前の as と後ろの as はどう違う? 理屈でとらえる「as ~ as」の比較の文
みなさんこんにちは、英語パーソナルジム「ENGLISH COMPANY」の英語職人・時吉秀弥です。今回は、一見ややこしい as ~ as の構文を簡単に、そして確実に作る方法をお伝えします。
※この連載は2017年に実施しました
as ~ asはなんだか難しい……
as ~ as をはじめとする「比較」の文を苦手とする英語学習者は多いと思います。なぜなら、文が長くなるからです。そしてなぜ長くなるのかというと、ひとつの文の中に「比較するもの」と「比較されるもの」というふうに、ふたつも情報を入れなければならないから。そのため、こういう文をいっぺんに作ろうとすると必ず頭が混乱します。でも、小さな部分をひとつずつ順番につけ足していくようにすると、割と楽に、そして正確に作れるんです。
as ~ as の文を習うときに、ほとんどの方は「as ~ as …」=「…と同じくらい~だ」というふうに習っていると思います。このときに、as ~ as の文が苦手になるひとつの原因が発生するのです。それは「as ~ as …」が「ひとつのセットなんだ」と思いこんでしまうこと。もうちょっと正確にいえば、1回目の as と2回目の as がそれぞれ何をやっているのかをあまり考えずに、とにかく「as ~ as …」というかたまりだけで考えてしまう、ということです。逆に言えば、「1回目の as の役割と2回目の as の役割をそれぞれきちんと理解すれば、文が長くなっても、きちんと組み立てられる」ということなんです。
比較の文は「普通の文」から考える
as ~ asの文の作り方を説明します。冒頭で、「比較の文はいっぺんに作ろうとすると頭が混乱する」と述べました。スタートはいつも単純であることが大切です。
例えば、これくらい単純な文を作ってみましょう。
【1】では、この文の中で「様子」を表している言葉を探しましょう。he と English は人や物の名前ですから名詞です。speaks は「話す」という動作を表していますから動詞。well はどんなふうに英語を話すのか、speaks の様子を説明しています。つまり、well が様子を表す言葉です。
【2】さて、様子を表す言葉が見つかったら、その前に「1回目のas」をつけましょう。
このように、1回目の as は様子を表す言葉の前につき、「同じくらい~」という意味を持ちます。
【3】次に、「彼は同じくらい英語を話すのがうまい」と聞けば、「え? 誰と同じくらい?」という気持ちがわいてきます。英語は結論になるような骨組みの情報(軽い情報)が先にやってきて、それを補足する詳しい情報(重い情報)は後に来ますから、「誰と同じくらい、うまく」なのかを説明するための重い情報は、2回目の as を使ってこの後につけます。では、つけてみましょう。
これでわかる通り、2回目の as の意味は「基準」です。「誰を基準に考えて同じくらいうまいのか」を表しています。as の後ろの our teacher does は our teacher speaks English がもとの形です。なぜもとの形がそのような形になるのかといえば、比較には、「比べるものと比べられるものは同じ形になる」という重要なルールがあるからです。
Our teacher speaks English.
同じ構文の形をしていますね。このふたつの事柄を比べているのです。
Our teacher speaks English. がなぜ our teacher does という組みこまれ方をしているのかを説明します。He speaks English. の中にすでに speaks が出ているので、繰り返しを避けるために代動詞 does で言い換えています。そして、English も繰り返されるので省略されています。does も省略して our teacher だけでも間違いではないのですが、our teacher does というふうに S + V の形をはっきり見せたほうが聞き手がわかりやすいので、does を残すほうがより一般的です。
「2回目のas」をどこに置くか、の意識
ここで大事なポイントがありますので、よく覚えておいてください。as ~ as の文を作るとき、2回目の as は「文末」につける、という意識を持ってください。なぜこんなことを強調するのかというと、以下のような間違いがよく起きるからです。
どこがおかしいかわかりますか? そうです。2回目のasの位置ですね。中学で習う as ~ as の基本例文が、
He can swim as fast as Jeff.
というようなパターンが多いせいで、知らず知らずのうちに「as 形容詞 as」「as 副詞 as」という語順に慣れてしまっているのです。ですから上記の問題文でも、“何も考えずに” as much as money とやってしまう人がかなりいるのです。そこで、今回覚えた文の作り方をもう一度試してみてください。まずは I make much money.(※)という基本の文を思い浮かべて、それから、
とまでやったら、2回目の as はどこに置くんでしたっけ? そう、「文末」です。ですから money の後に as が来なくてはいけません。
となるのです。
※正確に言えば、この I make much money. という文は不自然な文です。なぜなら、肯定文で so も as も too もつけずに much を「裸」で使うのは自然ではないとされるからです。本来なら much の代わりに I make a lot of money. とするところなのですが、今回は as ~ as 構文を説明する便宜上、このようになりました。
「as ~ as の間が長い」文の読み方
それでは最後に as と as の間が長い文の読み方を確認しましょう。受験問題をはじめ、少しレベルの高い英語の文章になると、こういうパターンが出てきます。
as と as の間にこれだけたくさんの言葉が挟まっています。これを「後ろから訳しあげる」なんてことをしていては、いつまで経っても自由に英文など読めるようにはなりません。先ほど習得した as ~ as の「それぞれの as の意味」を意識しながら順々に前から読んでいきましょう。前から英文を読んでいくコツは、区切りの良いところで自問自答しながら読んでいくことです。
【1】There are 「いますよ」(何が?)
【2】There are as many and various … 「同じくらいたくさん、そして様々な~がいますよ」(同じくらいたくさん、様々な、何がいるの?)→ 1回目の as は「同じくらい~」
【3】There are as many and various wild animals 「同じくらいたくさん、そして様々な野生動物がいますよ」
【4】There are as many and various wild animals around … 「同じくらいたくさん、そして様々な野生動物が~のあたりにいますよ。」(どのあたり?)
【5】There are as many and various wild animals around here 「同じくらいたくさん、そして様々な野生動物がこのあたりにいますよ。」(何と同じくらいたくさん?)
【6】There are as many and various wild animals around here as ten years ago. 「10年前と同じくらいたくさん、そして様々な野生動物がこのあたりにいますよ。」→ 2回目の as は文末につけ、何と同じくらいなのかの基準を表す。
この文も、
という基本の文を as ~ as 構文で拡張したものなのです。