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「be made of」と「be made from」の違いが一目瞭然。前置詞 of の根本的な意味

前置詞ofの根本的な意味

こんにちは、英語パーソナルジム「ENGLISH COMPANY」の英語職人・時吉秀弥です。



前回の「will の意味は『未来』じゃない!? その正体は『心が○○すること』」では「will は未来という意味ではない」というお話をしました。will にはたくさんの意味があるのですが、しかし、全く無関係な意味が理由もなく一つの単語に同居しているわけでもない、ということがわかっていただけたと思います。この「意味の同居のシステム」を理解すると、英単語の意味をより本能的、直感的に捉えることができるようになり、リスニングやリーディングなどで、早い情報処理を必要とするときに大きな効果が手に入ります。

ではそもそも、一つの単語にたくさんの意味がある、というのはどのような単語によく起きるのでしょうか?

※この連載は2017年に実施しました

単純な単語こそ使い道が多い

例えば、「テニスラケット」と「一本の棒」を思い浮かべて比べてみてください。テニスラケットというのは、テニスにしか使われないでしょうし、応用的に使うとしても、せいぜい布団叩きの代わりに使うくらいしか私には思い浮かびません。ところが、棒はそれを使って、叩くことも突き刺すことも、地面に字を書くことも、背中のかゆいところをかくことも、つっかえ棒にすることも、杖として使うこともできます。つまり、単純なものであるほど、その使い道は広がるのです。

人間の言語にも同じことが起きます。単純で基本的な単語であるほど、様々な意味を持つようになるのです。

一つの単語に色々意味がありすぎて、その単語の言いたいことがわからない、というのはどの外国語を勉強していても起きることですが、英語では前置詞がその代表です。今回は of という前置詞について考えてみましょう。

英語を学習すればするほど、of というのは「~の」という意味だけでは捉えきれないなぁ、と感じた経験を皆さんもお持ちだと思います。気の利いた辞書を引けば、of の語源は「分離」だと述べられていることがよくあります。それではその「分離」から「~の」をはじめとする様々な意味がどうやって出てきたのでしょうか? その謎解きを通して「ofって結局こういうことが言いたい単語なのか!」ということを感じてもらいたいと思います。

「取り出す」感覚を持つ of

of は「分離」が語源なのですが、of の根っこの部分には「取り出す」感覚がある、と私は考えています。例えば、a piece of cake では「ケーキ全体から、そこに所属する一切れを取り出す」感じが「一切れのケーキ」という感覚を生み出しています。

a piece of cake
Most of the money was spent on the reconstruction of the disaster-hit areas. 「そのお金のほとんどは被災地の復興に充てられた。」

→ 「そのお金」から「ほとんどの部分」を取り出す感じ。

この感覚は、of におなじみの「~の」、つまり「所属」の感覚につながります。

He is a student of the school. 「彼はその学校の生徒です。」

→ 学校からそこに所属する生徒を1人取り出して、見せる感じ。

a student of the school

そしてまた、of の「全体から構成要素の一部を取り出す」という感覚から、「一部分」を強く表す感覚も出てきます。私はこれを「チラリの of」と呼んでいます。

I was thinking about my future. 「将来のことを色々と考えていたんだ。」
I was thinking of you. 「君のことが心に浮かんでたんだ。」

about は「周辺」が元々の意味ですから、think about なら、あることに関してその周りをぐるぐると「ああでもないこうでもない」と思いを巡らせる感じです(ちなみに worry や concern 、anxious など、「心配」を表す言葉には必ず about がセットでついてきます)。これに対して、think of は断片的なイメージがチラチラと心に浮かんで出てくる感じです。

think aboutのイメージ
We spoke about the incident. 「我々はその事件について色々話した。」
He spoke of the incident. 「彼はその事件のことを口にした。」

speak about が「ある話題にまつわるいろいろな話をする」感じがあるのに対して、speak of は「全体ではなく、その一部を取り出す」感じですから、「チラリと軽く言及する」という感じがします。

