「Walk bike」ってどういう意味? ネイティブの “キモチ” を知れば自然な英語を使いこなせるようになる
「ネイティブのように英語を使いこなせる気がしない」
「英単語や英文法を学んでも、さらっと自然に使えない」
そうお悩みの方はいませんか? これは「勉強が足りない」からでも「才能がない」からでもなく、単に学び方の問題かもしれません。
言語には人間の心理が反映されています。人の気持ちを映した言葉や文法を、機械的に覚える――それだけでは使いこなせないのも当然のこと。
英語学習を単なる ”暗号解読” で終わらせてはいけません。ネイティブの自然な英語をマスターするべく、クイズを通して英語パーソナルジム「ENGLISH COMPANY」と学んでいきましょう。
【クイズ1】この英文、変ですか?
次のふたつの英語表現を見てください。間違っているでしょうか、正しいでしょうか?
- Walk bike.
- Your paper reads well.
違和感を感じた方も多いのでは? 特に1では「歩けばいいのか自転車に乗ればいいのか、どっち?」と困惑することもあるかもしれませんね。しかし、じつはどちらも正しい表現。こんな意味を持ちます。
- 自転車は押して歩きなさい。(歩行者専用道路などでの標識)
- あなたの論文はよく書けている。
なぜ私たちはこれらの英文に違和感を感じるのでしょうか? その理由は、自動詞(後ろに目的語がない動詞)「歩く」として覚えたwalkが、他動詞として、違う意味で使われているから。同様に、他動詞(後ろに目的語がある動詞)「〜を読む」として覚えたreadが、自動詞として、違う意味で使われているから。
「walk」や「read」には自動詞・他動詞用法があり、それぞれ以下のような意味があること、みなさんは知っていましたか?
- walk
(自)歩く
(他)モノを歩かせるように少しずつ動かす、動物を散歩させる、距離を歩く - read
(自)(著作物が上手・下手に)書いてある、読書する
(他)本などを読む
自動詞・他動詞の片方の用法や意味しか知らないと、英語ネイティブの表現を正確に理解することはできません。また、ネイティブのように自然に英語を使いこなすのも難しいでしょう。
日英の自動詞・他動詞の違い
英語では一般的に、同じひとつの動詞に自動詞と他動詞のふたつの用法があります。そして自動詞として使われるか、他動詞として使われるかは、文によって違います。
- I walk every morning.(毎朝、散歩する)→自動詞
- I walk my dog every morning.(毎朝、犬を散歩させる)→他動詞
- Coffee grows in Kenya.(コーヒーはケニアで産する)→自動詞
- People grow coffee in Kenya.(ケニアでコーヒーを栽培する)→他動詞
これは日本語とは異なるところ。日本語では「(作物が)育つ /(作物を)育てる」のように、普通、自動詞か他動詞かによって動詞そのものの形が変わりますね。しかし英語ではどちらも同じ動詞 ”grow” を用います。同じような例はたくさんあります。
- (自)変わる(他)変える → change
- (自)増える(他)増やす → increase
- (自)動く(他)動かす → move
- (自)壊す(他)壊れる → break
- (自)沸く(他)沸かす → boil
自動詞か他動詞かによって動詞の形が変わる日本語と、ひとつの同じ動詞に自動詞と他動詞のふたつの用法を持つ英語。
この日英の違いを知らないと、日本語の概念を英語に持ち込んでしまい、walkは「歩く」という意味だから自動詞、readは「〜を読む」という意味だから他動詞、と誤って片方だけ覚えてしまうことも。その結果、わかる・使える英語の幅が限られてしまいます。
「英語では、ひとつの動詞に自動詞・他動詞のふたつの用法があるのが基本。そしてどちらの用法になるかは文のなかの使われ方によって異なる」ことを覚えておきましょう。
【クイズ2】”チラリ” ハプニング、どう伝える?
ひとつの動詞に、自動詞と他動詞の用法がある。それがわかったら、次のステップは自動詞と他動詞そのものの意味の違いを理解すること。なぜなら、両者に込められた英語ネイティブの心理がわからないと、思わぬ誤解を生んでしまう恐れがあるから。
たとえば、道行く人のスカートがめくれていて下着が見えてしまっており、親切心から教えてあげようと思ったとき。失礼のないように伝えるには、1と2どちらを使うべきでしょう?
- Your underwear is showing.(自動詞)
- You are showing your underwear. (他動詞)
どちらの英文も文法的に間違いはありません。しかし示唆する意味は大きく異なります。
- 下着が見えてしまっている→「失礼ですが......」に続けて言うときにぴったりな、相手の気分を害さない表現
- わざと下着を見せている→「あなた、なんでそんなものを見せているのですか?」というニュアンスに取られてしまいかねず、相手の気分を害する恐れがある
両者には大きな違いがあるのですね。知らずに2を使ってしまったら、相手だけでなく自分まで恥ずかしい思いをしてしまいそうです......!
自動詞と他動詞の ”キモチ” を知ろう
この差はなぜ生まれるのでしょう? ヒントとなるのは「自動詞と他動詞に込められた心理」。それがわかれば、おのずとふたつの意味の違いも明らかになります。
文法の裏にある人間の心理を知りたいときは「認知文法」が便利。ネイティブスピーカーが潜在意識としてもっている文法感覚をイメージでとらえ、文法をより自然に使いこなせるようになる、いま注目の分野です。
東京言語研究所にて理論言語学賞を受賞した認知文法のプロであり、時短型英語ジム「StudyHacker ENGLISH COMPANY」でシニアリサーチャーとして活躍する “英語職人” 時吉秀弥さんに、自動詞と他動詞に込められた「キモチ」についてうかがいました。認知文法の観点から詳しく解説していますので、ぜひご覧ください!
- 日本語の自動詞と他動詞を例に
- 「後ろに目的語があるから、ないから」ではない!?
- 自動詞と他動詞の動き方のイメージの違い
- 「力をぶつける相手」が○○○
- からだで覚える! 自動詞と他動詞の感覚
- 修飾語は「□□の力が届かない言葉」
からだを動かしながら、自動詞と他動詞の感覚をつかんでくださいね。
YouTube「時吉秀弥のイングリッシュカンパニーch」では、ほかにも英語学習中のみなさんを応援するためのお役立ちコンテンツをたくさんご用意しています。ぜひチャンネル登録をお願いします!
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自動詞と他動詞について、学校でどんなことを学びましたか? 「後ろに目的語があるのが他動詞、ないのは自動詞」という区別の仕方だけを教わった。そんな方も多いのではないでしょうか。
もちろん役に立つ方法ではありますが、このような表面的なパターンの判別だけでは、英語学習は単なる ”暗号解読” で終わってしまいます。もう一歩踏み込んで、言語に込められた人間の心理を学ぶ――このひと工夫で、ネイティブらしい自然な英語に大きく近づけるはずですよ。
※例外:英語では、happen, exist, appearのように自動詞用法のみの動詞、destroyのように他動詞用法のみの動詞、rise(上がる)raise(〜を上げる)のように自動詞と他動詞で形の異なる動詞もある。日本語では「吹く」「閉じる」のように自動詞と他動詞の形が同じ動詞もある。