1. 英語勉強法ノート
  2. NG勉強法
  3. 「聞き流すだけで英語ができるようになる」ってホント!? あなたの英語学習がイマイチ捗らない6つの原因。
ENGLISH COMPANYの英語勉強法ノート ENGLISH COMPANYの英語勉強法ノート

「聞き流すだけで英語ができるようになる」ってホント!? あなたの英語学習がイマイチ捗らない6つの原因。

日本のようなEFL環境では、「とりあえずネイティブとたくさん話す」学習方法はかえって遠回り

「英語学習は “ネイティブと話す” のが一番の近道?」
「“聞き流すだけ” で英語はできるようになるの?」
「勉強がなかなか “続かない” のはどうして?」

そんな “よくある疑問” に、英語教育のプロが答えてくれました。

英語学習ポータルメディア「ENGLY(イングリー)」(※2022年現在は「English Hub」)のミートアップ企画第1弾となる「ENGLY NIGHT #01」に、入会600人待ちの短期集中型英語ジム『ENGLISH COMPANYが登壇。今の日本に蔓延している英語学習の間違った常識や問題点に深く切り込みました。



あの勉強方法はNGだった!? あなたの英語学習がイマイチ捗らない原因が見つかるかもしれません。

Q. よく「ネイティブとたくさん話せば英語はできるようになる」なんて話を耳にします。これって本当なのでしょうか?

A.
言語習得の科学として「第二言語習得研究」というものがあります。これは、人間が母語以外の言語を習得するメカニズムやプロセスを解明する学問のことです。そして第二言語習得研究では、学習者が第二言語を習得するにあたって “学習環境の違い” を考慮する必要性が言明されています。以降、一般的な日本人を想定して、母語を “日本語”、第二言語を “英語” として話を進めていきましょう。

学習環境は大きく「ESL(English as a Second Language)環境」と「EFL(English as a Foreign Language)環境」の2つに分けられます。ESL環境とは、日常生活で英語が必須である社会環境のことです。英語圏の国へ長期留学して英語を学ぶ場合はこちらに該当します、もうひとつのEFL環境とは、日常生活では英語を必要としない社会環境のこと。日本人が日本にいながら英語を学習する場合は、こちらが当てはまります。そして、この両者には決定的な違いがあるのです。

ESL環境では、周囲で英語が当たり前に飛び交っていますから、まずインプット量が桁違いです。また、英語を使えないと生活がそもそも成り立たないということもあり、アウトプットの必要性も自然と高まります。一方でEFL環境の場合、英語に触れるのは “英語を勉強しているとき” だけ。それ以外の時間は基本的に日本語を使っています。つまり、ESL環境と比べると、インプットもアウトプットも、その絶対量が圧倒的に不足してしまっているのです。

でも多くの英語学習者が、その事実を見落としている。日本はEFL環境であるにもかかわらず、「とりあえずネイティブとたくさん話す」という “一瞬だけESL環境に近づける” 学習方法が効率的だと勘違いしてしまっています。

日本はESL環境ではない以上、学習方法にも工夫を施す必要があります(※詳しくは後述)。英語学習を効率的に進めるためには、ネイティブとの英会話よりも先にやるべきことがあるのです。

【結論】日本のようなEFL環境では、「とりあえずネイティブとたくさん話す」学習方法はかえって遠回り。

Q. 第二言語習得研究の観点から見ると、どのような順序で英語学習を進めていくのが効率的なのでしょうか?

A.
第二言語習得研究においては、母語が身についた大人がどんな順番で英語学習を進めていけばいいのかについて、次のように言われています(※下画像参照)

母語が身についた大人がどんな順番で英語学習を進めていけばいいのか

まずは語彙文法といった基礎知識を身につける。続いて「読む」や「聞く」といった “受容スキル” を身につける。そして「話す」「聞く」といった “産出スキル” を鍛える。この順番を推奨しています。

多くの英語学習者は、最終的に “英語を流暢に話せる” “英文を正確に書ける” ことを目標としているはずです。でも逆算して考えてみてください。英語を話せたり書けたりするためには当然、英語を読んだり聞いたりして意味がパッとわからなければいけませんよね。さらにそのためには、基礎的な語彙や文法の知識も必要になってきます

