英語多読の効果とやり方! 毎日続けられるおすすめの本とリーディング術
「英語の多読って、本当に効果あるの?」
「英語の多読にはどんな教材がおすすめ?」
そんな疑問をもっていませんか? 多読が英語力アップに効果的だとは聞いたことがあっても、具体的にどのような効果があるのかは、あまり耳にしたことがないでしょう。また、多読におすすめのサイトや教材が多すぎて、どれがいいかわからないという方もいるかもしれません。
今回は、英語パーソナルジム「ENGLISH COMPANY」が、英語の多読がもたらす具体的な効果と、多読におすすめの教材をご紹介しましょう。
英語の多読とは
英語の多読とは、辞書に頼らず、題材を楽しみながら大量に読むこと。やさしい読み物を大量に読んでいきます。
多読とよく比較されるのが、精読。精読は、英文のなかにある文法や単語の意味などを細部まできちんと理解する読み方です。正確な意味内容を理解するために文構造にも着目し、文のどこが主語で、どの部分がどの単語を修飾しているか分析しながら読んでいきます。
対して多読では、シンプルな英文に加え、場合によってはイラストや写真でイメージを補完できる素材を使用するのが特徴。辞書や母語に頼らず、英語の文章を英語のまま味わえる読み物を使います。
慣れてきたら、一冊の分量や文章の難易度を徐々に変えたり、イラストや写真の有無を調節したりして読んでいくのが、多読です。
まずは、こうした英語の多読の特徴をつかみましょう。
英語の多読の効果
英語の多読を続けることで、主にふたつの効果が期待できます。
- 大量のインプットが得られる
- リーディングスピードが向上する
それぞれの効果を、詳しく見ていきましょう。
1. 大量のインプットが得られる
英語の多読は、大量のインプットを得るのに有益です。
第二言語習得研究(母語以外の言語を身につけるプロセスやメカニズムを扱う学問)の知見によると、最も効率的な言語習得のためには、「大量のインプット(リスニング、リーディング)と少量のアウトプット(スピーキング、ライティング)」のバランスが欠かせないとされています。
正確で流暢なアウトプットのためには、受容知識(インプットする際に理解できる言語知識)が十分でないといけません。なぜなら、受容知識の一部が、産出知識(アウトプットする際に自分で応用できる言語知識)になると言われているから。そもそも理解すらできないことは、話すことも書くこともできません。
ただ、日本は日常生活において大量に英語をインプットできる機会が、非常に限られている環境。そんな環境下でも、一定のインプット量を確保することによって、効果的な言語習得を促せるのが、多読なのです。
2. リーディングスピードが向上する
多読は、リーディングスピード向上にも効果を発揮します。
普段英文を読む際に、きれいな日本語に訳そうとして、英文を何度も前に戻って読んでしまう「返り読み」をしていませんか? 「返り読み」は、基本的な単語や文法はわかるのに、すばやく英文を読みこなせない学習者に多く見られる読み方であり、読むのが遅くなる主な原因のひとつです。
多読では、日本語に訳そうとしなくても理解できるシンプルな英文を使うことで、文の先頭から「英語の語順で」理解していく読み方が身につきます。
さらに、英文を文頭から読み進める習慣が身につくと、特に文頭から順に理解する必要のあるリスニングのスキル向上にも期待できます。
このように、英語の多読には英語での情報処理を自動化させていく効果があるのです。
英語の多読の効果的なやり方
英語の多読が効果的だからといって、間違ったやり方をすると、期待された効果を得にくくなります。たとえば、表紙やタイトルの雰囲気、流行だけで読み物を選ぶのはおすすめできません。「読んでいる内容がまったく理解できない」「話が長すぎる」という原因で、適切な多読が実践できないだけでなく、挫折を引き起こしやすくなるからです。
ここでは、英語の多読をより効果的にするやり方をご紹介しましょう。
多読にふさわしい読み物を選ぶ
多読を効果的にするには、読み物選びが肝心。英語の多読に適した読み物を選ぶポイントは、次の3点です。
- 英語のまま理解できる読み物を選ぶ
- 興味のもてる読み物を選ぶ
- 背景知識のある読み物を選ぶ
詳しく見ていきましょう。
1. 英語のまま理解できる読み物を選ぶ
多読は、英語のまま理解できるくらいやさしめの読み物を選ぶのがポイント。多読は辞書を使わずに理解できるやさしめの英文を大量に読むのが目的であるため、最適なレベルは、学習者の現在の学力よりも下の教材ということになります。
国際多読教育学会によると、学習者が1ページ中の単語のうち98%知っていれば、スムーズに内容を理解しながら英文を読むことができるとのこと。対して、既知語が90%未満だと、辞書を引く頻度が多くなり、読書中にストレスが高まりやすいそう。結果、多読を楽しめず、読解力が落ちてしまうとのことです。
多読しようとしても、わからない単語で止まって、辞書を何度も引いてしまう場合、難しすぎる読み物を選んでいる可能性があります。多読の効果を高めるためには、辞書がなくてもスムーズに読めるくらい簡単な読み物を選ぶのがおすすめです。
2. 興味のもてる読み物を選ぶ
英語の多読には、自分が興味をもてる読み物を選びましょう。
ケース・ウェスタン・リザーブ大学教授の白井恭弘教授は、自分の興味のある分野や好きな分野を徹底的にインプットすることが、効率的な言語習得につながると述べています。自分の興味のもてる読み物だと、多読のための動機づけにもなるのです。
小説や絵本、ニュース記事、コラムなど、さまざまなジャンルから、おもしろそう、興味をもてそうと感じたジャンルを、多読の教材として読み進めてみましょう。映画化されて、ストーリーを知っているような洋書も、楽しみながら多読ができる読み物に入ります。
