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【英語シャドーイング】“科学的に正しい” やり方と4つの効果

英語におけるシャドーイング01

英語力アップに効果絶大な「シャドーイング」をご存じですか? 「シャドーイングは試したことがあるけれど、難しくてすぐにギブアップしてしまった」「英語シャドーイングに挑戦してみたが、いまいち効果を感じられなかった」という方もいるかもしれません。

英語パーソナルジム「ENGLISH COMPANY」が、英語シャドーイングの4つの効果と、“必ず効果が出る” 正しいやり方をご紹介します。



英語のシャドーイングとは

シャドーイングとは、英語の音声を聞きながら、1、2語遅れで音声のあとを追いかける練習方法。聞こえてくる音声を影(シャドー)のように追いかけることから、この名称になりました。シャドーイングはもともと、通訳者を目指す人の訓練方法のひとつでしたが、最近では一般の英語学習者にも認知されてきています。

英語シャドーイングは、「聞く」と「発音する」を同時に行なうので、かなり負荷の高い練習方法です。そのため、最初のうちは難しく感じるかもしれません。しかし、正しいやり方で繰り返し練習すれば、確実に効果が出ます。シャドーイング練習を取り入れて、英語のスキルアップを狙っていきましょう。

英語シャドーイングの効果

では、英語シャドーイングには、どんな効果があるのでしょうか?

時短型英語ジム「StudyHacker ENGLISH COMPANY」を運営する株式会社スタディーハッカー取締役で、言語教育情報学修士・TOEIC990点・TESOL(英語教育の国際資格)をもつ田畑翔子氏は、「シャドーイングが最も効果を発揮するのは『リスニング』の能力」だと話しています。

また、立命館大学大学院 言語教育情報研究科の田浦秀幸教授も、「シャドーイングはリスニングにもリーディングにも効果のあるトレーニング」だとしています。

そして、関西学院大学院の門田修平教授も、著書『外国語を話せるようになるしくみ シャドーイングが言語習得を促進するメカニズム』のなかで、「シャドーイングを実践することで、リスニング力だけでなく、スピーキング力もアップする」と述べているのです。

もとは通訳者を目指す人の訓練方法だったのですから、効果が出ないわけがないですよね。英語シャドーイングの効果をそれぞれ詳しくみてみましょう。

シャドーイングの効果1:リスニングスキルの向上

シャドーイングが最も効果を発揮するのは、「リスニングスキルの向上」です。リスニングのプロセスは2つあります。これは、母語であっても第二言語であっても同じです。

第1段階:耳から入った音声を単語として認識【音声知覚】
第2段階:語彙や文法知識、背景知識などをもとに意味内容を理解【理解】

まずは、音声知覚で単語を聞き取り、そのあとに、頭のなかにある語彙や文法知識などを使って内容を理解します。もし、音声知覚の段階で「どこからどこまでがひとつの単語かわからない」という方は、音声変化のルールを確認してみてくださいね。

ではなぜ、母語では音声を聞いたと同時に理解ができるのに、英語のリスニングとなると、理解が難しくなるのでしょう。

これには、脳の「ワーキングメモリ(一時的に情報を脳に保持し、処理する能力)」が関係しているのです。母語を聞くときは、音声知覚が無意識で行なわれるため、ワーキングメモリのリソースを理解だけに割くことができます。だから、聞くと同時に話の内容を理解したり、意見を考えたりできるのです。

しかし、英語のリスニングの場合は、ワーキングメモリが音声知覚にかなり割かれてしまうので、内容を理解するためのリソースが足りなくなってしまいます。これが、英語音声を理解できない主な原因です。

脳のワーキングメモリが音声知覚にばかり使われている状態と、内容を理解するリソースが残っている状態

シャドーイングでは、すべての単語とその発音を正確にとらえる必要がありますから、音声知覚のプロセスを集中的に鍛えることができます。そして音声知覚が鍛えられ、自動化される(考えなくてもすぐにできる状態になる)と、ワーキングメモリのリソースを理解に回せるので、リスニング力が向上するのです。

