「勉強したい! けど、やる気が出ない……」
このような気持ちは、おそらく誰しも抱いたことがあるでしょう。学生ならば「テストで良い点数を取りたい」「センター試験で良い成績を残したい」、社会人ならば「資格をとりたい」「英語力を上げたい」など、明確な目標があるにもかかわらず、モチベーションが上がらなくて悩んでいる方は多いのではないでしょうか。
今回筆者は、以前「勉強嫌いの私が1年で3000時間勉強して京大に合格した「ぬり絵勉強法」」にて紹介された「ぬり絵勉強法」を実践してみました。勉強が思うように捗らない……という方は、ぜひ参考にしてみてくださいね。
ぬり絵勉強法とは
「ぬり絵勉強法」を実践するには、方眼紙とカラーペンが必要です。テスト勉強をしたい学生であれば、「国語は黄色、数学はピンク、日本史は赤……」のように各科目にどの色を使うか決めましょう。ビジネスパーソンの場合も「英単語の暗記は青、リスニングは黄色」「TOEICは青、中国語検定は赤」のように、勉強したいジャンルごとにそれぞれ色を決めてください。
方眼紙は、1マスで15分を表しています。1マスめに、今日の日付を記入しましょう。日付を記入したマスからぬり絵がスタートします。たとえば、国語を30分勉強したら、国語の色で2マス塗りましょう。
次に数学を1時間勉強したら、そのすぐ横のマスを4つ、数学の色で塗りつぶします。
こうして、勉強する度にマスが色とりどりに彩られていきます。自習だけでなく、学校や習い事などで勉強した時間も含めてかまいません。
勉強すればするほど塗った面積が増え、方眼紙がカラフルになっていくので、自分がどれだけ頑張ったかが一目瞭然になります。色を塗る行為自体が勉強へのモチベーションになるのに加え、どの教科にどれくらい時間を費やしているのか把握しやすいため、教科ごとに勉強時間が偏ってしまうのを防げますね。
記録することで勉強量が把握できる
なぜ、ぬり絵勉強法によって勉強時間を増やすことが可能になるのでしょう。ポイントは、記録することで自分の勉強量が把握できるということです。
アメリカの三大健康保険システムのひとつであるカイザーパーマネンテの行なった研究が、「記録をつけることでダイエットが成功しやすくなる」ことを証明しています。カイザーパーマネンテが約1,700人を対象に実施した調査によると、とった食事の内容を記録させた被験者は、記録しなかった被験者よりも2倍の減量に成功したのだそう。
記録した被験者らは、「自分がどれくらい食べているのか把握する」ことによって、改善することができたのです。記録することで、自分自身がどれくらい目標を達成できているのか、あるいはできていないのかを、直視することになります。習慣を変えるためには、「記録」を通して現状を把握することが有効なのです。
ぬり絵を通して勉強時間を把握すると、普段自分に甘い評価をしてしまう人でも、自分が今日どれくらい達成できたのかが一目瞭然になります。もしも、ぬり絵があまり更新されていなければ「今日はあまり勉強していない」と気づき、追加で学習時間をつくる努力ができるでしょう。そして勉強時間が増えたことを記録として残せば、自分の努力が可視化され、さらなるモチベーションアップへとつながるのです。
ぬり絵をすることがモチベーションになる
ぬり絵勉強法のもうひとつのメリットは、やる気を出させてくれる点です。やる気は、脳から分泌されるドーパミンという脳内物質によってもたらされます。つまり、やる気のある状態になるためには、ドーパミンが分泌される状況を作るのが得策です。
神経内分泌学者でスタンフォード大学の教授であるロバート・サポロスキー氏によると、ドーパミンが分泌されるのは、報酬が得られたときではなく、報酬を期待したときなのだそう。
同氏はサルを対象に、餌を報酬とした実験を行ないました。サルは、ライトが点滅したときにレバーを10回引けば餌がもらえるということを教育されています。その一連の流れで、サルの脳を観察したところ、ドーパミンが分泌されたのは餌が与えられたときではなく、ライトが点滅したときだったそう。
