「やる気」は感情に過ぎない——「やる気」という"感情" を手懐ける2つの習慣

感情を整えて勉強に向かうビジネスパーソン

業務に必要な知識を身につけなければならないのに、机に向かう気が起きない。資格取得の勉強も、仕事後にはどうしても集中できない。

頭では「やらなければ」とわかっているのに、からだも気持ちもついてこない——。

真面目に取り組もうとする人ほど、自分を責めてしまうもの。

しかし、これは意志の弱さが原因ではありません。鍵を握るのは、あなたの「感情の状態」です。

本記事では、脳科学や心理学の知見をもとに、感情を整えて前向きに学ぶための習慣を紹介します。

感情と学習効率の深い関係

「やる気が出ない」「勉強が続かない」「ちゃんと覚えられない」――じつはこんなとき、感情が影響している可能性があります。

脳科学の研究では、ポジティブな感情が学習に多くのメリットをもたらすことがわかっています。

  1. 習慣化しやすくなる——ポジティブな感情をともなう行動は繰り返しやすい
  2. 記憶に残りやすくなる——ネガティブな感情より記憶の定着に有利

つまり、感情を整えることが、学習効率を上げる第一歩になりうるのです。

そこで今回は、感情を整えるための具体的な習慣として「3行日記」と「リフレーム」を紹介し、筆者自身の実践結果もお伝えします。

1. ポジティブな感情が学習にもたらすメリット

なぜポジティブな感情が学習に効果的なのか。脳のメカニズムから見ていきましょう。

習慣化への効果

私たちの行動の直後に嬉しいことや楽しいこと(報酬)があると、同じ行動を繰り返しやすくなります。心理学ではこれを「オペラント条件づけ」と呼びます。*1

つまり、ポジティブな感情をともなう学びは、勉強習慣の形成につながりやすいのです。

こうした学習プロセスには、「楽しい」「嬉しい」と感じると分泌される神経伝達物質ドーパミンが深く関わっています。*2

脳科学者の澤田誠氏(名古屋大学名誉教授)によると、ドーパミンは楽しい感情だけでなく “新しいもの” を見つけたときにも分泌されるため、「やり方を工夫したり、面白いと思える方法を考えたりしてみるのもいい」とのことです。*3

記憶への効果

前出の澤田氏は、ポジティブな感情のほうが記憶力向上に役立つと言います。ネガティブな感情が強いと、生存に関わる情報が優先され、記憶が断片化してしまうためです。*3

したがって「勉強が身につかない」と感じるとき、その背景には "気分が落ちたまま勉強している" という状況が隠れている可能性があります。

効率よく学ぶためには、ポジティブな感情が必要なのです。

楽しそうに学ぶビジネスパーソン

2. 感情を整えるための2つの習慣

では、どうすれば勉強に向けてポジティブな感情をつくれるのか?

特別なことは必要ありません。毎日の生活のなかで取り入れられる習慣を2つ紹介します。

習慣1:3行日記

ポジティブ心理学の提唱者、ペンシルバニア大学教授のマーティン・セリグマン氏らの研究では、「今日起こったよい出来事を3つ」とその理由を書くことで、半年間にわたって幸福度が向上したという結果が示されています。*4

書く内容は些細なことで大丈夫。

「少しだけ理解が進んだ」「苦手な上司とうまく話せた」「天気がよくて気持ちがよかった」——そんな小さな "よいこと" を見つける習慣が、感情を整えてくれます。

習慣2:リフレーム

もうひとつは、物事のとらえ方を意識的に変える「リフレーム」という技術です。

野村證券の金融教育サイト「Fin Wing」によると、リフレームとは「問題のある方向にいったん固定されたフレームを、別のより良いフレームに変更」すること。*5

たとえば、「覚えられなかった」という事実を、「まだ覚えていないだけ」「繰り返せば身につくはず」ととらえ直すかたちです。

視点を少し変えるだけで、気持ちは軽くなり、次の行動につながりやすくなります。

ポジティブな考え方は、"状況を無理によい方向に見ようとすること" ではありません。
ストレスや不安を感じた自分を否定せず、「どうしたら少し前向きに見られるだろう」と柔らかく視点を切り替えることが大切です。

フレームのなかで数値が上昇する様子を見守るビジネスパーソン

3. 実際に試してみた

ここまで紹介した方法を、筆者自身も試してみました。

業務に必要な勉強があるにもかかわらず、仕事後はどうしても机に向かえない。
ついスマホを触って一日が終わる——そんな状況が続いていたからです。

具体的には、「リフレーム」を意識した「3行日記」を実践しました。

リフレームを意識した3行日記の実践例

筆者が書いた「3行日記」(リフレームを意識)

実際に試してみたところ——

「今日はダメだった」と感じても、書き始めると意外と小さな "よいこと" が見つかり、自分を過度に責める気持ちが薄れていきました。

また、「ダラダラしてしまった」と思っても、料理や掃除など少しの家事はできていることに気づき、自分を褒めたくなる気持ちが生まれました。

リフレームの効果も、しっかり実感できたと思います。

以前は「難しい」「理解が追いつかない」と感じた瞬間に心が折れていたのですが、「時間をかければ覚えられるはず」「今日はここさえわかれば十分」と考え直すことで、勉強への抵抗感が薄れたからです。

これらは劇的な変化ではありません。しかし、以下の段階を経て、勉強に向き合う心の負担が減ったのは確かです。

  1. 小さな達成感を積み重ねられるようになった
  2. 机に向かう気持ちが自然と軽くなった
  3. 勉強が「やらされているもの」から変化し始めた

感情を整えることが、学習の継続にこれほど影響するとは知りませんでした。いまは、「やる気は自然に湧いてくるものではなく、自分でつくり出し、育てていくものなのだ」と実感しています。

***
勉強に乗り気になれないのは、感情の準備が整っていないだけ。

自分の弱さではありません。

まずは気持ちを整え、前向きな感情を育てることから始めてみてください。

それが「やらされ勉強」を抜け出し、自分の成長につながる学びへと変えていく第一歩になります。

よくある質問(FAQ)

Q.勉強のやる気が出ないのは意志が弱いから?

A.いいえ、意志の弱さとは限りません。脳科学的には、ポジティブな感情が整っていないと学習へのモチベーションが生まれにくいことがわかっています。感情の状態を整えることが、勉強に向かう第一歩です。

Q.3行日記はいつ書くのが効果的?

A.就寝前がおすすめです。ポジティブな出来事を振り返ることで、翌日への前向きな気持ちが生まれやすくなります。

Q.リフレームとポジティブ思考の違いは?

A.ポジティブ思考は「前向きに考える」ことですが、リフレームは「物事のとらえ方を変える」技術です。ネガティブな感情を否定せず、視点を変えることで自然と前向きになれる点が違いです。

Q.勉強の成果がなかなか出ないときは?

A.「まだ身についていないだけ」「時間をかければ覚えられる」とリフレームしてみましょう。小さな進歩に目を向けることで達成感が生まれ、学習の継続につながります。

【ライタープロフィール】
STUDY HACKER 編集部

「STUDY HACKER」は、これからの学びを考える、勉強法のハッキングメディアです。「STUDY SMART」をコンセプトに、2014年のサイトオープン以後、効率的な勉強法 / 記憶に残るノート術 / 脳科学に基づく学習テクニック / 身になる読書術 / 文章術 / 思考法など、勉強・仕事に必要な知識やスキルをより合理的に身につけるためのヒントを、多数紹介しています。