みなさんこんにちは、英語職人・時吉秀弥です。

突然ですが、日本語の「はい」と「いいえ」は、英語では何と言いますか?
そりゃもちろん “yes” と “no” ですね……。と言いたいところですが、これは半分正解であり半分誤解である、というのが今回のお話です。日本語の「はい」「いいえ」と英語の yes、no は、根本的には違う意味の言葉なのですよ

「Yes」が「いいえ」に?

もちろん両者は似ているところもあります。だから「はい」と言いたいときに yes が使えますし、「いいえ」と言いたいときに no が使えます。

だけど、両者は「根本的には違う」意味なので、そのズレが表面化する場合があるのです。次の会話を見てみましょう。

A:You like him, don’t you. 「あなた、彼のこと気に入ってるでしょ。」
B:No, I don’t. 「いいえ、そんなことないわ。」
A:Yes, you definitely do.いいえ、絶対そうよ。」

最後のセリフは英語では yes なのに、日本語では「いいえ」になっていますね。もしここを、英語の yes に忠実に「はい、そうよ。」とか「ええ、そうよ。」と訳してしまうと、変な感じになります。

私が初めてアメリカに行ったのは高校生のとき。夏休みに1ケ月間、サンフランシスコ近郊のご家庭にホームステイをさせていただきました。以下はそのときにホストファミリーとの間でよく起きた「?」な会話です。なぜ以下のようなミスコミュニケーションが起きたのか、考えてみてください。

相手:Aren’t you hungry? 「お腹減ってない?」
私 :Yes.はい(減ってないですよ)。」
相手:OK, what do you want to eat? 「そうか。じゃあ、何食べたい?」
私 :??? 「???」

また、こんなこともありました。

相手:Which do you want to do, going to the movies or going to the zoo? 「映画と動物園とどっちに行きたい?」
私 :Uh… the zoo. 「うーん……、動物園。」
相手:Oh, you don’t want to go to the movies? 「おや、映画は行きたくないの?」
私 :Yes.はい(別にいいです)。」
相手:What? Do you want to go the movies? 「え? 映画に行きたいの?」
私 :??? 「???」

さあ、ミスコミュニケーションの原因はわかったでしょうか?
日本語の「はい、いいえ」と英語の「 yes、no 」の違いは、「~しないの?」という「否定疑問文」の応答でよく表面化します。「~しないの?」と言われて、日本語なら「はい、いいです。」とか、「いや、やります。」と答えることができます。しかし、それを文字通り Yes, I’m not. とか No, I do. という英語にしてしまうと、英語を話す人は混乱するわけです。

では英語を話す人が、なぜここで混乱するのでしょうか?

takashimasama-wata
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英語の yes、no が表す「本当の意味」

ではここで、英語の yes、no の本当の意味と、日本語の「はい」「いいえ」の本当の意味をご紹介します。

英語の yes の本当の意味:「私は肯定文の話をしているよ」
英語の no の本当の意味 :「私は否定文の話をしているよ」

日本語の「はい」の本当の意味 :「さっき述べた情報の内容は『○』である。」
日本語の「いいえ」の本当の意味:「さっき述べた情報の内容は『×』である。」

例えば、英語で “It’s hot today.” 、日本語で「今日は暑いね。」と相手が言ったとき、それに対して英語を話す人は、自分が考える情報が “It is hot.” 、つまり「肯定文」の情報だな、と考えれば “Yes(, it is hot today).” と答えます。英語を話す人にとって、yesは「はい」を意味するというよりは、「肯定文の話をしたい」ということを表しているのです。一方で日本語を話す人は、相手が言った「今日は暑い」という情報が自分にとって「○」だなと思えれば「はい(暑いですね)。」と答えるわけです。ここまでは日本語の「はい」と英語の「yes」は同じように見えます。

しかし英語で “It’s not hot today.” 、日本語で「今日は暑くないね。」と相手が言ったとき、英語を話す人は、「確かに今日は暑くないな。」と感じていれば “It’s not hot today.” という「否定文」の気持ちが頭に浮かぶわけですから、“No(, it’s not hot today).” と答えるわけです。英語にとって no は単純に「いいえ」と言っているのではなく、「自分は否定文を頭に浮かべているよ」ということを意味しているのです。ところが日本語を話す人は、相手が言った「今日は暑くない」という情報は、自分にとっても「○」だなと感じるので、「はい(暑くないですね)。」と答えるわけです。

