なぜビル・ゲイツは「嫌いな本」を読み、イーロン・マスクは「なぜ」を連発するのか? 知識を活用する意外な技術

脳に様々な情報がある様子を表現した画像

毎月何冊もビジネス書を読み、セミナーにも積極的に参加している。

YouTubeや音声メディアからの情報収集も欠かさない——。

これだけ学習に取り組んでいるのに、「手応えがない」「評価につながらない」と感じていませんか?

じつは、知識量と思考の深さは必ずしも比例しません。

どれだけ多くを学んでも、それを「活用する技術」がなければ、単なる情報の蓄積で終わってしまいます。

この記事では、ビル・ゲイツやイーロン・マスクの具体的な学習エピソードから、知識を実際に活用するための3つの科学的手法をご紹介します。

手法1:ビル・ゲイツは「嫌いな本」に時間をかける

年間約50冊の本を読むビル・ゲイツ

彼には一般的な読書術とは真逆の習慣があります。

それは「嫌いな本ほど、より多くの時間をかけて余白にメモを書く。嫌いな本に、好きな本よりも時間を費やすことがある」ということです。

さらに驚くべきことに、ゲイツは「好きではない本でも、読むのを途中で止めたりできない」と述べています。*1を筆者が訳してまとめた

なぜ世界有数の多忙な人物が、わざわざ「嫌いな本」に貴重な時間を割くのでしょうか?

「異なる視点」が思考を深める

それは、「異なる視点」が思考を深めるからです。

好きな本であれば違和感なくすんなり受け入れられますが、そこまで思考をめぐらせなくても読めてしまうため、浅い理解となる可能性があります。

一方で、嫌いな本であれば違和感と格闘するプロセスが思考をめぐらせ、それが深い理解とつながるのです。

また、思考をめぐらせずに仕入れた情報は「知っているだけ」の状態で、記憶から薄れやすいというデメリットもあります。

「知っているけど、具体的にはどのような内容だったか思い出せない」という、学んだはずなのに、聞いたことがあるだけのレベルに落ちてしまった記憶は誰にでもあるでしょう。

株式会社カルペ・ディエム代表の西岡壱誠氏は、学んだ内容を「『白紙に再現』できなければ知らないのと同じ」だと指摘しています。*2

知識は自分なりに消化・再構成できて初めて価値をもち、そのためには思考を深めるプロセスが必要なのです。

 

📌 明日から使える「嫌いな本ルール」

  1. 月1冊ルール:毎月1冊は、自分と意見が合わない著者の本を選ぶ
  2. 違和感メモ術:「なぜこの意見に違和感があるのか」を具体的に書き出す
  3. 前提発見法:「その違和感は自分の思い込みではないか」と自問し、別の視点を書き出す *3よりまとめた
  4. 反論構築:著者の意見に対する自分なりの反論を組み立てる

読書するビジネスパーソン

手法2:イーロン・マスクの「5歳児思考」が革命を起こす

SpaceXやTeslaで次々と革命を起こすイーロン・マスク。彼の問題解決アプローチは、じつは「5歳児の思考」にヒントがあります。

マスクは「5歳児のように、問題の核心に迫るまで「なぜ」と問い続ける」という手法を実践しています。*4

既存の知識や常識を一旦リセットし、根本から問い直すのです。

この「第一原理思考」と呼ばれる手法こそが、宇宙事業や電気自動車といった「不可能」とされた分野での成功を支えています。

考えるビジネスパーソン

大人は「当たり前」を疑わない

一方で、多くの大人は知識が増えるほど「当たり前」を疑わなくなります。

「ロケットは高い」「電気自動車は普及しない」——こうした「常識」を疑わずに思考停止してしまうのです。

 

📌 実践的「5歳児思考」メソッド

  1. 「なぜ?」5回ルール:1つの事象に対して「なぜ?」を最低5回繰り返す
  2. 常識リセット法:「もし今日初めてこの業界を知ったら?」と考える
  3. 異分野連結術:全く違う分野との共通点を探してみる
  4. 時系列質問法:「なぜこの方法が生まれたのか?」歴史から問い直す

