英語学習者を悩ませる「可算名詞」「不可算名詞」の区別。“これ” を知れば正体がわかる!
「可算名詞と不可算名詞の区別は難しい」
「日本語では数えられる名詞が、英語だと不可算名詞になるのはなぜ? 」
そんなお悩みや疑問をもっていませんか。日本語では区別がない「可算名詞」と「不可算名詞」。どうしたら両者を区別できるのでしょうか。
その鍵は「認知文法」。ネイティブの文法感覚を知って可算名詞・不可算名詞を学ぶと、簡単に区別できるのです。英語パーソナルジム「ENGLISH COMPANY」が、認知文法のアプローチを使って、可算名詞・不可算名詞を見分けるコツをご紹介しましょう。
「数えられる名詞」「数えられない名詞」の本当の意味
みなさんは「可算名詞」「不可算名詞」をどのように学校で習いましたか。多くの人は、可算名詞は「数えられる名詞」、不可算名詞は「数えられない名詞」と習ったはず。たとえば、“pencil”「鉛筆」や “book”「本」などは数えられるから可算名詞、“water”「水」や “love”「愛」などは数えられないから不可算名詞、といった具合ですね。
では、以下の日本語を英語にするとどうなるでしょうか。
- 「紙1枚」
- 「氷1個」
- 「パン1枚」
- 「チョーク1本」
- 「チョコレート1枚」
日本語だと「1枚」「1個」などと数えられるため、それぞれ “a paper”、“an ice”、“a bread”、“a chalk”、“a chocolate” とイメージしたかもしれません。しかし、上記はすべて、英語では不可算名詞。よって、 “a” や “an” を名詞の前につけるのは誤りなのです。正解は以下のとおり。
- 「紙1枚」 a sheet of paper (× a paper)
- 「氷1個」 a piece/cube of ice (× an ice)
- 「パン1枚」 a slice of bread (× a bread)
- 「チョーク1本」 a piece/stick of chalk (× a chalk)
- 「チョコレート1枚」 a bar of chocolate (× a chocolate)
不可算名詞で「1枚」や「1個」と数量を表したいときは、上のように “a sheet of”、“a piece of” のような、形・単位・容器などを含んだ表現を使わなければなりません。
「日本語では数えられる名詞が、英語では数えられないのはなぜか」と疑問をもつのも無理はないでしょう。英語の世界では、「数えられる」に次の定義があるのです。
- 「数えられる」=これ以上形を崩したら、それと呼べなくなる形をもつ
- 「数えられない」=いくら分割しても「それ」は「それ」であり、これ以上崩してはいけない「形」をもっていない
みなさんが「数えられる」と覚えてきた「鉛筆」や「本」も、バラバラに形を崩したら「鉛筆」や「本」とは呼べませんよね。こうした名詞が「可算名詞」に相当します。
一方、「紙」や「氷」はいくらその形を崩しても「紙」や「氷」と呼べるもの。バラバラに形を崩しても、「それ」と呼べるものが「不可算名詞」に分類されます。
よって、英語の世界における「数えられる」は、「1個、2個……」と数え上げられることを意味しているわけではありません。可算名詞と不可算名詞の区別には、まず英語の世界の「数えられること」「数えられないこと」の視点を把握することが前提です。
可算名詞にも不可算名詞にもなりうる名詞
みなさんのなかには、可算名詞と不可算名詞をリスト化して覚えた経験がある人もいるはず。しかし、その覚え方は理にかなっていません。なぜなら、文脈によって可算名詞にも不可算名詞にもなれる名詞があるためです。いくつか例をご紹介しましょう。
まずは、 “apple”「リンゴ」。太字の “apple” の細かな意味の違いがどこにあるか、考えてみてください。
- I’ll peel an apple.
(リンゴを剥こう) - Does the fruit salad have apple in it?
(そのフルーツサラダにリンゴは入っていますか?)
1の “an apple”「リンゴ」は「形が崩れていない丸ごと1個のリンゴ」のこと。一方、2の “apple” は「食材としてのリンゴ」。食材としてバラバラに形が崩れているリンゴのとき、“an” をつけない不可算名詞になります。
今度は、“egg”「卵」で比較しましょう。「卵がシャツについている」と言いたいとき、正しいのは1と2のどちらでしょうか。
- You’ve got an egg on your shirt.
- You’ve got egg on your shirt.
正解は2。「“egg” は数えられるので、可算名詞のはず」とイメージしたかもしれませんね。しかし2のように、“egg” が「卵のシミ、卵液」を指すときは、不可算名詞になるのです。形が崩れても「卵のシミ、卵液」と呼ぶことはできますよね。1の “an egg” は「形が崩れていない1個の卵」のこと。1は「割れていない丸ごと1個の卵がシャツにくっついている」ことを含意します。
最後に、“hair”「髪」で比較してみましょう。下の1と2の文を見て、【 】内でより適切なのはどちらか考えてみてください。
- There’s 【 hair / a hair 】in my soup.
(スープに髪が入っている) - Jane has 【 long hair / a long hair 】.
(ジェーンは長髪だ)
1は “a hair” が適切。「髪の毛が1本浮かんでいる」ことを言いたいときは、“a hair” と可算名詞にします。一方、2は “long hair” が適切。「長髪だ」と言っているときは、髪の毛1本1本の形に意識を向けているわけではありません。よって、この “hair” は不可算名詞です。
ちなみに、「動物の毛」を表す “hair” は可算名詞。髪型や長さなどに個人差がある人間の髪の毛と異なり、一定の形状で同じものが並び立っているのが動物の毛。一定の形をした毛がたくさん落ちていることを述べたいときは、以下のように複数形にできるのです。
The dog has left brown hairs on the sofa.
(その犬はソファに茶色い毛を落としていった)
以上の例のように、文脈によって可算名詞とも不可算名詞ともとれる名詞が存在します。可算名詞か不可算名詞かによって、微妙な意味合いの違いがあるのです。よって、「あれは可算名詞、これは不可算名詞」のように、リスト化して丸暗記するのは効果的ではありません。
むしろ、可算名詞と不可算名詞のそれぞれの本質をつかむことが、適切に区別するための近道なのです。
これで解決! 可算名詞と不可算名詞の区別のポイント
可算名詞と不可算名詞の区別は、人間の物の見方と関わっています。じつはこの物の見方に、可算名詞と不可算名詞を簡単に見分けるヒントが隠されているのです。いったいどのような見方でしょうか。
答えは、東京言語研究所にて理論言語学賞を受賞した認知文法のプロであり、時短型英語ジム「StudyHacker ENGLISH COMPANY」でシニアリサーチャーとして活躍する ”英語職人” 時吉秀弥さんが、以下の約8分の動画のなかで説明しています。認知文法の観点から詳しく解説していますので、ぜひご覧ください。
- 人間がもつ2通りの物の見方
- 可算名詞は〇〇で認識する名詞
- 不可算名詞は〇〇で認識する名詞
- 英語の「1個」の正体
- 「a」の秘密
動画によるわかりやすい説明で、可算名詞と不可算名詞のそれぞれの特徴や、英語の「1個」「a」の考え方がすぐに理解できますよ!
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英語の可算名詞と不可算名詞を区別するには、英語の世界の「数えられる」の意味に気づくことがまず大切。そのうえで、可算名詞と不可算名詞のそれぞれの特徴を把握すれば、迷いなく見分けることができますよ。ぜひ今回の記事と動画を、可算名詞と不可算名詞を攻略するヒントとしてご活用ください。