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英語だと記憶力が悪くなる!? ワーキングメモリから考えるリスニング学習の王道

英語だと記憶力が悪くなる!? ワーキングメモリから考えるリスニング学習の王道

「リスニングした内容をすぐに忘れてしまう」
「英語を聞き終わったあと、細かな情報を思い出せない」

そうお困りの方はいませんか?

リスニング中はなんとなく聞き取れた気がするのに、設問を解くころには頭から記憶が抜け落ちている。あとからその話をしようとしても鮮明に思い出せない。これは英語学習者によくある悩みです。英語だと記憶力が悪くなるように感じるのはなぜでしょう?

そんな疑問を解消すべく、時短型英語ジム「StudyHacker ENGLISH COMPANY」でトレーナーとして活躍する “英語の専門家” 高橋秀和さんにお話をうかがいました。



脳のリソースには限りがある

聞いた瞬間は理解できたのに、思い返そうとすると記憶があやふや。英語だと記憶力が悪くなるなんてこと、あるのでしょうか? 

答えはイエス。第二言語習得に精通している高橋さんは、これは脳のリソースの問題だと言います。前提となるのは、人間が持つ認知資源には限界があるということ。認知資源は無限ではなく、私たちはある一定量のリソースを使って、さまざな作業を同時並行的に行なっています。

近年、認知心理学で注目されている「ワーキング・メモリ容量」を使って説明しましょう。通常「ワーキング・メモリ」は作業記憶のことで、短期記憶に関連するシステムを指すもの。しかし、この「ワーキング・メモリ容量」は、記憶貯蔵庫としての能力というより、情報処理の作業中にそれと同時に情報を保持できる能力なのだとか。

言語心理学や認知心理学を専門とする国際基督教大学の森島泰則教授は、「ワーキング・メモリ容量」をこう説明しています。

情報処理のために、認知資源がある程度消費されるとき、それを差し引いた認知資源で情報保持のはたらきがどれだけできるかに着目した指標だ。情報処理に認知資源を多く使えば、その分保持できる情報量は少なくなってしまう

(引用先:森島 泰則(2015),『なぜ外国語を身につけるのは難しいのか: 「バイリンガルを科学する」言語心理学』, 勁草書房. ※太字は筆者が施した)

英語だと記憶力が悪くなる!? ワーキングメモリから考えるリスニング学習の王道1

英語だと記憶力が悪くなる!?

脳のリソースは限られているので、情報処理に多くの認知資源を使うと、そのぶん情報の保持に使える資源は減ってしまうのです。

言語情報の処理はとても複雑な認知作業。でも、日本語で聞いたことをすぐに忘れることはありませんね。これはなぜなのでしょう?

その理由は、母語では情報の処理が効率的にできるから。消費する認知資源が少なくて済むため、情報の保持に割けるリソースは相対的に多くなります。一方、慣れない外国語ではそうはいきません。

関西学院大学院の門田修平教授は、言語運用における情報の処理と保持のトレードオフがもたらす現象について、こう語ります。

例えば、母語における言語運用では、保持と処理は通常その認知資源配分においてバランスを失うことなく、うまく実行されています。しかし、まだ十分に熟達していない外国語では、しばしば文の処理に多くの認知資源をとられ、そのぶん情報の保持ができなくなり、その結果そのときは完全に理解したつもりでも後で何ら記憶に残らなくなってしまうという現象があります。

(引用先:門田修平(2015),『シャドーイング・音読と英語コミュニケーションの科学』, コスモピア. ※太字は筆者が施した)

母語では、複雑な情報処理をほぼ自動的に行なうことができるもの。自動的処理は認知資源をほとんど消費しないので、リソースの大部分を記憶や思考に費やすことが可能です

一方、習熟度の低い外国語では、言語情報の処理でいっぱいいっぱい。情報処理による認知資源の消費量が大きいため、情報保持のためのリソースが母語ほど多くは残りません。

英語だと記憶力が悪くなる!? ワーキングメモリから考えるリスニング学習の王道2

「リスニング中はわかっていたのに、振り返ってみると思い出せない」そんな現象は、情報保持に必要な脳のリソース不足によって引き起こされていたのですね。

リスニングのプロセスを自動化することで解決できる

いかに認知資源を消費せず、英語音声情報を処理できるか。リスニングにおける記憶力アップの鍵はここにありそうです。

では、どうすれば情報処理に使う認知資源の消費量を減らすことができるのでしょう? まずはリスニングのメカニズムを知るところから始めましょう。

こちらがリスニングのプロセス。

  1. 音声知覚(耳から入った音声を単語として認識)
  2. 理解(語彙や文法知識、背景知識などをもとに意味内容を理解)

音声知覚」は、音を聞き取り、単語として認識すること。これには、個々の単語の発音、さらには音声変化の知識が必要です。たとえば「アッポー」は ”apple” の音、「アナッポー」は ”an apple” という2語からなる音だと気づく、ということです。

次に「理解」。これには、語彙や文法といった英語の知識が不可欠です。音として聞き取れても、知らない単語の意味はわからないし、文法を知らなければ文意を正確に把握できません。たとえば ”an apple” なら「1つのりんご」、”I don't really like apples.” なら「りんごはあまり好きじゃない」のような意味だとわかる、ということです。

「音声知覚」でキャッチした英語を「理解」する、これがリスニングのメカニズム。この2つの処理をほとんど自動的に行なえれば、処理による認知資源の消費量が減ります。その結果、情報の保持に多くのリソースを割けるように。英語で聞いたことを記憶にとどめることが可能になるのです。

英語だと記憶力が悪くなる!? ワーキングメモリから考えるリスニング学習の王道3

【朗報】リスニングの記憶力を高める学習法があった

リスニングの記憶力を高めるには、音声知覚と理解をできるだけ自動的に行なうことが大切なのですね。そのためには、どんなトレーニングが効果的なのでしょう?

その答えをはじめとして、リスニング力向上のためのさまざまな方法が学べる約7分間の動画がありますので、ぜひご覧ください!



英語のプロトレーナー・高橋さんによる解説で、「リスニングが苦手」「聞いた内容を思い出せない」という皆さんのお悩みを解決できるはずですよ。

YouTube「時吉秀弥のイングリッシュカンパニーch」では、英語学習中の皆さんを応援するためのお役立ちコンテンツをほかにもたくさんご用意しています。ぜひチャンネル登録をお願いします!

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わかっていたはずなのに、きれいさっぱり忘れてしまう。そんな悔しい思いはもうこりごり。今こそ脳、そしてリスニングの仕組みを理解し、英語の記憶力アップをはかってみませんか?



参考資料
森島泰則(2015),『なぜ外国語を身につけるのは難しいのか: 「バイリンガルを科学する」言語心理学』, 勁草書房.
門田修平(2015),『シャドーイング・音読と英語コミュニケーションの科学』,コスモピア.
JACET(大学英語教育学会)SLA研究会(2013),『第二言語習得と英語科教育法』, 開拓社.
馬場今日子, 著新多了(2016),『はじめての第二言語習得論講義 英語学習への複眼的アプローチ』, 大修館書店.
小池生夫, 寺内正典, 木下耕児, 成田真澄 編集(2004),『第二言語習得研究の現在 これからの外国語教育への視点』, 大修館書店.
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