今度は英語の yes が日本語の「いいえ」に相当する場合を考えてみましょう。
相手が英語で “It’s not that hot today.” 、日本語で「今日はそんなに暑くないじゃん。」と言ったとします。それに対して、英語を話す人が “It’s hot today.” と感じている場合、頭には「肯定文」が浮かんでいるわけですから、相手に対して “Oh, yes, it is(hot today).” と答えるわけです。英語の yes は「自分は肯定文を頭に浮かべているよ。」ということを表明しているのです。

ところが日本語を話す人は、相手の述べた「今日はそんなに暑くない」に対して「そうかな? 結構暑いよな。」と感じている場合、相手の言った情報は「×」だと感じているので、「いや、暑いよ。」と答えるわけです。ですからここでは “Yes, it is(hot today).” が「いいえ、今日は暑いですよ。」と訳されることになるのです。

日本語の「はい」「いいえ」は「あちらが言った情報が自分にとって『○』なのか『×』なのか」ということしか表しませんから、「はい」の後ろに「暑くないですね」のような否定文が来ても、「いいえ」の後ろに「やっぱり暑いです」のような肯定文が来ても問題ないのです。でも英語では yes は「肯定文の気持ちだ」ということの表明ですから、その後に否定文が来ることはありえません。同様に no の後に肯定文が来ることはありえないわけです。

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「本当の yes、no 」をうまく使いこなすには?

ここまでの解説で、yes =「はい」、no =「いいえ」という考えは捨てたほうがいい、ということを理解していただけたでしょうか。英語の yes は「肯定文の話をしていますよ」、no は「否定文の話をしていますよ」というのが本当の意味です。これを意識しておくと、否定疑問文(「~ではないのですか?」)に対して、誤解なく返答ができるようになります。

否定疑問文(「〜ではないの?」「〜しないの?」)で問いかけられたら、

1. まず、「はい」「いいえ」を頭に浮かべないこと。
2. 次に、慣れないうちは yes, no を使わず、普通の文で答えること。例えば Aren’t you hungry? に対しては yes や no を使わず、I’m hungry. か I’m not hungry. で答えること。
3. 慣れてきたら、I’m hungry. という肯定文の代わりに Yes, I am. を、I’m not hungry. という否定文の代わりに No, I’m not. を使うようにする。

という順番を踏んでいけば、スムーズに受け答えができるようになるでしょう。

***
それでは最後に練習問題を2つ出題します。
日本語を参考に、B の言うべきセリフを正しく選んでください。

【1】
A:Oh, don’t you want to go to the movies? 「え?映画行きたくないの?」
B:( 1. Yes, I do!  2. No, I don’t!  3. No, I do! ) But … 「いや、行きたいんだよ! でもさ……」

【2】
A:This time, I think he is wrong. But you don’t think so? 「今回は彼が間違っているよ。でも君はそう思わないんだね?」
B:( 1. Yes, I don’t.  2. Yes, I do. 3.  No, I don’t. ) 「ああ、そうは思わないね。」

以下、解答です。

【1】1. Yes, I do!
「はい」「いいえ」を除いて考えましょう。返事をする側は「行きたい」、つまり I want to go to the movies. という気持ちがあるので肯定文の気持ちです。したがって yes を使わないといけません。日本語の「いや」につられて no を使わないように。選択肢3の No, I do! のように「否定文の気持ちを表す no と、肯定文である I do が同居する」という形は英語では絶対にありえません。

【2】3. No, I don’t.
返事をする側は「そう思わない」、つまり I don’t think so. という気持ちがあるので、否定文の気持ちです。したがって no を使わないといけません。「ああ」という同意の日本語につられて yes を使わないようにしましょう。選択肢1の Yes, I don’t. のように、「肯定文の気持ちを表す yes と、否定文である I don’t が同居する」ということはありえません。