someの意味は「いくつかの」じゃない!? じつは英語話者は “こんな気持ち” で some を使う

みなさんこんにちは。英語職人・時吉秀弥です。今回は、英語学習者がわかっているようでわかっていない、some のお話をしましょう。
※この連載は2017年に実施しました
そもそも「訳しても訳さなくてもいい言葉」を、なぜ英語では使うの?
some は中学で習う単語です。「いくつかの」と訳されるのですが、「わざわざ日本語に訳さないことのほうが多い」と習います。some は肯定文で、any は否定文で使われる、と習います。
some をうまく使いこなせる日本人の英語学習者はあまりいません。みなさんの中でも、多くの方が「なんかピンとこない」という気持ちを持っていらっしゃるのではないでしょうか。
その原因のひとつが、先ほど述べた「わざわざ日本語に訳さなくてもいい」というところだと思われます。言葉というのは必要だから使うのであって、あってもなくてもいい感覚のものなら、当然使う気になれません。しかし英語話者にとってみれば、当然「使う必要がある」と思って some を使っているわけです。
英語では言語化される気持ち、つまり意識のスポットライトが向けられる部分が、日本語では向けられることがなく、だから言語化されない、というわけです。
この連載で何度も述べてきたように、英語と日本語では(どんな言語でもそうですが)、単純に言葉が違うだけではなく、世界の捉え方、つまり自分の身の回りにある現象のどこに注意を向けるか、が違っているのですね。
some の気持ち
それではどんな気持ちが英語話者に some を使わせているのかを見ていきましょう。
some の根っこのイメージは「適当に柄杓(ひしゃく)ですくって、取り出す」ということです。まぁ別に柄杓でなくても、手でも何でもかまわないのですが……。

ここから出てくる some の主要な意味としては、
- 「取り出すことにより、出てきて、存在する」
- 「全体ではなく、一部を取り出す」
- 「ランダムに、適当な量とか数を、取り出している」
- 「柄杓なので、液体(数えられない名詞)もすくえるし、個体(数えられる名詞)もすくえる」
というのがあります。それぞれの項目について詳しく見ていきましょう。
1. 存在の some:「概念」と「実物」の違い
1では、some の「存在」の意味に注目していきます。
みなさん、I like apples. と I have some apples. という2つの文を比べてみてください。好きな果物を聞かれて「りんごが好きです。」というときに、I like apples. は自然でも、I like some apples. は不自然です。なぜでしょう? 鍵となるのは「概念」と「実物」の違いです。
まずは概念から。a も the も some も何もつかないで、ただ複数形になっている名詞は「概念」です。「好きな果物は?」と聞かれて、みなさんが頭の中で果物の中のいろんなカテゴリーを検索し、「りんご」というカテゴリーを思い浮かべる、これが「りんごという概念」です。
英語の世界では「りんごはこの世に無数に存在するもの」ですから、複数の、というか無数のりんごを思い浮かべます。したがって概念を表す可算名詞は複数形になります。an apple ではなく、apples になるほうが自然なのです。というわけで、「私はりんごが好きです。」というとき、それは「りんごと呼ばれるもの全般が好き」を意味するので、
という表現になります。
では、「何か果物持ってる?」とか「何か食べ物持ってる?」とか聞かれて、「りんご持ってますよ。」と答えるケースを想像してみてください。この場合、りんごは「概念」ではなく「実物」です。
some は「取り出す」というイメージを持ちますが、これはちょうど箱から適当に何個かを取り出し、そこに置いてみせる、つまり、存在させてみせる感覚を意味します(ちなみに1個取り出すのは a / an です)。さらには、「りんご持ってますよ。」と言うときに、わざわざ正確に「2個持ってるよ」「5個持ってるよ」と答える気が起きないときというのは多々あるはずです。適当に何個かという気持ちになるはずです。
そこで「この話はりんごという概念の話じゃなくて、適当に何個か実際にりんごが存在していることを言いたいんだよ」という気持ちが働く結果、
という文が生まれるのです。
2.「一部」を表すsome
イラストにある通り、some は全体から一部をすくい上げて取り出すイメージを持つ言葉です。そのため、「一部の」という意味が出てきます。
「中には政府を支持している学生もいるが、そうではない者もいる。」
第18回『other, the other, another の違いとは? イメージで理解すれば、使い分けはとっても簡単』でご紹介した通り、others は「2回目の some 」で、1回目に適当にすくって取り出した学生が some students 、そしてその後にもう一度同じように適当にすくって取り出した学生が others(もしくは other students とも言えます)です。全体の中から適当にすくって一部を取り出して、「ほら、こういうのもいるよ」と言っているわけで、「あくまで一部であって、全体ではないよ」ということを some が表せるわけです。

3.「適当さ」のsome
some は「適当に取り出す」ことですから、sometime「ある程度の期間」、somewhere「どこか」、someone「誰か」、sometimes「時々」など、「適当」「あいまい」を意味する言葉に応用されます。
someone が出たついでに、somebody も説明しておきましょう。somebody は「ひとかどの人物」「名のある人」と訳されるときが多くあります。これは some の持つ「存在している」という意味がクローズアップされ、「存在感がある人=いっぱしの人」という意味が出るためです。
「彼はこの業界ではちょっとした人物だよ。」
4.「加算名詞でも不可算名詞でも使える」some
イラストにある通り、some の柄杓は水でもボールでもすくうことができます。ですから可算名詞にも不可算名詞にもつけることができます。
一方で、「いくつかの」を意味する several という言葉があります。some がぼやけていることを意味の中心としているのに対し、several は「はっきりと輪郭が見えるものが数個」という感覚があり、そのため、可算名詞にしか使われません。つまり、例えば some water とは言えても、several water とは言えないのです。

「some は肯定文に使う」は本当なのか?
さて最後に、中学で習う知識に誤解を招くものがあるので、そこを解説しておきます。中学では「some は肯定文に使い、疑問文や否定文では any を使う」と習います。しかし、以下の文は some を否定文で使っていますが、ごく自然な英文です。
「その教授がなぜその概念の重要性を力説するのか、理解できない学生もいた。」
上記の文が否定文であるにもかかわらず some を使っている理由を説明できますか?
some は「存在していること」を表す言葉です。上の文は「理解していない学生が存在していた」ことを表しています。ですから、否定文であろうと意味的には「存在していること」を表す文なので、some は当然使えるわけです。
一方で以下の文ではsomeは使えません。
「私はペンを持っていない。」
これはペンの存在を否定している文です。そうです。もうお気づきでしょう! some が使えない条件を正確に定義すると、
「ただの否定文ではなく、存在を否定する文において、some は使えない」
ということになるのです。
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some は単に「いくつかの」という和訳で捉えるのではなく、「適当に取り出して、存在させる」という感覚を持つことで、生きた言葉として使えるようになります。これから some が使われている文を見たら、今回の記事で述べた内容がどのようにその文の some に反映されているのか、観察してみるとさらに深くマスターできることになると思いますよ。ぜひ some の感覚をマスターして、もっと自然な英語を使えるようになってください!
→連載第25回「『any+単数形』と『any+複数形』の違いとは? any / one / an / a の語源を知ればよくわかる」