「問いかけ」の正解はひとつではない。チームを動かす4つのコミュニケーションスタンス

安斎勇樹が語る問いかけのスタンス——チームの思考を引き出す4つのコミュニケーションタイプ

コミュニケーションの重要性はこれまでも繰り返し語られてきましたが、その質が成果を左右する場面は、いっそう増えています。同じようなやり取りをしているはずなのに、相手の思考が深まる場合もあれば、逆に止まってしまう場合もあります。その結果を左右するのは「問いかけ」だと指摘するのが、株式会社MIMIGURI代表取締役Co-CEOの安斎勇樹さん。問いかけを機能させる鍵を握るコミュニケーションの「スタンス」とは、どのようなものでしょうか。

構成/岩川悟 取材・文/清家茂樹 写真/玉井美世子

【プロフィール】
安斎勇樹(あんざい・ゆうき)
1985年5月27日生まれ、東京都出身。株式会社MIMIGURI代表取締役Co-CEO。東京大学大学院情報学環客員研究員。東京大学工学部卒業、東京大学大学院学際情報学府博士課程修了。博士(学際情報学)。人の創造性を活かした新しい組織・キャリア論について探究している。主な著書に『静かな時間の使い方』『冒険する組織のつくりかた』『問いのデザイン』『新 問いかけの作法』などがある。Voicy『安斎勇樹の冒険のヒント』放送中。

相手の意見を引き出す問いかけの「定石」

不確実性が高まり、あらかじめ用意された正解がなくなったといわれるいま、チームの成果は、個々人の思考や主体性に大きく左右されます。そうした状況において、指示によって人を動かすのではなく、「問いかけ」によって思考を引き出すコミュニケーションの重要性が高まっていると私は見ています(インタビュー【第1回】参照)。

問いかけというと感覚的なものと思われがちですが、実際には相手の意見を引き出すための基本的な定石といえるものがいくつかあります。私はそれを体系的に整理しているのですが、なかでも特に重要だと考えているのが、「相手の個性を引き出し、こだわりを尊重すること」と、「適度に制約をかけ、考えるきっかけをつくること」です。

まずひとつめの「個性を引き出す」という点についてですが、これは一見当たり前のようで、実際にはあまり実践されていません。たとえば上司が部下に仕事を任せたとき、事前に伝えていた要件が満たされていないと、「話、聞いてた?」と問い詰めてしまうことがあります。この問いかけは、相手の思考を引き出すどころか、謝る以外の選択肢を奪ってしまうものです。

そうではなく、「このなかで自分が一番こだわったところはどこかな?」と問いかければ、相手の内側にある意図や工夫に光をあてることができます。すると、「じつはここをやりたくて、その結果としてうまく要件を満たせませんでした」といった背景が見えてきますから、「だったら、こうしたらどう?」とアドバイスすることもできるはずです。このように、相手のこだわりに注目する問いは、思考を引き出すだけでなく、その後の建設的な対話にもつながるのです。

もうひとつの「制約をかける」という定石も重要です。一般的には、自由に答えられるオープンクエスチョンのほうがよいとされがちですが、実際にはそうとも限りません。むしろ、考えがまとまっていない状態で「どう思う?」と聞かれると、答えられずに思考が止まってしまうことが多いのです。

たとえば、「なにかこの商品の改善案はありますか?」と聞かれてなにも出てこない場面でも、「ユーザー目線で100点満点なら何点?」と問いを変えると、格段に答えやすくなります。そして、その理由を尋ねることで、自然なかたちで意見が引き出されていくでしょう。このように、適度な制約を設けることで、思考の入り口をつくることができるのです。

相手の個性を引き出し制約で思考の入り口をつくる——問いかけの定石2つ

定石は「芸風」に合わせて活かす

ただし、こうした定石も、そのまま型としてあてはめればいいというものではありません。問いかけはコミュニケーションの一部である以上、人それぞれのスタンス、いわば「芸風」によって機能の仕方が変わるからです。