シャドーイングは、リスニング力アップのための、高密度時短トレーニングと言えるでしょう。

シャドーイングの効果2:リーディングスキルが伸びる

田浦教授によると、リーディングとリスニングは脳の同じ回路を使うので、同時にトレーニングすると学習効果が上がるのだそう。

リーディングは「文字を読んで理解すること」、そしてリスニングは「音声情報を聞いて内容を把握すること」ですが、共通するのは、どちらも「インプット」であるということです。もちろん、視覚と聴覚なので入力方法は違いますが、脳のなかでは最終的に同じルートで処理されるそうですよ。

また、ネイティブスピーカーは、意味のかたまり(チャンク)ごとに自然と息継ぎをしますが、シャドーイング練習ではその息継ぎの場所まで正しく習得できます。すると、リーディングの際にもチャンクの区切りが見つけやすくなり、結果的にリーディングスピードも上がるのです。

シャドーイングの効果3:単語や文法などの知識の定着

新しく覚えた単語や文法、発音などを使いこなすのはなかなか難しいものです。しかし、シャドーイング練習を重ねることによって、すぐに取り出せる知識にすることができます。

たとえば、“water” という新出語を記憶する流れは以下です。

「“water” は、昨日の英語の授業で新しく習った単語で、教科書の下のほうに書いてあった。『水』という意味だ!」という記憶【エピソード記憶】

覚えた状況を離れた記憶【意味記憶】

意識しなくても自動的に使える記憶【潜在記憶】

シャドーイング練習を重ねると、意識して覚えようとしなくても、単語や構文などをいつの間にか記憶してしまいます。仕事に関連するようなテキストを使ってシャドーイング練習をすれば、語彙や言い回しなどを効率的に頭に入れることができるでしょう。シャドーイングは英語を「知っている」状態から「使える」状態にする、とても有効な学習方法なのです。

シャドーイングの効果4:スピーキングスキルがアップする

シャドーイングはスピーキングスキルまでも向上させます。その理由を見てみましょう。スピーキングには3段階のプロセスがあり、以下の順で進行しています。

第1段階:話そうと思うメッセージをつくる【概念化】
第2段階:単語や文法知識を用いて、頭のなかで言葉にする【言語化】
第3段階:実際に声に出して発音する【調音】

まずは【概念化】。ここでは伝えたいメッセージを思い浮かべます。次に【言語化】で、頭のなかの心的辞書(メンタルレキシコン)にある、さまざまな言語情報を参照し文章をつくり上げます。この言語化のとき、発音やアクセントなども頭のなかでシミュレーションします。そして最後の【調音】で、口の開き加減や舌の使い方を調整し、物理的に声を出して発声します。

シャドーイングは、【言語化】と【調音】のプロセスを、何度もリハーサルすることになるので、スピーキング力が鍛えられるのです。また、シャドーイングは発音だけでなく、リズムや息継ぎの場所までコピーするので、練習するうちに、英語の正しい発音やアクセント、文の抑揚なども習得できますよ。

英語シャドーイングの “必ず効果が出る” 正しいやり方

時短型英語ジム「StudyHacker ENGLISH COMPANY」トレーナーの鵜飼彩氏は、「正しいやり方で練習しないとシャドーイングの学習効果が半減してしまう」と話しています。

英語シャドーイングは、細かいステップに分けて練習を行なうことがとても重要です。第二言語習得研究に基づいた、正しいシャドーイングの練習方法を丁寧に紹介しましょう。

STEP1:わからない単語や文法を確認する

シャドーイング練習では、しっかり内容が理解できている、もしくは聞いてすぐにわかるレベルの英文を使います。まずは、練習に使う英文をチェックしましょう。わからない単語や文法があれば、意味を調べたり、発音を確認したりすることが大切です。

単語を覚えるときは、必ず正しい発音も一緒に覚えてください。教材の発音を聞いてから、自分でもリピートしてみましょう。

STEP2:「サイトトランスレーション」で瞬時に意味を理解する

英文を黙読しながら、意味のかたまり(チャンク)ごとに分けて、そのチャンクごとに瞬時に日本語訳を言っていく練習を行ないます。このトレーニングは「サイトトランスレーション」といって、プロの通訳も行なっているトレーニング法です。

