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英語の “させる系動詞” の謎。surprise はなぜ「驚く」ではなく「驚かせる」なのか?

surprise はなぜ「驚く」ではなく「驚かせる」なのか

みなさんこんにちは。英語パーソナルジム「ENGLISH COMPANY」の英語職人・時吉秀弥です。



日本語と、英語を含むヨーロッパ語は、同じように世界を見る場合も多いのですが、違う見方をするときもあります。ここで質問なのですが、皆さんにとって、日本語では「驚く」がデフォルト(=より基本的な表現)ですか? それとも「驚かせる」がデフォルトですか?

※この連載は2017年に実施しました

「する」ではなくて「させる」になるのはなぜ?

eat が「食べる」で、swim が「泳ぐ」であるように、英語も「~させる」系ではなく「~する」系の動詞が多数派です。ところが、ある一群の動詞だけが「~させる」をデフォルトとするのです。例えば satisfy「満足させる」、disappoint「がっかりさせる」、please「喜ばせる」、excite「興奮させる」、interest「興味を持たせる」、bore「退屈させる」、tire「疲れさせる」などです。

学校などでは「感情を表す系統の動詞は『~させる』となるからね」と習うことも多いようです。しかし、例えば実際には delay は「遅れる」ではなく「遅らせる」で、感情とは関係ない動詞でも「する」ではなく「させる」を意味することがあります。

なんでこんなことが起きるのかがわからないと、しっくりこないというか、直感的に使いこなすことができませんよね。特にこういった動詞は ~ing や過去分詞にして形容詞として使うことが多いのですが、これがTOEICをはじめとする語学試験の文法問題で最頻出なのです。日本人の直感にしっくりこないので、間違いやすいパートです。

試しに下の問題を解いてみてください。そんなに難しいものではありません。ただし、例えば TOEIC L&R の文法問題などでは1問にかけることのできる時間が5~10秒です。下の問題を一瞬で解けますか?

例:He saw( exciting,  excited,  excite )people marching on the street.

正解は excited です。exciting ではありません。「彼はエキサイトした人々が通りをデモ行進しているのを目にした。」という意味の文です。時間がない状態で取り組むと、うっかり exciting にしてしまう人もけっこういると思います。でも「時間さえあればできるのに」ではダメなんです。最終的には、スピーキングという「瞬間的に判断して口から言葉を出す」という作業で通用するレベルにならないといけないからです。

こうなると、この「させる系」の動詞、単語ひとつひとつの意味を頭に入れておきつつも、「だいたいこういう感じなら『させる系』の動詞だよね」と直感できる感覚を持っておくことが、速くて正確な判断には不可欠となりそうです。

どんな気持ちが働くと、「させる系」の動詞になる?

お待たせしました。ではさっそく、どういう動詞が「させる系」で、どういう動詞がそうではないのか、一緒に考えてみましょう。「させる系」の動詞にはある共通の特徴があります。ちょっと皆さん自分で実験をしてみてください。では行きますよ。

ワン、ツー、スリー、はい、驚いて!

……無理ですよね。

ワン、ツー、スリー、はい、退屈して!

……やっぱり自然ではないですよね。

じゃあ、満足して!

……当然無理。

なぜこうなると思います?

それは「原因」が存在していないからです。原因もないのに「よ~し、じゃあ今からひとつ驚いてみるか!」なんて無理です。「じゃあ、ちょっと退屈でもしてみるか……。」も不自然ですし、「今から私、がっかりするね!」というのも無理ですね。

「じゃあ、ちょっと退屈でもしてみるか」は無理

ヨーロッパ語を話す人間から見ると、原因があなたを驚かせるからあなたは驚くのだし、原因があなたを退屈させるから、興奮させるから、あなたは退屈したり興奮したりわけです。この発想が surprise =「驚かせる」や bore =「退屈させる」、excite =「興奮させる」をデフォルトにさせるのです。