たとえば「会議が長い」という問題も、

  • なぜ会議が長いのか?→議論が脱線するから
  • なぜ脱線するのか?→目的が不明確だから
  • なぜ目的が不明確なのか?→事前準備が不足しているから

このように根本にある原因までを掘り下げることで、表面的な対処療法ではない根本的な解決策が見えてきます。

付箋に「WHY?」と書かれた画像

手法3:「受け売り症候群」があなたの評価を下げる

知識を「自分の言葉で語れるかどうか」は、思考の深さを測るひとつの指標です。

「参考になりました」「勉強になりました」——セミナー後の感想がこれだけで終わってしまった経験はありませんか?

これは「受け売り症候群」と呼べる現象で、学んだ内容を自分の言葉で再構成できていない証拠です。

東京大学理学部を卒業し、『宇宙一わかりやすい 高校化学』シリーズの著者である船登惟希氏は、学習効果を高めるためには「『これはどういう意味なのか』『この知識は自分の知っているあの出来事とどうつながるか』と考えながら、自分の言葉で書き換えてみることが大切」だと語ります。*5

「理解」と「暗記」の決定的違い

知識をそのまま受け取るだけでは、それは「暗記」に過ぎません。

本当の「理解」とは、その知識を自分なりに解釈し、他の知識と関連づけ、自分の言葉で説明できる状態のことです。

試験前の一夜漬けで覚えた内容は、試験が終わったそばから記憶から消えてしまった経験はありませんか?
これはまさに、理解に至るまでのプロセスを省いてしまったのが理由のひとつと言えるでしょう。

例えば著作権について学ぶとき

  • 暗記レベル:「著作権は創作と同時に発生する」
  • 理解レベル:「つまり、このメモも書いた瞬間に私の著作物ということ。SNSの投稿も同じで、だからこそ無断転載が問題になるのか」

このように具体例と結びつけて「自分ごと」として理解することで、初めて応用の利く知識になるのです。

 

📌 即効性のある「言語化技術」

  1. 3秒要約法:学んだことの核心を3秒で説明する練習
  2. 比喩変換術:抽象的な概念を身近な例に置き換える
  3. 体験連結法:学んだ内容を自分の体験と結びつける
  4. 教える想定法:「後輩に説明するなら?」と考えて整理する

例えば「マーケティングファネル」を学んだら、

  • 3秒要約:「見込み客を段階的に絞り込む仕組み」
  • 比喩変換:「漏斗で砂を濾すように、興味のある人だけを残していく」
  • 体験連結:「確かに私もSNS広告→サイト訪問→メルマガ登録→購入の流れだった」

このプロセスを経ることで、知識が「使える状態」に変わります。

デスクでノートに書き込もうとしている人の手元

***
今回ご紹介した3つの手法に共通するのは、「知識を受動的に受け取るのではなく、能動的に加工する」という姿勢です。

  1. 嫌いな本ルール:反対意見との格闘で思考を深める
  2. 5歳児思考メソッド:「なぜ?」の連続で本質を見抜く
  3. 言語化技術:自分の言葉で再構成して応用力を高める           

ビル・ゲイツやイーロン・マスクが実践するこれらの手法は、決して特別なものではありません。明日からでも始められる具体的な技術です。

まずは今月読む「嫌いな本」を1冊選ぶところから始めてみてください。

その違和感と格闘するプロセスが、あなたの思考を確実に深めてくれるはずです。

※引用の太字は編集部が施した

【ライタープロフィール】
澤田みのり

大学では数学を専攻。卒業後はSEとしてIT企業に勤務した。仕事のパフォーマンスアップに不可欠な身体の整え方に関心が高く、働きながらピラティスの国際資格と国際中医師の資格を取得。日々勉強を継続しており、勉強効率を上げるため、脳科学や記憶術についても積極的に学習中。

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