはらんでいます。まずは代表的なリスクを知っておきましょう。
リスク1 「共感疲労」による消耗
相手の感情を自分のものとして背負い込んでしまった経験はありませんか? 感情移入のしすぎで疲れてしまう現象を「共感疲労」と言います。*1
相談のあとに次のような変化が現れたら要注意です。
共感疲労のサイン
- ぐったりと疲れてしまう
- 些細なことでイライラする
- 落ち込みやすくなる
- やる気がなくなる
- 食欲不振や頭痛といった身体的不調を感じる
リスク2 自分も巻き込まれる
相談相手に共感しようとするあまり、「私もそう思います」「それはひどいですね」と同意をしてしまうと、のちに「〇〇さんも賛成してくれた」と第三者に伝えられてしまう可能性があります。
リスク3 依存を生む
「一度相談に乗ってから、業務時間外の長電話や、チャットツールでの頻繁な愚痴が続く」というケースも少なくありません。
「ここまでは対応するけど、ここからは関与しない」という基準を明確にすることが、依存を生まない対策になるでしょう。

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アドバイスよりも聞く姿勢が大切
関係性が築けている相手からの相談ほど、すぐにでも助けたい一心でついアドバイスをしてしまいがちです。
しかし、必要なのは「答えを出さず、とことん聞く姿勢」です。相手の気持ちを知るよりも先に解決策を急いで提示してしまうと、相手は「感情を置き去りにされた」と感じて心を閉ざしてしまいます。*2
まずは最後まで聞き、「どう感じたの?」と感情に焦点を当てた問いを返しましょう。
感情的に近くなりすぎない
信頼関係のある相手ほど、感情的な距離は知らず知らず縮まりすぎるもの。そこで必要になるのが、自他境界の明確化です。
公認心理師のたかだちかこ氏は、「自他境界とは『ここまでは自分の考えや領域であり、ここからは相手の領域である』という境界線のようなもの」だと話します。*3
自他境界が曖昧だと、相手の感情を背負い込みやすくなる、無理をしてでも相手の気持ちに応えようとする、自分のアドバイスに同意してくれないと腹が立つといった状況に陥ります。*3
ただし、「距離を保つ=冷たく接する」ではありません。「話を受け止めること」と「問題を一緒に抱えること」は明確に別です。
受け止める言葉は添えながらも、「どこまで関与するか」の線はぼかさないようにしましょう。
内容の線引き
仕事の進め方の相談には乗るが、プライベートな悩みには深く踏み込まない
行動の線引き
話を聴く役割には徹するが、相手の代わりに問題を解決してあげるような行動までは肩代わりしない
意見の線引き
相手の気持ちには共感しつつも、個人的な意見や白黒つけるような判断は伝えない
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業務上のつながりしかない相手から突然相談を受けたら、適切な「心理的距離」を保つのが基本姿勢です。
「共感」と「同意」を混同しない
よくある間違いが、「共感」と「同意」の混同です。共感する姿勢は相手との信頼関係を築くのに役立ちますが、同意してしまうと予期せぬトラブルに巻き込まれるリスクがあります。
両者の違いは、主語に表れます。*4
同意 主語は「私」
「私もそう思う」と意見の一致を示す反応。自分の立場の表明になる
▼
共感 主語は「あなた」
「あなたがそう感じているのですね」と気持ちを受け止める反応。意見への賛否は含まない
「大変でしたね」という共感の言葉は惜しまず使いながら、「私もそう思う」という同意とは意識的に切り分けましょう。

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どちらの相手にも使える「4つの基本姿勢」
関係性にかかわらず、相談対応のあらゆる場面で土台になる基本姿勢を紹介します。
基本姿勢1 その場で即答しない
意見や判断を求められたとき、その場で即答することは避けましょう。「同意」と受け取られるリスクがあるからです。「少し考えさせてください」といったんもち帰れば、冷静に整理してから判断できます。
基本姿勢2 相談を受ける前に「自分の基準」をもっておく
「どこまで聞くか」「どこまで関与するか」を、相談を受ける前に決めておきましょう。
基準の例
- 仕事以外の話には深入りしない
- 個人的な感情には踏み込まない
基本姿勢3 聞いた話を第三者に伝えない
相手がどんなに親しい人であっても、相談内容を別の誰かに話すことはしない。これが相談対応の鉄則です。「あの人には話していい」という判断は主観であり、望まぬ情報拡散につながりかねないからです。「ここだけの話にする」を徹底しましょう。
基本姿勢4 自分の手に負えないときは「引き際」を決めておく
ハラスメントやメンタルヘルスに関わる重いテーマを、自分ひとりで解決しようとするのは危険です。「ここから先は専門家に任せる」というエスカレーションの基準をもっておきましょう。
引き際の基準例
- 「ハラスメントの疑いがある場合は、本人の同意を得て人事に報告する」という基準
- 「自分の専門外(業務外のディープな悩みなど)だと感じたら、『〇〇さんのほうが適切なアドバイスができるかも』と他部署や専門家を提案する」という基準

***
「相談を受ける力」は、職場での信頼をつくる重要なスキル。ただし、何でも受け入れることとは違います。事前に対応の基準を自分のなかで明確にしておき、相手だけでなく自分のことも守れるように準備しておきましょう。
よくある質問(FAQ)
Q. 相談を受けた相手が私に依存してきた場合、どう対応すべき?
Q. 信頼関係がある相手からプライベートな悩みを打ち明けられました。どこまで関与するべき?
Q. 相談の中で相手の意見に同意できない場合、どう返答する?
Q. ハラスメントや深刻な問題が相談内容に含まれていた場合の対応は?
*1: ひだまりこころクリニック|親身になりすぎると疲れてしまう?「共感疲労」の原因と対策方法とは?
*2: リクルートマネジメントスクール|傾聴力とは?ビジネスでの実践方法とトレーニング方法
*3: うららか相談室|自他境界の作り方とは?境界線(バウンダリー)が曖昧な人の特徴
*4: 公益財団法人私立大学退職金財団|「同感」は不要。「共感」で寄り添え
澤田みのり
大学では数学を専攻。卒業後はSEとしてIT企業に勤務した。仕事のパフォーマンスアップに不可欠な身体の整え方に関心が高く、働きながらピラティスの国際資格と国際中医師の資格を取得。日々勉強を継続しており、勉強効率を上げるため、脳科学や記憶術についても積極的に学習中。