これは感情を表す言葉だけではなくて、すでに挙げた delay(「遅らせる」)もそうです。電車は自ら望んで遅れるわけではなく、原因のせいで仕方なく遅れる、というほうが自然です。そこで「原因が電車を遅らせる」という発想になるのです。

第2回コラム「日本人が “英語っぽい” 英文を書けないのは「これ」に目を向けていないから」でもお話した通り、英語を含むヨーロッパ語は「自分を外から眺める」言語です。その結果、俯瞰で状況を見るので、自分と、自分の外側にあって自分に作用を及ぼす原因の両方を視野に入れるのです。ですから日本語と違って、英語は「原因」を主語にすることに躊躇しません。

~ing と過去分詞の使い分け

この「させる系」の動詞でみなさんが試験の際にクリアしなければいけない課題は、これらの動詞を ~ing をつけたり過去分詞の形にしたりして、形容詞として使うときに発生します。どういうときに ~ing で使い、どういうときに過去分詞で使うか、が皆さんの課題になるのです。そこで今回はそれを一緒に練習してみましょう。

原因が主役なら ~ing 、影響を受ける立場の人が主役なら過去分詞

イラストにある通り、原因が主役(=主語)なら ~ing 、影響を受ける立場の人が主役(=主語)なら過去分詞です。「テストの結果」はあなたになんらかの感情を引き起こす原因です(=する立場)。そしてあなたは原因によって感情を引き起こされる立場です(=される立場)。する立場なら ~ing を使い、される立場なら過去分詞を使います。まずは基本的な A is B. の形で見ていきましょう。

The results of the exam was( surprising,  surprised )to me. 「テストの結果は私にとって驚きだった。」

→原因である「テストの結果」が主役(=主語)ですから、surprising です。

I was( surprising,  surprised )at the results of the exam. 「私はテストの結果に驚いた。」

→私はテストの結果に「驚かされている」ので surprised です。

His proposals were( interesting,  interested )to the management. 「彼の提案は経営陣にとって興味深いものであった。」

→ interest は「(原因が人の)興味をそそる」「(原因が人に)興味を持たせる」です。自分から「よーし、今から自然科学に興味を持つぞぉ」というのは不自然だからです。魅力的な原因が人の興味を引く方が自然ですよね。だから interest は「興味を持たせる」です。his proposals は経営陣に興味を持たせる原因なので、正解は interesting です。

The management was( interesting,  interested )in his proposals. 「経営陣は彼の提案に興味を持った。」

→経営陣は彼の提案によって興味を引き起こされる立場ですから interested が正解です。

次はmakeを使った使役構文です。

What he said made me( disappointing,  disappointed ). 「彼の言ったことを聞いて私はがっかりした。」

→使役構文は「原因 make A = B」(原因が A = B の形を作る)という構造です。この構文ではAの立場がBの形を決めます(要するに A is B と同じイメージです)。me は原因によってがっかりさせられる立場ですから、「私=がっかりさせられる」、つまり disappointed が正解です。disappoint は「がっかりさせる」という意味の動詞です。

The solution made us feel( satisfying,  satisfied ). 「その解決案に、我々は満足した。」

→直訳すると「その解決案が、私たち=満足を感じる、という状態を作った。」です。satisfy は「原因が人を満足させる」という意味の動詞です。us は解決案という原因によって「満足させられた」気分になるので、satisfied が正解です。

***
ここまで、~ing と過去分詞の使い分け方を説明しました。

「なんとなくわかったけど、まだ使いこなすには……」という感想をお持ちの方もいるかもしれません。でもご心配なく。やり方がわかれば、あとは数をこなしていくことで問題は解決できます。過去問や問題集で、問題数をこなしていってください。初めて自転車に乗るときのように、最初は頭で考えてコツをつかみ、あとは繰り返すことで無意識に判断ができるようになります。そして、つかむべきコツは、ヨーロッパ語独特の「原因があなたにこんな気持ちを起こさせる」という発想なのです。



→連載第13回「『はい』と言いたいのに No? 『いいえ』でも Yes? 正しく Yes / No を使い分ける3ステップ」

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