私はコミュニケーションのスタンスを、「自分から働きかけるか、相手を受け止めるか」「論理を重視するか、感情を重視するか」というふたつの軸で整理しています。そして、この掛け合わせによって、問いかけのスタンスは大きく4つに分かれます。

問いかけの4スタンス——触発・提案・共感・整理タイプを2軸で分類した図解

まず、自分から働きかけながら感情に訴える「触発タイプ」は、問いかけを通じて場の空気を前向きに変えるような人です。たとえば「こういうことやってみない?」といった呼びかけによって、相手の内発的な動機を引き出していくスタンスです。論理で納得させるというよりも、「なんだかおもしろそうだ」「やってみたい」と思わせることで、人を動かしていきます。

一方、自分から働きかけながら論理で動かす「提案タイプ」は、根拠や比較を示しながら問いかけるのが特徴です。たとえば、「A案とB案を比べたとき、どちらのほうが成功確率は高いと思いますか?」といったかたちで、相手が判断しやすい枠組みを提示します。あるいは「メリットとデメリットを整理すると、こちらのほうが合理的じゃないかな?」などと問いかけることで、納得感のある意思決定を促していきます。

より効果を発揮する「芸風」の使いわけ

相手の話を丁寧に受け止めながら感情を重視する「共感タイプ」は、「そうだよね」「そのときどう思ったの?」といった寄り添う姿勢を通じ、相手が安心して本音を語れる場をつくります。問いかけによって相手の内面に光をあて、言葉になっていない感情や思考を引き出していくスタンスです。

また、相手を受け止めながら論理的に整理する「整理タイプ」は、「いまの話を整理すると3つのポイントに分かれそうですね」といったかたちで、場に出ている意見を構造化していくのを得意としています。自分の意見を前に出すというよりも、問いやいい換えを通じて周囲の思考を整え、議論を前に進めることができます。

4つのスタンスそれぞれに特徴があり、どれが正しいというものではありません。ただし、ひとつのスタンスに偏り過ぎると、コミュニケーションにゆがみが生じかねない点には注意が必要です。

たとえば、自分から働きかけるスタンスに寄り過ぎると、メンバーにとってはトップダウン的に感じられることもあるでしょう。論理的に正しいことを言っていたとしても、「結局この人の意見に従うしかない」と受け取られてしまう可能性があるわけです。一方、相手を受け止めるスタンスに寄り過ぎると、「話は聞いてくれるが、どうしたいのか方向性が見えない」といった印象を与えてしまうこともあります。

だからこそ重要になるのが、スタンスの使い分けです。たとえば1on1ミーティングなどでは、まず共感的に話を受け止め、そのうえで論点を整理し、必要に応じて提案を行い、最後に触発するような問いかけで前向きな行動を促す。このようにスタンスを行き来することで、問いかけの効果は大きく高まっていくはずです。もちろん、最初からすべてを使いこなす必要はありません。まずは自分に合っているスタンスを起点にしながら、少しずつ他のスタンスも取り入れていきましょう。

問いかけとは単なる質問の技術ではなく、場をどう動かすかというコミュニケーションの設計そのものです。そしてその設計は、個人の特性と切り離して考えることはできません。自分の芸風を理解し、それを状況に応じて使い分けていくことが、チームの力を引き出すことにつながるのです。

触発・提案・共感・整理——4つの問いかけスタンスを状況に応じて使い分けチームの力を引き出す

安斎勇樹さん ほかのインタビュー記事はこちら】

新 問いかけの作法

新 問いかけの作法

  • 作者:安斎勇樹
  • ディスカヴァー・トゥエンティワン
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【ライタープロフィール】
清家茂樹(せいけ・しげき)

1975年生まれ、愛媛県出身。出版社勤務を経て2012年に独立。ジャンルを問わずさまざまな雑誌・書籍の編集に携わる。