英語力アップに効く! 知られざる「aとthe」の本当の姿
”the” はいつも「その」と訳している。
「ほかの〜」と言いたいときは毎回 ”other” を使っている。
そんな方はいませんか?
簡単そうに見えて、じつはほとんど知られていない、a と the の意味とその違い。日本語ではどれも「ほかの、別の〜」と訳されるため難しい、another、other、the otherの使い分け。日本人が英語を使うとき、これらの誤用は多くみられます。しかし、些細なミスが大きな誤解を引き起こすことも。違いを正しく理解し、上手に使いこなすために、効果的な学習法はないのでしょうか?
そんなお悩みを解消すべく、英語ネイティブの文法感覚がわかる「認知文法」に基づいて、英語パーソナルジム「ENGLISH COMPANY」と一緒に学んでいきましょう。 これを読めば、初級者から上級者までを悩ませる「冠詞」や「ほかの〜」の英語表現をマスターできるはずですよ。
知られざる「a」と「the」の本当の姿
「a(an)」と「the」の違いは? そう聞かれたら、あなたはなんと答えますか?
a(an)は「1つの」、the は「その」でしょ? 簡単だよ! そう思われるかもしれませんが、このような表面的な暗記では、冠詞を使いこなすことはできません。
たとえば、the を使った以下の英文。
- The earth goes around the sun.(地球は太陽のまわりを回る)
- Call the cops!(警察を呼んで!)
これらの英語を日本語にするとき「その地球」「その太陽」「その警察」としたら不自然ですよね。冠詞の日本語訳だけに頼らず、語のもつ根源的な意味をしっかりと理解できているか、いま一度確認する必要がありそうです。
認知言語学を専門とする南山大学外国語学部の今井隆夫教授によると、「the」の基本イメージは「これしかない」。話し手と聞き手のあいだで、1つまたは1つのグループに決まるものに使います。上記の例「The earth(地球)」「the sun(太陽)」「the cops(組織としての警察)」も常識的に唯一無二の存在で、1つに特定できますね。
一方「a」は、話し手と聞き手のあいだで1つに決まらないもの、つまり前提として複数の対象が想定されるものにつくのだとか。もともと「a」の基本イメージは「複数のなかから1つをランダムに取り出す感覚」。たとえば、箱にたくさんのリンゴがあるとしましょう。どれでもいいので、箱のなかからリンゴを1つ取り出せば、それが「an apple」になります。
”Give me an apple.”(リンゴを1つちょうだい)という一文は、正確には「どれでもいいので1つリンゴをちょうだい」という意味。リンゴと呼ばれる果物の個体は世の中に無数に存在しますが、そのなかから無作為に1つ取り出す――これが「an apple」です。
【クイズ1】”結婚する理由”「aとthe」の違いは?
「a」と「the」のコアの意味がおわかりいただけたでしょうか。では、ここで復習クイズ。この2つの英文の違いはなんでしょう? どちらも直訳すると「結婚する理由は愛だ」とほぼ同じ文に見えますが、意味は大きく異なります。
- Love is a reason to get married.
- Love is the reason to get married.
わかりましたか? 違いは以下のとおり。
- 結婚する理由のひとつが「愛」である(たとえば「経済的安定」「心の拠り所」「親孝行」など結婚する理由は複数あるが、そのなかの1つを取り出すと「愛」である)
- 結婚する理由は「愛」である(「愛」以外に、ほかに結婚する理由はない)
1では「結婚する理由は複数あり、1つには決まらない」ことが含意されるのに対し、2では「結婚する理由は愛だけ」と1つに決まっていますね。
複数のなかからランダムに1つ取り出す、つまり見方を変えると ”取り出したもの以外にもある”「a」と、指しているもの以外にはない「the」。両者の違いはここにあります。
【クイズ2】ビジネスで成功したいならどっち?
冠詞のコアの意味を知ることは、英語力をグッと引き上げるのに大いに役立ちます。英語を読んだり聞いたりするときに理解が深まるのはもちろんのこと、英語を話したり書いたりするときにも有効。誤解を招くことなく自分の意図を相手に伝えるために、冠詞の正確な把握は不可欠です。
たとえば、仕事で新しいプロジェクトのリーダーを探していて、適任だと思う人が見つかった場合。相手になんとしても引き受けてほしいなら、「a」と「the」のどちらを使って説得するべきでしょう?
- I think you are a person for the position.
- I think you are the person for the position.
答えは2。どちらも訳すと「そのポジションに君が適任だ」と見えますが、示唆される意味は大きく異なります。
- 君は何人かいる適任者のひとりである(候補者は複数人いるが、そのなかのひとりを取り出してみると君である)
- そのポジションには君しかいない(君以外に、ほかに適任者はいない)
1の「a」では、「適任者はほかにもいる」ことが暗示されます。そのため「ほかにも適任者がいるならその人に頼んでよ」と断られてしまうかもしれません。相手にどうしてもその仕事を頼みたいなら、「君しかいない」ことを示す「the」を使うべきですね。
このように英語では、冠詞ひとつで文意が大きく変わってしまうことも。ミスコミュニケーションを防ぐためにも、基本的な冠詞のもつ意味を覚えておいて損はないでしょう。
「another」「other」「the other」の使い分け方
基本の冠詞「a」と「the」のコアの意味を学ぶメリットは、これではありません。両者の正確な理解は、「a」や「the」が含まれる多様な英語表現を使い分ける手助けにもなります。
たとえば、苦手とする日本人英語学習者が多い「another、other、the other」。東京言語研究所にて理論言語学賞を受賞した認知文法のプロであり、時短型英語ジム「StudyHacker ENGLISH COMPANY」でシニアリサーチャーとして活躍する ”英語職人” 時吉秀弥さんは、この3つの英語表現のポイントをこう表現しています。
- anotherは「an+other」
- other(s)は「2回目のsome」(someはaの複数形)
- the other(s)では「theに注目」
どういうことなのでしょう? 3つの違いについて詳しく解説している動画がありますので、ぜひご覧ください!
- some や a のイメージのポイントは抽選箱!?
- others は「2回目のsome」
- other(s) を必ず複数形で使わないといけないワケ
- some と others がペアになる理由
- another の意味は「おかわり」
- another+名詞複数形は例外じゃない!?
- the other とthe others の考え方と注意点
動画によるわかりやすい解説で、「another と other の違いがわからない」というお悩みを解決できるはずですよ。
YouTube「時吉秀弥のイングリッシュカンパニーch」では、ほかにも英語学習中のみなさんを応援するためのお役立ちコンテンツを数多くご用意しています。ぜひチャンネル登録をお願いします!
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日本語的な発想でとらえると違いがわかりにくい英語表現も、認知的なアプローチでネイティブの考え方に沿って学べばすっきりと理解できるはず。より自然に英語を使いこなすために、ぜひ認知文法を取り入れて学習を深化させていってくださいね。