3. 背景知識のある読み物を選ぶ
英語の多読には、背景知識のある読み物を選ぶのもおすすめ。知らない表現が出てきても、背景知識や専門知識で内容理解を補うことができるためです。
たとえば、自分の趣味や仕事、専門に近いトピックであれば、英語でどう言うのかを知らない専門用語が多少出てきても、前提知識としてなじみがあるため、難なく読み進めやすいもの。
逆に、なじみのないトピックだと、専門的な用語にまったく歯が立たず、読み進めることが頓挫しかねないのです。
辞書を引かずに、自分のペースで読み進める
教材を選んだら、今度は実際に多読を進めてみましょう。
ポイントは、わからない単語があっても、辞書に頼らずに英語のまま読み進めること。わからない単語を見つけるたびに意味を確認していると、読むスピードが遅くなるほか、話の流れが追えなくなる可能性もあります。
意味のわからない単語を見つけても気にせず、自分のペースでストーリーを楽しむつもりで読むのが効果的です。日本語での読書と同じように、多少は曖昧な箇所があっても読み進めましょう。ただし先述のとおり、知らない表現がたくさん現れて内容理解に支障が出るような題材は、基本的には多読には不適切な題材なので注意が必要です。
飽きたら、すぐに次の読み物に切り替える
多読では、同じ読み物に固執する必要はありません。読んでいて飽きてしまったら、別の読み物にすぐ切り替えましょう。ストーリーを楽しみながら、本文の内容を理解するのが多読。つまらなければ読むのをいったんやめて、新しい読み物で多読をしましょう。
以上のような英語の多読のやり方をぜひ実践してみてください。
【レベル別】英語の多読におすすめの学習教材
英語で多読を進めるのに、どんな学習教材から始めるとよいのでしょうか? 入門から上級のレベル別で、おすすめのものをピックアップしました。
全レベル-グレイデッド・リーダーズ
グレイデッド・リーダーズ(graded readers)は、誰でも知っているようなおとぎ話や児童書、古典文学や小説などを中心に、語彙や文法項目を制限してシンプルな英語に書き直した段階別読み物のことです。初級者向けの本や上級者向けの本まで、自分のレベルに合わせた難易度で多読が可能です。
Level 1: Sadie's Big Day at the Office KPF with Integrated Audio (Pearson English Graded Readers)
入門レベル(目安:TOEIC ~345点/英検5~4級)
1. オックスフォード・リーディング・ツリー
イギリスの小学校の大半が副読本として使用している「オックスフォード・リーディング・ツリー (Oxford Reading Tree)」。多読を推奨している図書館では、必ずと言っていいほど置いてあるシリーズです。
イギリスにいる少年の日常生活を描いており、頻繁に使われる表現が繰り返し登場するため、英語学習に最適です。物語は20段階にレベル分けされています。まるでイギリスの家庭にホームステイしているかのような気分になれるシリーズです。
Oxford Reading Tree Level 1 + More First Sentences Pack A
2. Mr. Putter & TabbyシリーズとHenry and Mudgeシリーズ
アメリカの児童書作家シンシア・ライラント(Cynthia Rylant)氏が描く、Mr. Putter & Tabbyシリーズと、Henry and Mudgeシリーズは、やさしく読みやすい英語で、ほのぼのした雰囲気があるのが特徴。猫好きな方は、Mr. Putter and Tabbyシリーズ、犬好きな方は、Henry and Mudgeシリーズはいかがでしょうか?
Mr. Putter & Tabby Turn the Page
なお、入門レベルの多読教材の場合、一冊が非常に薄いため、購入するよりも、図書館などで借りて読むことをおすすめします。
初級レベル(目安:TOEIC 350~495点/英検3~準2級)
1. オックスフォード・ブックワームズ
初級レベルでおもしろい読み物が多いと評判の教材が、オックスフォード・ブックワームズ(Oxford Bookworms)。名作などを初級の語彙に書き換えて、読みやすくしているのが特徴です。
Titanic (Factfiles: Oxford Bookworms Library, Stage 1)
2. ケンブリッジ・リーダーズ
初級レベルだと、ケンブリッジ・リーダーズ (Cambridge Readers)もおすすめ。完全書き下ろしで、やさしい英語でも読み応えがあるのが特徴です。
Help! (Cambridge English Readers Level 1)
3. レベルド・リーダーズ
レベルド・リーダーズ(leveled readers)とは、ネイティブの子ども向けの学習用絵本です。イラストが豊富で内容も工夫されており、特に幼稚園〜小学校低学年向けのものは、英語初心者でも十分楽しめるでしょう。ノンフィクションのシリーズは、「お話」が苦手な方にもおすすめです。
Now I'm Reading! Level 1: Playful Pals (NIR! Leveled Readers)
中級レベル(目安:TOEIC 500~725点/英検2~準1級)
子どもの頃に読んだ本の原作
中級レベルの学習者の方は、子どもの頃に読んだ本の原作を読んでみるのがおすすめ。ストーリーをある程度理解している読み物であれば、文章が英語であっても、抵抗なく読み進めることができるでしょう。
たとえば、以下のような本を英語で触れてみてはいかがでしょうか?
