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TOEICスコアをたった2か月で大きく伸ばす学習法

2か月でTOEICの結果を出すための秘策01

「あと2か月でTOEIC700点をとらないと降格だ......」
「仕事が多忙で、長期間英語を学ぶ余裕がない。2か月くらいなら時間がとれるんだけど」
「一日でも早く英語力を伸ばしたい」

仕事や転職活動などで英語力が求められる人にとっては、このように早く英語力を伸ばしたいと焦るのも無理はありませんね。そうでなくても、一日でも早く英語がうまくなりたいという思いは、英語学習者なら誰もがもっているでしょう。ただ、勉強できる期間がたった2か月しかないとなると、これほどの短期間で英語力を上げるのは至難の業だ……というイメージをもつかもしれません。

あと2か月でTOEICのスコアを伸ばすためには、はたしてどのようなことをすればよいのでしょうか。

たった2か月でTOEICスコアは上げられるのか

TOEICスコアが2か月で伸びたら、仕事先や、就職や転職で必要な英語力のアピールが早くできますね。一方で、たった2か月で伸びた人がいると聞いても、本当かと疑いたくなる気持ちもあるかもしれません。

結論を述べると、あなたのTOEICスコアを2か月だけで伸ばすことは決して不可能ではありません。ただし、正しい学習法で取り組んでいることが前提。間違った学習法をしていたら、2か月でTOEICスコアを伸ばすという目標が遠のいてしまいます。

まずは、どのような学習法をとるとTOEICスコアが上げにくくなるのかを見ていきましょう。

【TOEICスコアを上げにくい学習法1】他人の学習法をうのみにする

2か月でTOEICの結果を出した人がいるからといって、その人の学習法をそのままうのみにしたり、個人ブログなどでその人がすすめている教材にあれもこれも手を出したりしても、効果はいまひとつです。なぜならTOEICスコアを2か月で上げた学習者が紹介する方法は、あくまで「その人にとって」効果的だった学習法に過ぎないから。必ずしも「いまのあなたにとって」効果的な学習法であるとは言えないのです。

英語力も学習環境もこれまでの英語の学習経験も、人それぞれ。また、学習を進めていくにつれて、解決すべき英語の課題もそのつど変化していくものです。英語力はきわめて個別的なものであり、学習のフェーズによって何が必要かは人によって異なります

再現性が保証されているわけではない主観に基づく学習法をいきなりまねるのではなく、現状のあなたの英語力や優先的に解決すべき弱点を明らかにしたうえで、スコアを伸ばすためにあなたがとるべきアプローチが何かを把握することが重要なのです。

【TOEICスコアを上げにくい学習法2】長時間やみくもに勉強する

「2か月でTOEICを上げたいから、一日3時間はTOEIC対策に充てよう」

勉強を始める頃には、そんなふうに意気込んで対策に取り組む方もいるでしょう。しかし社会人の場合、日々の業務や家事に追われ、TOEICの勉強に長い時間を充てられず挫折してしまうのはよくあること。またいざ始めようと思っても、何をしたらいいか迷って時間を無駄にしてしまうのもありがちですよね。

忙しい状況のなか2か月の限られた期間で成果を出すためには、まず最低1時間でかまわないので、スキマ時間を見つけながら英語学習をするのがコツ。日々のスケジュールを整理して、朝起きた直後や通勤時、昼休憩の合間など、特にやることもなくぼんやり過ごしているスキマ時間を探してみましょう。一日のうち15分間のスキマ時間が4か所見つかれば、合計1時間の勉強時間を確保したことになります。

さらに学習計画を前もって具体化しておくのも重要。「朝の車の移動中、週末に解いたTOEIC公式問題集の Part 3のシャドーイングを行なう」というような、「いつ」「どこで」「何を」勉強するかをあらかじめ具体化しておけば、迷うことなく勉強に取りかかれますね。またページの範囲や期限まで決めておき、毎日アプリなどで学習記録をつけておくと、学習進捗が可視化され、学習のさらなる励みになるでしょう。

