朝型が推奨される現代のビジネス社会。SNSには早起きして朝活を楽しむ人々の投稿が溢れ、「やっぱり私の生活リズムって間違っているのかな」と不安になる方も多いかもしれません。
でも、じつは夜型の私たちにも、朝型とは違った形での時間の使い方があるんです。
この記事では、夜型社会人だからこそできる、帰宅後の時間の効果的な活用法をご紹介します。夜の時間を味方につけて、仕事のパフォーマンスを上げる具体的な方法をお伝えしましょう。
いつも夜遅くまで起きてしまう習慣を、むしろ活かしていく――そんな視点の転換で、あなたの夜型生活は大きく変わるはずです。
「読書」でEQを高める
「部下の表情から本当の気持ちが読み取れない……」「クライアントとの商談で、相手の反応に戸惑ってしまう」「チームメンバーとの関係がぎくしゃくして、コミュニケーションに自信が持てない」
——こんなふうにお悩みの方は、帰宅後の時間に「読書」を通して「EQ(Emotional Intelligence Quotient)」を高めるのがおすすめです。EQは、日本語では「心の知能指数」と訳されることが多く、「自分や他者の感情をうまく管理し、活用する能力」を意味します。*1
対人関係に重要なスキルであるEQは、ビジネスの成功にも必須の能力です。国内トップクラスのEQカウンセラーである大芝義信氏は、EQについて「ハイパフォーマーに備わる能力」だと述べており*1、「ビジネスパーソンの成果にも大きな影響」を与えると伝えています。*2 多くの仕事は他者とのコミュニケーションが必須。また、一人で完結する仕事であっても自分の感情と向き合い、コントロールするスキルは欠かせないからです。
そんなEQを育てるのに有効なのが、「読書」。米ニュースクール大学は、興味深い研究結果を発表しています。被験者らに文芸小説、大衆小説、ノンフィクションのいずれかを読んでもらった結果、文芸小説を読んだグループのみ他者の内面を洞察する力(Mind-Reading Skills)が向上したのだそうです。*3
登場人物の内面描写を読むことは、いわば感情のシミュレーション。作中で描かれるさまざまな感情や心の動きを通じて、他者の気持ちを理解するための能力を育てることができるのではないでしょうか。
ちなみに、国際的なビジネススピーカーであるマイケル・カー氏によれば、ビジネスリーダーの多くは寝る前の時間を読書のために確保し、それをカレンダーの「絶対に外せない項目」としてスケジュールしているそう。バラク・オバマ元大統領やビル・ゲイツ氏も、就寝前に少なくとも30分間読書をしているのもよく知られています。*4
「朝は通勤ラッシュで読書どころではない」という方にとって、夜型の生活リズムはむしろチャンスかもしれません。感情豊かな文学作品との出会いは、きっとあなたのコミュニケーション力に新たな可能性をもたらすはずです。
仕事上の人間関係を円滑にし、自分の感情を管理して仕事のパフォーマンスを高めるためにも、まずは今夜、スマートフォンの代わりに小説を手に取ってみませんか?