瞬発的に意味が正しく理解できるかどうかのチェックなので、きれいな日本語に訳さなくても、意味がざっくりとれていれば問題ありません。瞬時に訳せなかった箇所は、「瞬時に意味が引き出せるほど定着していない語彙」や「文法を理解していないところ」です。

では実際にサイトトランスレーションに挑戦して、感覚をつかんでみてください。できるだけ速く意味がとれるようにしましょう。

Almost everyone tells a lie / at one time or another / without feeling / that he or she / has done something terribly wrong. // Many people lie / without hesitation / because they feel / that there is good reason for it. // For example, / a reporter might try to pass / as a government official / in order to get the information / for a story he or she is writing. // Doctors, too, / lie to patients sometimes / when they feel / that the truth about an illness / would be too much / for the sick person / to face. //
(1999年センター試験より一部抜粋)

ほとんど誰もが嘘をつく / 何かの折に / 感じることなく / 自分が / 何かひどく悪いことをしてしまったと。 // 多くの人が嘘をつく / ためらいなく / なぜなら彼らは思う / 嘘をつく十分な理由があると。 // たとえば、 / 記者は通ろうとするかもしれない / 政府の役人として / 情報を得るために / 自分が書いている記事のための。 // 医者も、 / ときどき患者に嘘をつく / 思うときに / 病気についての真実が / 余りあるとき / 病人にとって / 直面するには。//

STEP3:英文の意味を意識しながら、正しい発音で音読する

音読では、「正しい発音で読めているか」「読みながら意味がわかるか」の2つを意識してください。この2つができるようになるまで音読練習をしましょう。正しい発音で、かつ、読みながら意味もとれている状態になったら、次のステップに移ります。

STEP4:オーバーラッピングで音声と同時に発音する

オーバーラッピングとは、自分の声を英語の音声にかぶせて、音声と同時に発音するトレーニングです。英語の正確な発音、アクセント、音声変化、リズムなどを身につけることができます。

英文のスクリプトを見ながら、音声をよく聞いて、正確な発音、アクセントの場所、リズムや息継ぎまで、忠実にまねをしましょう。音声変化が再現できていれば、音声と同じ尺で発音することができるはず。カタカナ発音のまま、ただ急いで発音するだけにならないように気をつけてくださいね。

STEP5:とにかく「音」に集中する「プロソディ・シャドーイング」

いよいよシャドーイングに入ります。まずは、「音」だけを意識してシャドーイングをする「プロソディ・シャドーイング」です。初めのうちは英文を見ながらでもかまいませんが、最終的には何も見ずにシャドーイングできるようにしましょう。

<プロソディ・シャドーイングのやり方>

  1. 英文が聞こえてきたら、1、2語遅れくらいで同じように発音。
  2. よく音声を聞いて、発音、間、リズムやイントネーションまでコピーする。英文を見ながら行なうときは、オーバーラッピングにならないように気をつける。
  3. 英文の内容まで考えようとせず、とにかく音に集中して、正確な発音を同じスピードで再現する。

やがて、プロソディ・シャドーイングが少しずつ楽になり、音声を正確に追いかけられるようになると、余裕ができて、自然に単語や文の意味内容も頭に入ってくるはずです。音声知覚の処理の負荷が減って、脳のリソースを内容の理解に回せるようになった証拠ですね。

STEP6:コンテンツ・シャドーイングでさらなる負荷をかける!

プロソディ・シャドーイングが難なくできて、英文の内容がイメージできるようになってきたら、「コンテンツ・シャドーイング」に移りましょう。コンテンツ・シャドーイングは、内容(コンテンツ)を思い浮かべながら行なうシャドーイング。英文の内容を思い浮かべながら、復唱が流暢にできるようになることが目標です。

コンテンツ・シャドーイングで音声知覚が自動化される(考えなくてもすぐにできる状態になる)と、そのぶん脳のリソースが、内容の理解に割けるようになり、リスニング力がアップします。

また、コンテンツ・シャドーイング練習では、頭のなかの心的辞書(メンタルレキシコン)から、単語や文法に関する情報を瞬時に引き出す必要があります。すると、スピーキングの【言語化】と【調音】のプロセスのシミュレーションが可能になり、その結果、スピーキング力アップにもつながるのです。

