「映画」は英語学習にうってつけの教材! でも “わからないのに聞き流す” のは絶対NG
「英語学習にもっと楽しく取り組みたい」と思っている人はいませんか?
そんなみなさんにおすすめなのが「映画」の活用。最近はNetflixやAmazon Primeといった動画配信サービスも充実し、幅広いジャンルの映画を気軽に楽しめるようになりました。しかし、ただの娯楽と侮るなかれ。英語学習者にとって、映画は格好の教材なのです。具体的なメリットを、英語パーソナルジム「ENGLISH COMPANY」といっしょに見ていきましょう。
【メリット1】大量のインプットの確保
英語学習で映画を活用するメリットのひとつめが、大量のインプットを確保できる点です。
第二言語習得研究(母語以外の言語を身につけるプロセスを探る学問)では、「大量のインプットと少量のアウトプット」というバランスが言語習得のうえで重要だとされています。英語を使いこなせるようになるには、まずは自分が理解できる英語を増やしていくのが必要。映画を通じて生の英語に触れることで、日本にいながらにして大量のインプットの機会を得ることができます。
インプットのうち、特に鍛えられるのがリスニングスキル。映画によって、実際にリスニングスキルが向上したという研究報告があります。兵庫教育大学の近藤暁子准教授は、公立高校生76名を対象に、映画を使用した授業(※映画鑑賞のほか、セリフの書き取りや音声の解説、映画についてのディスカッションなどを実施)の効果を検証しました。その結果、検定教科書を使用した群と比較して、リスニングテストの平均点の伸び率が約7倍もあったのだそう。特に「細部の聞き取り」で顕著な効果が見られたとのことです。
この結果について、近藤准教授は、映画を通してネイティブスピーカー特有の「音声変化」(一部の音をつなげたり、弱く短く読んだりするなど)に多く触れられたことが、音声認識力の向上につながったと考察しています。また、こういった音声変化に関する解説を行なったことで、より音声認識力が強化されたとのこと。
たしかに映画のほうが、市販の英語学習用教材に比べ、発話スピードや発音が実際の会話の場面に近いですよね。大半の学習用教材は、学習者のレベルをあらかじめ設定し、語彙や文法を制限したうえで、対話文や文章を作成しています。市販のリスニング教材で使われるのは、学習者が聞き取りやすいようにスピードを調節している「わかりやすい英語」。実際の会話で起こるような音声変化は、教材のなかではそれほど顕著に現れません。一方映画は、英語学習者を想定してつくられているわけではないため、生の英語を体験できるのです。ネイティブスピーカーが日常的に使うような発音に大量に触れることができるため、映画で実践的なリスニング力を身につけることができるのです。
【メリット2】話者の意図を読み取る練習ができる
ふたつめのメリットは、文脈をたよりに話者の意図を正確に読み取る練習ができること。単語や表現は、常に辞書的な意味で使われるとは限りません。その一例が「皮肉」。たとえば、ハリウッド映画 「バック・トゥ・ザ・フューチャー」には、このようなセリフがあります。
“Perfect. Just perfect.”
“perfect”は「完璧な」が辞書的な意味。しかし上記のセリフは、彼女とのデートで使おうとしていた車がぐしゃぐしゃになってレッカー車で運ばれるときに主人公が発したもの。「ひどい」に近い意図を、主人公は “perfect” という皮肉で表現したのです。
県立広島大学の馬本勉副学長は、基本的な語彙や文法の知識をもつ学習者は、言葉の意味だけでなく、その言葉から話者が何を意図しているのかにも注意を向ける練習が必要と指摘しています。それをすることで、実際のコミュニケーションで相手の意図を正確に理解できるようになるのだとか。こうした訓練をするうえで、映画は最適な教材だと馬本副学長は述べています。
【メリット3】表現の定着度が高い
さらに映画は、言語と映像を併用するため、表現の高い定着をもたらします。心理学者のパイヴィオが提示した「二重符号化理論」によると、言語をイメージとともに取り入れると、理解や記憶力が高まるそうです。二重符号化理論の「符号」は、音声や文字などの「言語情報」と映像などの「非言語情報」の2つが符合することを指します。
ニューヨーク州立大学で60人の大学生に実施した研究では、映画の同じシーンを「セリフ」と「映像」の併用で提示した群と「セリフ」のみで提示した群に分け、あらすじや使用されていた表現を口頭で想起させる調査を行ないました。結果、「セリフ」と「映像」を併用して提示した群のほうが、「セリフ」のみ提示した群と比べて、想起できた割合が約10%高かったそうです。シーンで使われる表現が視覚情報と結びついたことで、より定着しやすかったことを示唆しています。
これは読書をしたり、音楽を聞いたりするだけの学習法にはないメリット。言葉を映像を通して学ぶことで、表現をより確実にものにすることができるのです。
映画を活用するときの注意点
ここまで映画のメリットを説明してきましたが、じつは注意点もあります。
ケース・ウェスタン・リザーブ大学の白井恭弘教授は、映画に学習効果があるかは観る映画次第と指摘します。特に、普段の会話では使わなさそうな専門用語や難解な言葉が多用されている映画は、教材としてあまり適していないとのこと。難しい表現ばかりの映画を選んでも、実際の日常会話で応用できる機会はほとんどないでしょう。
また、映画をただ聞き流すだけの勉強法もNG。わからない英語をただ聞いているだけでは、聞き取れるようにはなりません。リスニングのプロセスは「音声知覚(耳から入った音声を単語として認識)」と「理解(語彙や文法知識、背景知識などをもとに意味内容を理解)」のふたつからなります。そもそも、音声を単語として認識できなければ、雑音を聞いているのと同じ。セリフに注意を向けることができず、聞き取りの効果は期待できません。
映画を効果的なツールにするためには、ストーリーがわかりやすく日常的な映画かどうか、自分のレベルに合った映画かどうかを見極める必要があるのです。
英語学習におすすめの映画5選
英語学習に活かすためには、具体的にどのような映画を選べばよいのでしょうか。また、映画を使った勉強法もぜひ知っておきたいですよね。
この疑問の答えは、時短型英語ジム「StudyHacker ENGLISH COMPANY」でトレーナーとして活躍する “英語の専門家” 長束啓樹さんと伊丸岡咲乃さんが、以下の約8分の動画で解説しています。ふたりがおすすめする映画の見所も紹介されていますので、ぜひ参考にしてみてください。
- 英語字幕をつけて観るべき理由
- 繰り返して映画を観るべき理由
- 伊丸岡さんおすすめの映画3本
- 長束さんおすすめの映画2本
- 英語学習に適している映画とそうでない映画
***
適切な映画を選び、正しい勉強法で行なうことで、映画を英語力アップにつなげることができますよ。映画のストーリーを楽しみつつ、英語力をより効率よく上げてみませんか。