「とっさに英語が出てこない……」本当の原因と解決方法
「英語で話しかけられても、とっさに言葉が出てこない……」
「英語を聞いてパッと理解できない……」
「英語はまったくの初心者ではないが、聞いたり話したりするのは苦手……」
そんな方はいませんか。学習経験はあるのに、なぜ実際の場面で英語を使えないのでしょう?
そんなお悩みを解消すべく、時短型英語ジム「StudyHacker ENGLISH COMPANY」でトレーナーとして活躍する “英語の専門家” 中馬剛さんにお話をうかがいました。
知っているのと知らないのでは大違い——読んで実践するだけで、英語のスピーキング力とリスニング力が大幅に上がるはずですよ。
英語が「聞けない」「話せない」理由
単語や文法の基本は学校で学んだし、簡単な英文なら読んで理解できる。それなのに、とっさに英語が出てこない。周囲の人が話している英語が聞き取れない。これは、英語中級者に多い悩みです。これまで英語学習に時間を費やしてきたにもかかわらず、いまだに英語を正確に聞き取り、意のままに使いこなすことができないのは、なぜでしょうか。
第二言語習得に詳しい中馬さんは、その原因のひとつは「瞬発力のなさ」にあると言います。リスニングとスピーキングの共通点は、音声によるコミュニケーションだということ。そして、音声によるコミュニケーションは、読み書きに比べてスピードが求められるのです。
リーディングでは、英文は逃げも隠れもせず、いつまでもあなたの目の前で待っていてくれます。英単語の意味を思い出したり、文構造を把握したりするのに多少時間がかかっても、文章が消えてなくなることはありません。ライティングも同じ。試験でもない限り、「なんて書こうかな」と考える時間はいくらでもありますよね。
一方、リスニングでは、相手が発した英語は一瞬のうちにパッと消えてしまいます。一度聞き逃したら、もう終わり。たとえ英語の音が聞き取れても、音が意味するところを瞬時に理解できなければ、音の記憶はすぐに失われてしまうでしょう。
スピーキングでも同様に、今この瞬間に言葉を発することが必要です。会話は言葉のキャッチボールの上に成り立つもの。相手は何十秒も待ってはくれません。日本語で考えた内容をひとつひとつ英訳したり、文法が正しいか細かく検証したりする時間的余裕はないのです。
ケース・ウェスタン・リザーブ大学の白井恭弘教授も、実際に英語が使えない理由のひとつとして、スピードの問題を挙げています。
どんどん流れてくる単語の群れを即座に意味と結びつけて理解すること、自分の言いたいことをすぐに英語の単語にして組み合わせて話すこと、これはかなりの訓練を必要とします。ですから、実際に聞けるようになる、話せるようになるには、それに対応できるスピードをつける必要があります。
(引用元:白井恭弘(2013),『英語はもっと科学的に学習しよう SLA(第二言語習得論)からみた効果的学習法とは』, 中経出版. ※太字は筆者が施した)
だからこそ、必要なのはスピードに対応できる「瞬発力」。瞬時に理解して、即座に言葉を発する。そんな力が求められているのです。
英語の瞬発力トレーニングは学校教育では不十分
スピード感が問われるリスニングとスピーキング。しかし、従来の日本の学校教育において、英語の瞬発力を鍛える機会は十分ではありませんでした。
これまでの日本の英語教育の中心は読み書きであったために、一度でパッと聞き取ったり、瞬時に英語で応答したりといった、瞬発力が求められるトレーニングが不足していた——英語教育に詳しい中馬さんはそう語ります。
学校の授業で実際に英語を使う場面が少なかったことは、皆さんも実感があるはず。ためしに、中高の英語の授業を思い出してみてください。英語を使って表現したり、ディスカッションしたりする活動は、週にどれくらいあったでしょうか?