ヒトもサルと同じように、報酬が得られたときではなく、報酬を得られることを期待したときにドーパミンが分泌され「やる気」が湧いてくるということです。試験で良い点数を取ることが報酬だとすると、そのために勉強しているときにドーパミンが分泌されそうですね。
しかし、明日試験があるならば今すぐ勉強を始められるかもしれませんが、1年後の試験のために勉強するとなると話は変わってくるでしょう。「試験は1年後だから、勉強は明日からでいいや」と、やる気がわかずに先延ばしにしてしまうかもしれません。
「勉強嫌いの私が1年で3000時間勉強して京大に合格した「ぬり絵勉強法」」にて、ライターが1年後の試験のために毎日コツコツと勉強時間を確保できたのは、マスを少しずつ塗って模様を完成させていく「ぬり絵」が報酬の役割を果たしていたためだと考えられます。
1年先の試験のために今から勉強を始める「やる気」は、なかなか湧かないかもしれません。しかし、このメソッドでは、勉強後すぐにぬり絵をできるので、マスに色を塗ることを目指して勉強している内にドーパミンが分泌され、やる気が出たのだと考えられるでしょう。
実際にやってみた
筆者も実際に、ぬり絵勉強法を実践してみました。今後取りたいと思っている資格2種に加え、筆者にとって大事なインプットと学習の時間である読書も、勉強の項目として加えました。それぞれの色を決め、さっそく実践です。
- 資格Aの勉強(蛍光ピンク)
- 資格Bの勉強(蛍光オレンジ)
- 読書:仕事の本(蛍光みどり)
- 読書:個人の興味(深みどり)
実際にやってみて、確実に勉強の時間を増やすことができたと感じました。これまで、「生活のなかで時間を決めて勉強を開始する」ことはハードルが高かったのですが、ぬり絵を始めると、机に向かうことへの敷居が下がったように思います。
今まで、いくら取りたい資格のためとはいえ、勉強のモチベーションが上がらなかったのは、数時間勉強したところで結果にどれくらい近づけたのかが明確でないためでした。しかし、ぬり絵をするという単純な目標があるだけで、今日勉強をするモチベーションが生まれますし、確実に達成感が得られます。さらに、初日よりも2日目、2日目よりも3日目……と、継続するごとにぬり絵を更新できる喜びを感じ、モチベーションが上がっていきました。
15分で1マス塗るという点もポイントです。今までは、15分程度のスキマ時間であれば、勉強に当てることはなかったのですが、不思議と「たった15分でも勉強しよう」という気持ちになりました。おそらく、マスを塗ることで、ほんの15分でも目標に向かって前進しているのが可視化されたからだと思います。
たった15分でも、それを積み重ねれば、何時間もになり、結果につながっていくという当たり前のことに気づけました。ぬり絵勉強法は、今後も続けていくつもりです。
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勉強したいけれどやる気が出ない、という悩みを抱える人は、ぜひぬり絵勉強法を実践してみてくださいね。
【ライタープロフィール】
Yuko
ライター・翻訳家として活動中。科学的に効果のある仕事術・勉強法・メンタルヘルス管理術に関する執筆が得意。脳科学や心理学に関する論文を月に30本以上読み、脳を整え集中力を高める習慣、モチベーションを保つ習慣、時間管理術などを自身の生活に取り入れている。
(参考)
JAMES CLEAR|The Ultimate Habit Tracker Guide: Why and How to Track Your Habits
Science Daily|Keeping A Food Diary Doubles Diet Weight Loss, Study Suggests
WIRED|Sapolsky on Dopamine: Not About Pleasure, But Its Anticipation
THE21オンライン|脳科学から見えてきた!やる気を高める4つの方法
STUDY HACKER|勉強嫌いの私が1年で3000時間勉強して京大に合格した「ぬり絵勉強法」