speak aboutのイメージ
speak ofのイメージ

原因の of」なんていうのもあります。これは熟語で die of ~「~で死ぬ」というのを覚えておけばいいでしょう。

My father died of cancer. 「私の父は癌で亡くなった。」

→ 「癌」から「死」が出てくる感じです。

「be made of」と「be made from」の違い

次にみなさんおなじみのフレーズ。be made of ~ で「~でできている」という意味ですね。「パッと見て材料がわかるものは be made of 、パッと見ただけでは何でできているのかわからないのが be made from 」と習ったことがある人は多いはずです。この of と from の違いは何なのでしょう?

This desk is made of wood. 「この机は木でできている。」

→ 木から机がそのまま取り出される感じ。だから、パッとみてその机が木でできていることがわかる。

be made ofのイメージ
Paper is made from wood. 「紙は木でできている。」

→ from の根っこの感覚は「離れている」ということ(例えば「駅から5分」と言えば、駅から徒歩5分の距離だけ「離れている」ことを意味する)。したがって be made from では「見た目の距離感」、つまり製品が原料の元の形をとどめていない、ということを表している。

be made fromのイメージ

「~の」にも「取り出す」感覚がひそんでいる

次に、一見日本語の「の」と単純に合致しているように見えるのだけど、実はそこに「取り出している」感覚が息づいている of を見てみましょう。

the rise of the sun 「日の出」

→ 「太陽」に関するいろんな情景の中から、今回は「上昇」のシーンを取り出して話しているよ、という感じ。

the love of a mother 「母の愛」

→ 「母」が持つ様々な要素や性質の中から、今回は「愛」の部分を取り出して話しているよ、という感じ。

中学で習う最上級の表現に出る of も同じ感じです。

He is the tallest of the three. 「彼は3人の中で一番背が高い。」

→ 一番背の高い人を3人の中から取り出している。

tallest of the threeのイメージ

やっぱり「取り出す感覚」が of の根っこに強く感じられますね。

人の中からにじみ出てくる感覚を持つ of

最後に、高校でこんなの勉強しますよね。仮主語の文での for と of の使い分け。

It’s hard for me to finish this homework tonight. 「今夜宿題を終わらせてしまうのは(私には)難しい。」
It’s kind of you to show me the way. 「道案内していただいて、ありがとうございます。」(直訳:道案内をしてくれるのは、あなたの親切なところが出てきているということですね。/ 道案内をしてくれるなんて、あなたって親切ですね。)

for を使っている場合は、「他の人は知らないけど、私にとっては~だ」ということを表しています。もし It’s hard to finish this homework tonight. のように for me がないときは、「誰にとってもそうだ」という風に一般的な話をしているということになります。一方で It’s kind of you は you から kind な部分が取り出されているわけですから、「あなたの中から、あなたが性格として持っている kind なところが出てきていますね」ということが表されています。「It is ~ of + 人」の構文では「~」の部分には「人からにじみ出てくる、性質、性格」を表される形容詞が使われるのです。

***
今回は単純で抽象的な意味を持つ言葉ほど、たくさんの意味を派生させる、ということを of を使ってお見せしました。「一つの単語に一つの意味があるだけの方が簡単なのになぁ」と思う方もいるでしょうが、そうすると何か新しい表現を思いつくたびに、これまで聞いたことのない新しい言葉を作らないといけなくなります。聞いたことのない言葉を話されても当然聞き手は理解しませんから、そんな言葉は滅多に生き残ることはありません。

実は「すでに存在する言葉の使いかたを工夫して新しい意味を生み出す」のが人間の知恵のようです。例えば若者の流行り言葉も全く新しい単語を生み出すことはほとんどありません。すでに存在している単語の意味や使い方を少し変えて、新しい表現を生み出す、というのが実際ですよね。このような人間の知恵のせいで、一つの単語にたくさんの意味が同居するという現象が生まれているのです。



→連載第11回「must と have to は同じじゃない! アメリカ人が have to を5倍も多く使うワケ」

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