そもそも基本的な英文さえ正確に読むことができない。こんな方は、最初の語彙文法の知識が足りていません。したがって、まずは単語学習や文法学習から進めなければならないのです。

あるいは、語彙文法の知識はあり、英文もある程度は正確に読めるものの、読むスピードが遅い。こんな方は、1文ずつ訳しながら、または何度も戻りながら英文を読んでしまっている可能性があります。したがって、意味のかたまりごとに英文を捉える「チャンクリーディング」や、英文を頭から訳していく「サイトトランスレーション」といったトレーニングを積むべきです。

このように、自分が今どこで課題を抱えているかを見極めたうえで、適切な学習内容を選ぶ必要があります

【結論】「語彙文法→ 読む・聞く → 話す・書く」の順番が鉄則。現状のレベルを無視して一足飛びに学習を進めるのは非効率。

現状のレベルを無視して一足飛びに学習を進めるのは非効率

Q. 英語を読んだり聞いたりする “インプット” の学習と、英語を話したり書いたりする “アウトプット” の学習。両者のバランスはどれぐらいがよいのでしょうか?

A.
第二言語習得研究においては、「“大量のインプット” と “少量のアウトプット”」のバランスが鉄則とされています。具体的な比率は一概には言えませんが、上級者でも「インプット7:アウトプット3」程度。これが初心者の場合、インプットの比率はもっと高まってきます。いずれにせよ、大量のインプットを確保する必要があるというのが、多くの研究者の見解です。

先ほどの「英語学習の順番」の話とも重複しますが、アウトプットできる英語は読んだり聞いたりしたときに理解できる英語の中からしか生まれません。よく、英会話中心の “アウトプットオンリー” の学習をされている方もいますが……アウトプットするための知識の引き出しがないままアウトプットの練習をしていることになるので、じつは非常に非効率なのです

とはいえ、“少量のアウトプット” にも重要な役割があります。第二言語習得の研究者であるメリル・スウェイン氏が提唱した「アウトプット仮説」によれば、英語学習におけるアウトプットには3つの機能があるとされています。

1つめは、言えなかった部分に気づくことで、関連するインプットに注意を向けさせる機能。2つめは、自分の発話が正しく伝わるかどうかを仮説検証する機能。そして3つめは、自分がその言語について考えたり学習者同士で話し合ったりすることでメタ言語的な能力を高める機能。端的に言えば、アウトプットには、その後のインプットの効率を高めてくれる役割があるのです。

「大量のインプット」を大前提としつつ、そこに「少量のアウトプット」を組み込んでいく。このバランスを推奨します。

【結論】“アウトプットばかり” だと非効率。「大量のインプットと少量のアウトプット」のバランスを心がけよう。

「大量のインプットと少量のアウトプット」のバランスを心がけよう

Q. 聞き流すだけで英語がペラペラになる——こんな夢みたいな話、本当にあり得るのでしょうか?

A.
第二言語習得研究では「i+1(アイプラスワン)」という考え方があります。ここで述べられているのは、効率的に英語を習得するためには、学習者の現状のレベル(i)より少しだけ高いレベル(+1)の英語に触れる必要があるということ。

たしかに、「リスニング」は重要なトレーニングのひとつです。しかし、現状のレベルを無視して、まったく意味が理解できない英語をただやみくもに聞き流すだけでは、効果はほとんど期待できないでしょう。

また、聞き流すという行為がどれだけ意識的な学習につながるのかも疑問です。EFL環境である日本で英語を学習していく場合、先述したように、明示的・意識的な学習を行なうのが必ず近道になります。それを抜きにして聞き流すだけの学習をするのが、多忙な社会人にとって本当に時短になるのかと問われれば、ノーと答えざるを得ません。

