同じ質問でも結果が変わる。相手の思考を引き出す「問いかけ」3ステップ

安斎勇樹が解説する問いかけの3ステップ——見立てる・組み立てる・投げかけるで思考を引き出す

コミュニケーションの重要な要素のひとつである「問いかけ」は、どんなことを聞くかによって結果が決まると思われがちです。しかし実際には、同じ内容であってもその「届け方」によって相手の思考の動きは大きく変わります。株式会社MIMIGURI代表取締役Co-CEOの安斎勇樹さんの考えをもとに、問いかけを機能させるための具体的なプロセスと実践のポイントをひもときます。

構成/岩川悟 取材・文/清家茂樹 写真/石塚雅人

【プロフィール】
安斎勇樹(あんざい・ゆうき)
1985年5月27日生まれ、東京都出身。株式会社MIMIGURI代表取締役Co-CEO。東京大学大学院情報学環客員研究員。東京大学工学部卒業、東京大学大学院学際情報学府博士課程修了。博士(学際情報学)。人の創造性を活かした新しい組織・キャリア論について探究している。主な著書に『静かな時間の使い方』『冒険する組織のつくりかた』『問いのデザイン』『新 問いかけの作法』などがある。Voicy『安斎勇樹の冒険のヒント』放送中。

問いかけは「3つのステップ」でできている

現在のビジネスシーンでは、「かつてと比べて課題が複雑化している」とよくいわれます。そのように正解があらかじめ用意されていない状況では、どれだけ優秀な人であっても、なにをどう進めるかをひとりで決めることは難しくなっているのです。よって、チームのなかで互いの思考を引き出し、対話を通じて方向性を見出していく必要があります。その起点となるのが、相手の考えを動かす「問いかけ」です(インタビュー【第1回】参照)。

問いかけは、その場で思いついた質問を投げる行為のように思えるかもしれませんが、実際にはいくつかのプロセスから成り立っています。私はこれを3つのステップでとらえています。

【問いかけの3ステップ】
見立てる
組み立てる
投げかける

まずは、「①見立てる」というプロセスです。いまチームがどのような状態にあるのか、メンバーはなにを感じているのか、どこで思考が止まっているのか。そうした状況を観察し、読み取ることが出発点になります。たとえば、議論が停滞しているのか、それとも単に言語化に時間がかかっているだけなのかといった見極めができなければ、そもそも問いをつくることができません。

そのうえで、「②組み立てる」というステップに移ります。見立てた状況を踏まえて、どのような問いを投げるべきかを設計します。ここでは、相手が考えやすいかたちになっているか、思考のハードルが高過ぎないかといった点を調整することがポイントです。

問いの表現と前置きを工夫する——「投げかける」ステップで相手の反応を大きく変える方法

伝え方次第で相手の反応は大きく変わる

そして、特に重要なのが、最後の「③投げかける」です。これは単に質問を口にすることだけではなく、どのような前提でどのような言葉で伝えるかといったことも含まれます。

たとえば、「あとでひとりひとりの意見を聞きたいのですが」と前置きすれば、相手は「これから意見を求められる」という前提で話を聞いてくれますから、最終的な質問に対して答えやすくなるでしょう。

ここで重要になるのが、問いの表現そのものを工夫する視点です。同じ内容であっても、言い方を少し変えるだけで、相手の反応は大きく変わるからです。

「いいアイデアはありますか?」と聞かれた場合、特に相手が完璧主義者のような人であれば「これは『いいアイデア』とはいえない」などと考え、答えが返ってこないこともあります。しかし、「検討の余地がありそうなボツネタはありませんか?」という表現にすると、「完璧ではないけれど気になっている案」を出しやすくなるはずです。

あるいは、論理的に答えさせるだけでなく、感情やイメージに働きかけることも有効な手段です。「3年後のキャリア目標は?」ではなく、「3年後、どのような景色を見ていたいですか?」と問いかける。あるいは、「この商品の改善点は?」ではなく、「この商品を使ったユーザーから、どんなセリフが聞こえてきそうですか?」と聞く。

こうした問いは、相手の想像力を刺激し、より具体的で豊かな思考を引き出します。このように、問いは届け方まで含めて成立するものなのです。

沈黙を問いの改善機会に変える——チーム全体で問いかけの質を磨く実践アプローチ

「沈黙」は問いを改善するためのきっかけ

問いを投げかけたあとで意識してほしいのは、「沈黙」の受け止め方です。場が沈黙してしまうと、多くの人は「問いかけがうまくいかなかった」と感じます。しかし、沈黙は必ずしも失敗を意味するものではありません。

ひとつは、単純に考える時間が必要なケースです。特にチームミーティングなど複数の人が参加している場合、「誰かが答えるだろう」という空気が生まれやすく、思考が言葉になるまでに時間がかかることは珍しくありません。その場合、「少し考える時間を取りましょう」とあらかじめ伝えるだけで、場の安心感は大きく変わります。

もうひとつは、問いそのものが機能していない可能性です。問いが抽象的過ぎる、あるいはハードルが高過ぎる場合、相手は思考の入り口を見つけられません。このとき重要なのは、「なぜ答えが出ないのか?」を自ら問い直すことです。

これは私の必殺技なのですが、「少し考えにくかったでしょうか。どこが難しかったですか?」と、ズバリ聞いてしまうのです。そうすることで、自分の問いの問題点が見えてきます。問いを投げかける側としては、つい「自分が問いをデザインしなければならない」と考えがちですが、考えやすく答えやすい問いをみんなにリデザインしてもらえばいいのです。

また、問いかけられた側の人には、問いかけに対するフィードバックを重視することも意識してほしいポイントです。たとえば上司からの問いかけに対して、「その問いだと答えづらい」と伝えることは難しくとも、「いまの聞き方はすごく考えやすかったです、ありがとうございます」と伝えることはできるはずです。そうすることで、上司の問いも改善されていくでしょう。

問いかけは一方通行の技術ではなく、チーム全体で磨いていくものです。問いを投げる側だけでなく、受け取る側も関わりながらその質を高めていくことが、結果としてチーム全体の思考力を底上げしていくはずです。

問いかけはチーム全体で磨く——沈黙へのフィードバックがコミュニケーションの質を底上げする

新 問いかけの作法

新 問いかけの作法

  • 作者:安斎勇樹
  • ディスカヴァー・トゥエンティワン
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【ライタープロフィール】
清家茂樹(せいけ・しげき)

1975年生まれ、愛媛県出身。出版社勤務を経て2012年に独立。ジャンルを問わずさまざまな雑誌・書籍の編集に携わる。