長時間無計画に勉強するのではなく、スキマ時間を見つけつつ計画を具体化しておくのが、2か月でTOEICの成果を出すポイントです。

【TOEICスコアを上げにくい学習法3】単語を書いて覚える

単語を覚えるとき、ひたすらノートなどにスペルを繰り返し書いて覚えるように学校などで教わった経験はありませんか? じつは、同じ単語をただ繰り返し書いて覚えるのは非効率的。なぜなら見ながら書くという作業は、単に情報を入れているだけであり、脳の記憶において重要な「思い出す」というプロセスをともなっていないからです。

脳のメカニズムに詳しい東京大学の池谷裕二教授によると、脳は入力よりも出力に依存しているとのこと。つまり情報を単に入れるよりも、何度も思い出して情報を取り出そうとするほうが、記憶がより定着していくということです。

単語を覚えるときは、同じ単語を書き続けたり、ただ単語リストを眺めたりするだけよりも、繰り返し記憶を引き出すような仕組みで学習しましょう。そうすることで「生きるのに必要な情報」と判断されて、記憶として定着しやすいのです。単語を書きながら覚えてもすぐに忘れるという人は、脳の記憶のメカニズムを知って、覚え方を変えてみる必要があります。

【TOEICスコアを上げにくい学習法4】英文法を丸暗記する

英文法学習と聞くと、ひたすら文法規則やたくさんの用例を暗記するイメージがあるでしょう。しかし、せっかく暗記した英文法がTOEIC本番で思い出せず、成績が上がらなかった苦い経験はありませんか?

じつは、丸暗記は大人にとって非効率的な覚え方。思春期までは知識の記憶である「意味記憶」が優位に働き、ランダムな文字の並びでもスムーズに覚えられる傾向があります。しかし思春期を過ぎると意味記憶の働きが鈍り、子どもの頃にはできていた機械的な暗記では覚えにくくなってしまうのです。

文法書を読んで覚えただけの知識の記憶は意味記憶に該当します。覚えたつもりの英文法の内容を思い出すのが難しいと感じるのも無理はないのです。

丸暗記でなんとかやっていけた子どもの頃の覚え方のままでは文法を習得するのは困難。丸暗記に頼らず、大人に合った覚え方をすることが、2か月間でTOEICの文法を習得する近道なのです。

【TOEICスコアを上げにくい学習法5】問題を解いて答え合わせするだけ

TOEICの問題演習をする際に、ただ問題を解いて答え合わせして次の問題を解くという学習法をしていませんか? ただ答えを確認するだけでは、自分の課題を把握できないため、必要な対策につなげていくこともできず、学習効果が高まりません。

答え合わせをして終わるのではなく、なぜ間違ったのかを必ず分析しましょう。わからなかった単語や文法を調べたり、聞き取れなかった英語の発音を確認したりすることが重要です。自分に不足している知識やスキルが明らかになったら、その内容を日々の学習の内容に取り入れ、定着させていきましょう

【TOEICスコアを上げにくい学習法6】英語をひたすら聞き流す

「英語を聞き流せばTOEICリスニングの対策になる」と思っていませんか? 聞き流しもじつは効率的とは言えない学習法。音を認識できなかったり、聞き取った英語の意味がわからなかったりする状態でただ英語を聞き流しても、「雑音を聞いているのと同じ状態」となり、学習効果が期待できないからです。

文法や意味、発音などに注意を払って意識的に学習しなければ、TOEICなどに必要なリスニングスキルを効率よく伸ばすことは困難。音を意識しない単なる聞き流しでは、言語習得に必要な「気づき」が生まれません。2か月で効果を実感したいのであれば、BGM代わりにTOEICの音源を聞き流すだけ、というのはあまりおすすめできないのです。