【結論】「聞き流すだけで英語がペラペラになる」を信じるのは危険。

「聞き流すだけで英語がペラペラになる」を信じるのは危険

Q. 世の中にはオンライン英会話スクールもたくさんあります。「英語学習には “大量のインプット” が必要」とのことでしたが、アウトプットがメインになるオンライン英会話スクールは、どう活用するのがよいのでしょうか?

A.
ここで指摘したいのは、基本的な英語の知識が少ない状態でアウトプットの練習をすると、時に逆効果になってしまうことがあるということです。第二言語習得研究では「化石化」と呼ばれていますが、誤った使い方を繰り返して、そのまま適切なフィードバックが受けられないと、発音や文法など、誤った英語が定着してしまうのです。それをあとで修正しようとしても多大な時間と労力がかかる。たいへん悲劇的な事態です。

英語学習には順番があります。まずは「語彙文法」などの知識を入れたうえで、「読む・聞く」といった英語を “理解する” ためのスキルを固めていく必要があります。逆に言えば、そのフェーズをクリアした、あるいはすでにクリアしている方でしたら、オンライン英会話は充分に有効活用できるということ。「アウトプット仮説」で説明したように、気づきを得たり仮説検証したりする機会にもなりますからね。

ただ、“たくさん話せた” “話せて楽しかった” で終わってしまわないよう注意してください。今日のレッスンで扱うトピックを決める、どういう用法を重点的に使いたいかを決めるなど、目的や目標を持ってレッスンに臨むようにしてください。そうすることで、気づきや仮説検証の機能も、より生きてくるのではないでしょうか。

【結論】オンライン英会話スクールは “リスニングとリーディングを充分に訓練してから” 通うべし。

オンライン英会話スクールは “リスニングとリーディングを充分に訓練してから” 通うべし

Q. 英語学習に限らず、勉強は「続ける」のが大事です。でも、モチベーションが湧かなったりやる気が起きなかったりして、なかなか続きません。続けるためのアドバイスがあれば教えてください。

A.
何かを続けるにあたっては、「モチベーションややる気に頼らなくても済むような “仕組み” を作るべき」というのが結論です。

例えば、私たちが毎日当たり前にやっている歯磨きに、モチベーションややる気なんて要りませんよね。家の中に洗面台があって、そこに歯磨きセットが置かれている——習慣化するための仕組みができているからこそ、習慣となって毎日続けられるのです。これが、500メートル離れた井戸まで行かないと歯磨きできないというのであれば、だんだん面倒になって結局は続かないでしょう(笑)。

ENGLISH COMPANYの受講生で、過去にこういう方がいらっしゃいました。仕事や育児で非常に忙しく、誰にも邪魔されずひとりになれるのは唯一お風呂のときだけ。そこで、トレーナーがジップロックにプリント教材を入れて「これで音読してください」と提案した。ただし、それだけだと少し弱いので、上質な入浴剤と一緒にお渡ししたのです。入浴剤を入れるからには、できるだけ長時間お風呂に入っていたくなるものですよね。結果、音読の時間もどんどん長くなり、いつのまにかお風呂での音読が習慣化しました(『10年ぶり英語への挑戦で、TOEIC895点。秘訣は「毎日続けること」への科学的アプローチ』参照)。

これは、習慣化の学問「行動科学」の観点からアプローチして成功した良例です。行動科学では、“朝起きたら単語帳を1ページだけ見る” など簡単なことから始めたり、続けやすい仕組みをデザインしたりすることが、習慣化のうえで大事だとされています。モチベーション云々ではなく、行動科学を取り入れていくのが有効なのではないでしょうか。

【結論】続けるためにモチベーションは要らない。毎日続けられる “仕組み” を作ろう。

***
世の中に蔓延する間違った情報に流されず、本当に正しい方法で効率よく英語学習を進めていきたいものですね。



あわせて読みたい
英語はどうすればできる? みんなの質問を集めて、 英語はどうすればできる? みんなの質問を集めて、 "英語のプロトレーナー"にぶつけてみた。 第1回 英語はどうすればできる? みんなの質問を集めて、 英語はどうすればできる? みんなの質問を集めて、 "英語のプロトレーナー"にぶつけてみた。 第2回 やみくもに話しても英語は話せるようにならない。「体系的」な学習が勝負を分ける やみくもに話しても英語は話せるようにならない。「体系的」な学習が勝負を分ける