英語で「〜倍」の言い方は……。英語と○○の語順は同じ!?
みなさんこんにちは、英語パーソナルジム「ENGLISH COMPANY」の英語職人・時吉秀弥です。
今回も「比較」のお話をします。英文法の中で、比較というのは「試験に出る英文法」として覚える項目が格段に多いところで、英語学習者を悩ませるところです。今回は「比較」で役に立つ知識を2つ、ご紹介しましょう。
※この連載は2017年に実施しました
【その1】比較級の強調ではなぜ very が使えないのか
まずは1つめの知識。比較級のところで必ず出てくるルールに、「比較級の強調は very ではなく much を使う」というのがあります。
はオーケーなのに、
の very はダメです。
が正しい表現。 こういうルールはなぜ起きるのでしょう?「言葉の本当の意味を知る」ことでこの謎が解けます。
very という言葉の正体
veryという言葉が「とても」という意味だというのは、日本の小学生でも知っているような知識に思えます。しかし、もし本当に「とても」という強調が very の正体なら、very taller という表現はなぜ不自然なのか、一見説明がつきません。そして、
というふうに「 the very 名詞」で出てくる「まさにその」という意味がなぜ発生するのかも説明がつかないことになります。
very は英語にとって、とても基本的な単語なので、英語固有の言葉のように思われがちですが、実は古代ローマ帝国の言語であったラテン語の verus(真実)という単語に起源を持ちます。この語源の感覚はそこから派生したイタリア語の verità(真実)にも生きていますし(例:映画「ローマの休日」に出てきた石像 Bocca della Verità(真実の口))、英語の verify(真実であることを証明する)という動詞にもその意味が生き残っています。
「the very 名詞」で出てくる「まさにその」という意味は、この「真実」という意味から出てきているものです。そして副詞の very は元々は「とても」というよりは「本当に」という感覚で強調を行なうと考えるほうが妥当な言葉なのです。
これが、比較級になったときに He is very taller. という表現を許さない理由となります。なぜだかわかりますか?
例えば He is taller than I. という比較級の文を強調したいとき、それは「彼を私と比較した結果、身長の差がすごく大きい」ということを意味することになります。つまり比較を強調するときには差の量を強調することになるため、「真実」を意味する very ではなく、「差の量がたくさんある」を意味する much が必要になってくるのです。だから much taller です。
身長の差は「いくつ差がある」ではなく、「いくら差がある」の世界です。つまり「数」ではなく「量」、「可算」ではなく「不可算の世界」です。「数が多い」は many、「量が多い」は much で表されます。差の量が多いことを表すのに much が使われるのはこういう理由です。
では、比べている差が「数えられる」場合ならどうなるでしょう?例えば、彼が私よりずっとたくさん本を持っているとして、その本の冊数の差は数えられます。量ではなく「数の差が大きい」場合は、そうです、many を使います。
→ He has many more books than I do.
「彼は私よりずっとたくさんの本を持っている。」
また、much の代わりに far が使われることがよくあります。far は「遠い」ということですから、「はるか先を行っている」という意味で、両者の差が大きいことを表しているのですね。
【その2】倍数表現:数式の並び方と英語の並び方は同じ
それでは2つめの知識です。「数式の並び方と英語の並び方は同じ」です。それがわかると、以下の問題が楽に解けるようになります。「~倍」を表す、いわゆる「倍数表現」の問題です。
He makes ( ) as I do.
1. twice much money as 2. much as twice money
3. twice as much money 4. as much money twice
正解:3
数学の「文字式」を思い出してください。例えば a×b という掛け算のとき、「×」は省略して ab と記述することができましたよね。これと同じことが英語にも起きます。
つまり、ab が a×b を意味するのと同じように、掛け算している場合、英語では言葉を横に並べるだけでOKなのです。
ついでに a+b の場合もご紹介しましょう。足し算の場合、確か「+」は省略できませんでしたよね。これと同じことが英語にも起きます。
「+」を意味する言葉である and がきちんと現れるわけです。
これは偶然ではなく必然だと私は考えています。なぜなら数式というのは数字を使ってこの世の現象を説明する、一種の言語だからです。数式が一種の言語なら、その数式を開発した人たちの言語の影響を必ず受けます。我々が中学以降に学習する方程式以降の数学は、古代ギリシャで生まれ、ヨーロッパで発展しています。したがってヨーロッパ語をもとにして作られているわけです。ヨーロッパ語の1つである英語の語順が数式と同じになるのにはこのためだと、私は考えています。
倍数表現を攻略するステップ
さて、a×b = ab という「掛け算は横並び」の知識を使えば、ややこしい倍数表現は簡単に攻略できます。例えば先ほどの「彼は私の倍お金を稼いでいる。」なら、
「彼は稼いでいるよ、『2 × 同じくらいたくさんのお金』を。」
と考えればよいのです。前回やった通り、比較の文は単純な文から始めます。
から始めましょう。1回目の as は「様子を表す言葉」の前につけるんでしたね。この中で様子を表す言葉(つまり、形容詞か副詞)は、「どれくらいの量のお金なのか」、つまり money という名詞の様子を説明する形容詞、much です。したがって、
となります。これを、
としてやればいいわけです。したがって「2倍」を表す twice を横並びにつけて、
とすればよいことがわかります。さらに「誰と比べてなのか」という基準は文末につけるのでしたから、
となるわけです。ちなみに I do の do は前にある makes を指す代動詞です。
比較級の文も同じことです。比較級の前に、倍数である two times、three times、four times……をつければよいだけです。
→ He makes 3×[more money] than I do.
→ He makes three times more money than I do.
「彼は私の3倍お金を稼いでいる。」
「2倍」を意味する twice の使い方には注意点があります。as ~ as 構文、つまり原級で使うときは twice ですが、比較級と一緒に使うときには two times を使うことが一般的です。
○ He makes two times more money than I do.
→連載第18回「other, the other, another の違いとは? イメージで理解すれば、使い分けはとっても簡単」