ベネッセ教育総合研究所による「中3生の英語学習の実態」調査(2015〜2018年)では、今の中3生の保護者が、かつて中学や高校の英語の授業でどんな活動をしていたのかを調べています。
そこで保護者世代の大人が、自身の中高生時代に英語で「自分の気持ちや考えを話す活動」を「よくしていた」と回答したのは、たったの2%のみ。「ときどきしていた」の10%を入れても、わずか全体の1割程度にしか及びません。代わりに多いのは、単語・文法の説明や、英語を読んで日本語に訳す活動。
- 単語や英文を読んだり書いたりして覚える(90%)
- 英文を日本語に訳す(90%)
- 文法の問題を解く(86%)
- 単語や英文のしくみについて先生の説明を聞く(71%)
※()内の数値は「よくしていた」+「ときどきしていた」の%
これでは、いくら学習に励んでも、瞬時に英語を使えないのは当然のこと。前出の白井教授も、従来の日本の英語学習法について、こう警鐘を鳴らしています。
文法や単語を説明して、英語を日本語に訳す、また日本語を英語に訳す、という学習形態では、英語を使う、つまりコミュニケーションの手段として英語を使うという究極の目的を達成することは不可能です。
(引用元:白井恭弘(2013),『英語はもっと科学的に学習しよう SLA(第二言語習得論)からみた効果的学習法とは』, 中経出版.)
和訳や語彙・文法説明だけでは、コミュニケーションの手段として英語を使うことはできないのですね。
しかし「今までの英語学習は無駄だったのか......」と落胆する必要はありません。中高の授業や大学受験で培った文法と語彙は、英語力の基礎。このような基礎知識があって初めて、高度な運用能力を育てる土台ができあがります。
立命館大学大学院言語教育情報研究科の田浦秀幸教授は、「大人の日本人学習者は、若いころに地道な受験勉強をとおして文法と語彙の基礎を身につけているので、少しくらい話すのが苦手でも実力が伸びやすい」としたうえで、このように語っています。
少し前の世代の日本人で、きちんと勉強をしてきた人たちはしっかりとベースを作ってもらっているので、適切な指針を示してあげれば(中略)自信がついて、「いままでは話すことだけがダメだったんだけれども、しっかりと基本はつけてくれていたんだな、日本の教育ありがとう」と言えるはずです。
(引用元:田浦秀幸(2016),『科学的トレーニングで英語力は伸ばせる!』, マイナビ出版.)
これまでの学習は決して無駄ではありません。ただ、スピードに対応するための練習が足りなかっただけ。
いま持っている基礎力にプラスして、適切な指針のもと、英語の瞬発力を鍛えるトレーニングを行なう。これが「パッと聞き取り、サッと話す」ための近道なのです。
英語をパッと聞き取り、サッと話すための学習法
リスニングとスピーキングの瞬発力を鍛えるには、どのようなトレーニングを行なえばいいのでしょう?
第二言語習得研究にもとづき、英語の瞬発力を育てるための「適切な指針」と「効果的な学習法」をご紹介した約5分間の動画がありますので、ぜひご覧ください!
- とっさに英語が出てこない、聞き取れないワケ
- リスニングの瞬発力を鍛える2つの学習法
- 理解スピードを遅らせる「○○○○」の解消方法
- 瞬間的に話すための土台となる「認知文法」
- スピーキングの瞬発力を高める「□□□□プラクティス」
英語のプロトレーナー・中馬さんによる解説で、リスニングとスピーキングの課題を解消できるはずですよ。
YouTube「時吉秀弥のイングリッシュカンパニーch」では、ほかにも英語学習中の皆さんを応援するためのお役立ちコンテンツをたくさんご用意しています。ぜひチャンネル登録をお願いします!
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これまでせっかく努力してきたのだから、中途半端なレベルで終わってしまってはもったいない! 今こそ中級者から抜け出し、上級者になるべく、瞬発力を意識した学習に取り組んでみませんか。
英語を瞬時に聞き取り、自在に使いこなせるようになれば、ビジネスでもプライベートでも新たな世界がひらけるはずですよ。