The Lion, the Witch and the Wardrobe(ライオンと魔女 ナルニア国ものがたり)
やさしめのビジネス書
仕事で英語が必要という方の場合は、やさしめのビジネス書を多読教材にすれば、英語もビジネススキルも身につきますよ。以下のようなビジネス書を試してみてはいかがでしょうか?
【モチベーションについて学びたいなら】
Drive: The Surprising Truth About What Motivates Us by Daniel H. Pink.
【リーダーシップについて学びたいなら】
Start with Why: How Great Leaders Inspire Everyone to Take Action
上級レベル(目安:TOEIC 730~900点/英検準1~1級)
ヤングアダルト向けの話題作
上級レベルの多読にチャレンジしたい方は、英語圏の中高生向けに書かれた話題作がおすすめ。ストーリーがとても理解しやすく、多読におすすめのジャンルのひとつです。
【アフリカ系アメリカ人への人種差別や社会的不正に対する闘いを描く】
The Hate U Give
【人種問題などに直面するなかでの、ネイティブアメリカンの少年の成長と苦悩を描く】
The Absolutely True Diary of a Part-Time Indian
一般向けのベストセラー
一般向けのベストセラーも、読みやすいことが多く、多読教材におすすめです。以下の作品で、多読を試してみてはいかがでしょうか?
【新興企業による経営戦略に関するビジネス書】
The Lean Startup: How Today's Entrepreneurs Use Continuous Innovation to Create Radically Successful Businesses
【世界がどのように進化しているかについての議論を展開する書籍】
Factfulness: Ten Reasons We’re Wrong About The World - And Why Things Are Better Than You Think
英語の多読に取り組みたいという方は、以上のような学習教材を試してみてはいかがでしょうか。
「多読教材をひとつに絞りきれない」「買うのはハードルが高い」という方は、図書館で多読に適した教材を借りてみるのもおすすめ。「カーリル」のような図書館蔵書検索サイトを使えば、英語の多読教材がどこの図書館に所蔵してあるかを探すことができます。
ぜひ、お気に入りの英語の多読教材を探してみてください。
英語の多読におすすめの無料サイト「K-12 Student Library」
英語の多読をするのに有益な、さまざまな無料サイトがあります。なかでも、英語の多読の取っかかりとして最も有益なのが「K-12 Student Library」。デジタル図書館サービス「Open Library」内にある、子ども向け書籍のコーナーです。K-12とは、幼稚園の年長と、小学校から高等学校までのアメリカの教育期間12年を指す言葉。子ども向けの絵本や学生向けの書籍のデータが閲覧でき、比較的シンプルな言葉で書かれているのが多いのが特徴です。
リーディングレベルに応じて絵本や書籍が分けられており、自分のレベルに合った書籍を読むことができます。無料の会員登録をすれば、一度に10冊まで借りられ、最大2週間まで利用可能。さらに、オーディオ機能がついている書籍もあり、リスニングの学習にも役立ちます。
「K-12 Student Library」は、無料サイトで英語の多読にトライしてみたい方におすすめです。
英語の多読をさらに効果的にするために
英語の多読を効果的にするためのやり方や、おすすめの教材を紹介してきました。あとは自分のリーディングのレベルを客観的に知れば、さらに効果を高めることができます。
リーディングのレベルでも、「ゆっくり読んでも英文の意味が理解できない」のか、「ゆっくり読んだらなんとか理解できる」のかによって、アプローチが異なります。しかし、自力ではいまのリーディングのレベルを客観的に把握するのは難しいですよね。
そんなときは、「英語学習の専門家」から診断を受けてみてはいかがでしょうか? 英語パーソナルジム「StudyHacker ENGLISH COMPANY」では、言語学や第二言語習得研究の知見に長けた「英語のプロ」が、リーディングをはじめとするあなたの英語のスキルの課題を発見します。発見した課題に応じて提供されるトレーニングを続ければ、英語力を根本から鍛えることが可能です。
さらに、Studyhacker ENGLISH COMPANYの受講生専用サイトには、音声つきのオリジナル読本を100冊以上備えており、受講生は自由に読めるようになっています。
リーディングの課題を解決して、リーディングスキルを効率よく伸ばせば、読める読み物が増え、英語の多読がさらに楽しくなりますよ!
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英語の多読は、正しいやり方を学べば、大量のインプットを増やしたり、リーディング力を身につけたりするのに、より効果を発揮します。今回の記事を参考に、ぜひ英語の多読に取り組んでみましょう!