STEP7:シャドーイングを録音してチェックする

コンテンツ・シャドーイングができるようになったら、今度は、自分のシャドーイングをICレコーダーやスマートフォンに録音します。うまくシャドーイングできているかどうかを確認するためです。

録音の際、英文を間違えたり飛ばしてしまったりしても、無理に英語音声を追いかけようとしないでください。次に入りやすいところからシャドーイングを再開すればOKです。無理に追いかけてしまうと、本来の英語音声よりも速いスピードになり、自己流の発音やアクセントで発声するリスクが高くなってしまいます。

自分の英語シャドーイングを聞いてみて、課題点があれば、できなかった箇所を中心に練習をしていきましょう。

英語シャドーイング教材の選び方

英語シャドーイングに向いている教材はどのようなものでしょう。特に初級者の方は、教材選択に注意が必要です。音声が速すぎる、読解が難しいと感じるような教材はシャドーイングには向いていません。比較的ゆっくりと話されているスピーチや、英語学習者用に速度を落とした音声を提供しているニュース記事などがよいでしょう。

英語シャドーイングのトレーニングに特化した書籍も数多く出ているので、ぜひ活用してみてくださいね。

初級レベル向け1:『決定版 英語シャドーイング 超入門』

日常会話や、海外旅行でそのまま使えるフレーズなど、実用的な表現が数多く収録されています。喜び・怒り・驚きなどの感情をイントネーションで表現する会話例は、ぜひともマスターしておきたいですね。

>>決定版 英語シャドーイング 超入門

初級レベル向け2:『新ゼロからスタートシャドーイング 入門編』

まず「単語シャドーイング」からスタートするので、シャドーイング初心者でも取り組みやすい教材と言えるでしょう。単語→短い文→会話→長文→ニュース英語と段階的に素材がレベルアップします。

>>新ゼロからスタートシャドーイング 入門編

初級レベル向け3:「VOA Learning English」

アメリカの国営ラジオ局「Voice of America」が運営する、アメリカ英語の学習サイト「VOA Learning English」。英語学習者向けに、ゆっくりとした速度で最新ニュースなどを伝えています。スクリプトもすべて見ることができるので、シャドーイング練習にぴったりです。

中級レベル向け1:『話せる! 英語シャドーイング』

英語のスピーキング力を上げる、10ステップのシャドーイングトレーニングです。また、英語レベルチェックシートつきなので、自分に合ったレベルからシャドーイング練習を始めることができます。

>>話せる! 英語シャドーイング

中級レベル向け2:『英語シャドーイング練習帳』

出身地も年齢もさまざまなネイティブ20名以上の英語でシャドーイング練習ができます。バリエーション豊かな英語の音のデータベースを脳のなかにつくりましょう。

>>英語シャドーイング練習帳

上級レベル向け:『英語シャドーイング映画スター編 Vol.1』

キアヌ・リーブス、エマ・ワトソンなどの映画スターインタビューの音声を使った教材です。練習を重ねれば、早口で話されている箇所も、細部まではっきり聞き取れるようになりますよ。

>>英語シャドーイング映画スター編 Vol.1

全レベル向け:『公式TOEIC® Listening&Reading 問題集 6』

TOEIC®テストを開発しているETS(Educational Testing Service)が制作した問題集。付属CDに収録されているリスニングセッションの音声に加え、リーディングセクションの一部音声もダウンロード可能です。英語レベルに関係なく、シャドーイング練習に使える一冊。

>>公式TOEIC® Listening&Reading 問題集 6

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シャドーイングは短期間で英語力を上げる学習法です。正しいステップでシャドーイング練習をすれば、かなりの英語力アップが期待できますよ。



参考資料
門田修平(2018),『外国語を話せるようになるしくみ シャドーイングが言語習得を促進するメカニズム』, SBクリエイティブ.
田浦秀幸(2016),『科学的トレーニングで英語力は伸ばせる!』, マイナビ出版.
StudyHacker ENGLISH COMPANY(2020),『5つの音声変化がわかれば英語はみるみる聞き取れる』, マイナビ出版.
StudyHacker ENGLISH COMPANY著, ナナトエリ作画(2018),『マンガでわかる 最速最短! 英語学習マップ』, セブン&アイ出版.
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