「翌日のタスク」を書き出して睡眠の質を上げる
「明日の仕事が不安で眠れない……」「会議の準備と、報告資料作成と、あとなにをするんだっけ……」
こんなふうに、ベッドに入ってから悶々と翌日の仕事について考えてしまう人は、一度紙にすべて吐き出してみてはいかがでしょうか。
学術誌『Journal of Experimental Psychology』に掲載された研究では、寝る前に翌日のTo-Doリストを書くと、入眠を早める効果があることが示されています。特に、リストを具体的に書くほどその効果が高まる傾向があったのだそう。寝る前に5分間、翌日のタスクを具体的に書き出すことが、心の整理に役立ち、入眠を促進するのです。*5
実際に筆者も翌日のTo-Doリストを書き出してみました。
1月28日(火)の優先タスク
□ 10:00 週次MTGの資料作成(60分)
□ 13:00 A社プレゼン本番(90分)
□ 17:00まで レポート作成
その他
□ 新人研修の準備資料確認
□ 名刺の追加発注
□ 経費精算
書き始めてみて気づいたのは、リストを書く時間が想定より長くなりがちだということ。「すべて書き出そう」と考えすぎると、かえって頭が冴えてしまい、就寝時間が遅くなってしまいました。
そこで、「優先タスク3つまで」というルールを設定。時間の目安も併記することで、翌日のスケジュール調整もスムーズになりました。ちなみに、アメリカン・エキスプレスの元CEOであるケネス・シェノルト氏も、翌日に達成したい3つのことを毎晩書き出しているそうですよ。*4 「その他」は思いつくままサクッと書き出すようにしたところ、ちょうどいい時間で終えられるようになりました。
夜の静かな時間だからこそ、一日の喧騒から離れて、冷静に優先順位をつけられるもの。「朝は頭がスッキリしなくて余裕がない」という夜型の方こそ、夜のこの習慣で大きな差をつけることができます。
まずは今夜、ベッドに入る前の5分間を使って、「翌日の優先タスク」を決めてみませんか? 夜型の私たちにも、朝型とは違った形での時間の活かし方があるのです。
「3行日記」を書いてポジティブな気持ちで1日を終える
「今日のプレゼン、あの場面でもっと違う説明ができたはずなのに……」「部長に指摘された企画書の修正点、なんで気づけなかったんだろう」と、布団に入ってからも一日の出来事を後悔して、寝つきが悪くなってしまう——。
このように、夜寝る前に「反省会」をしてしまう人に試していただきたいのが、順天堂大学医学部教授の小林弘幸氏のすすめる「3行日記」です。
やり方は、1日の終わりに、以下をそれぞれ1行ずつ、計3行書くだけ。*6
(1)今日、一番イヤだったこと
(2)今日、一番うれしかったこと
(3)明日の目標
最初に「何にストレスを感じたのか」を知り、「1日のできごとのなかからよいことを探す」ことで気持ちを切り替え、最後に「明日の目標」を書いて、「すっきりした状態で1日を終える」……この一連の流れによって自律神経が整い、ストレスが軽減されるのだとか。*6
マイケル・カー氏によれば、多くの成功者が就寝前の時間を使って、その日に起きたことを振り返ったり、感謝していることを書き留めたりするそう。*4 そうすることで「ああすればよかった」「うまくいかなかった」とネガティブなことをぐるぐると考えるのではなく、ポジティブな気持ちで1日を終えられるためです。寝る前に「反省会」をしてしまう人にぴったりの習慣と言えるのではないでしょうか。
寝る前にネガティブなことを考えてしまいがちな筆者も、実際に試してみました。
- 今日、一番イヤだったこと
MTGで資料の数字に誤りがあると指摘され、自己嫌悪。 - 今日、一番うれしかったこと
同僚と食べたランチが美味しかった。 - 明日の目標
朝一で修正版の資料を共有する
始めて気づいたのは、「イヤだったこと」を1行に収めるのは意外と難しいということ。最初は言い訳や感情を長々と書いてしまい、かえってネガティブな気持ちが強まってしまいました。
そこで、「事実だけを書く」というルールを設定。すると、感情的になりすぎず、客観的に一日を振り返れるようになりました。また、「うれしかったこと」を探すうちに、日中は気づかなかった小さな感謝も見つけられるようになってきました。
とはいえ、毎日続けるのはやはり大変です。そこで、お気に入りのノートとペンを枕元に用意し、寝る前のルーティンとして楽しめる工夫をしてみました。文字を丁寧に書くことで、自然と心も落ち着いてくるのが不思議です。「今日も一日、ここで締めくくれる」という小さな達成感も、続ける原動力になっています。
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夜型だからこそできる時間の使い方があります。読書でEQを育て、ToDoリストで明日への不安を解消し、3行日記で心を整理する——。あなたはどの習慣を取り入れますか?
*1 STUDY HACKER|仕事のパフォーマンスが高い人に備わる「EQ」8つの能力。まず伸ばしたいのは “この力”
*2 STUDY HACKER|成長したいビジネスパーソンが「EQ」を高めるべき理由。○○を言語化できる人は成功しやすい
*3 newschool.edu|Reading Literary Fiction Improves “Mind-Reading” Skills
finds a study from the New School for social research
*4 BUSINESS INSIDER|15 things successful people do right before bed
*5 APA PsycNet|The effects of bedtime writing on difficulty falling asleep: A polysomnographic study comparing to-do lists and completed activity lists.
*6 東洋経済オンライン|イライラ・怒りが減る「1日3行日記」のすごい効果
STUDY HACKER 編集部
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