以上のような学習法をしていませんか? 2か月でTOEICスコアを上げたいなら、確実に成果の出る学習法に絞って学習に取り組むことが必要です。

2か月でTOEICの結果を出すための秘策02

TOEICスコアを2か月で上げるために必要なこと

TOEICスコアを2か月で上げるには、以下のふたつのことが必要です。

  1. 現状の自分の英語力を知る
  2. 優先的に解決すべき弱点を見つけてそれに対応した解決策に取り組む

順番に詳しく見ていきましょう。

1. 現状の自分の英語力を知る

TOEICのスコアをアップさせる前提として、英語力においてあなたがどの位置にいるのかを把握しなければなりません。ご自身の英語力によって、優先すべき課題が異なるためです。

まずは、TOEICの公式問題集などで自らのレベルを把握しましょう。取り組むべき課題には個人差がありますが、重点的に取り組むべき主な課題をスコア別で大まかに分けると、次のとおりになります。

  • 〜495点:語彙文法の拡充
  • 500〜725点:受容スキルの向上(読む・聞く)
  • 730〜900点:産出スキルの向上(話す・書く)

優先すべき課題はいま現在の英語力によって変化します。現時点で足りないものに合わせて柔軟に学習を進めていくのがおすすめです。

2. 優先的に解決すべき弱点を見つけて、それに対応した解決策に取り組む

2か月という限られた期間で成果を出すためには、学習の無駄を減らすこと。そのためには、自らの課題をまず発見し、課題をピンポイントに解決する学習法を進めることが必要です。たとえば「リスニングが苦手」という場合でも、「個々の英単語は聞き取れても内容理解が追いつかない」のか、「読めば理解できるのに、音になるとうまく聞き取れない」のか、「そもそも単語や文法の知識が不足しているのか」によって、解決策が異なります。

ご自身がどこが苦手なのかを把握して、苦手をつぶしていくことによって、英語力アップの最短ルートにそって学習を進めることが可能です。

以上ふたつのことを意識して、2か月でTOEICの結果を出していきましょう。

2か月でTOEICの結果を出すための秘策03

TOEICスコアを2か月で上げるための学習法

ここからは2か月でTOEICの結果を出すための学習法を見ていきましょう。「単語」「文法」「リーディング」「リスニング」の順に紹介していきます。

単語

【こんな人に有効】

  • TOEIC Part5の正答率が低い
  • 中学・高校レベルの単語抜けが見られる(不足している単語が多い)
  • 単語が覚えられない
  • わからない単語で読みがしばしば止まってしまう など

単語は、自分のレベルに合ったTOEIC用の単語帳を用意し、多めの単語数を1セットとして一気に覚えると効率的です。以下のように進めると、効率よく単語を覚えやすくなりますよ。

【単語を効率よく覚えやすい学習法】

  1. 50語程度を1セットで覚える。セット内の単語の音声を聞き、発音しながら、英単語・日本語訳を目で見て覚える。
  2. 1セット終わったら、そのセットの単語の日本語訳を隠し、声に出しながら、意味をパッと思い浮かべられるかテストする。その後、思い浮かべた意味と訳が一致しているか確かめる。ひととおり終わったら、今度は英単語を隠して、日本語訳を見て英単語がすぐに発音できるかチェックする。
  3. 覚えたか否かを問わず、セット内の全単語の意味がパッと思い浮かぶようになるまで、2.を繰り返す。5回程度行なうと、よりよい。
  4. 翌日、前日に学習した単語の復習と新たな単語の学習を行なう。既習単語は2.の手順でさっと確認。未習単語は1.〜 3.の手順で学ぶ。

「1セット50語は多すぎ」というイメージを抱くかもしれませんね。多めの単語を1セットで覚えるのは、「遅延効果」を狙っているから。遅延効果は、ある情報に出会ったあと、その情報に再度出会うまでの期間を長くしておくことで、覚えておける期間を伸ばしやすくするという効果を指します。

逆に「一日10単語を覚える」というように一日に学ぶ単語数を少なく設定すると、効果が薄くなります。ある単語を初めて見たあと、まだ記憶が鮮明に残っているうちにその単語にまた出会うことになり、遅延効果が働きにくくなるためです。

記憶は「思い出そう」とするときに強化されます。「忘れそう」というタイミングで再び単語に出会うことによって、「思い出そう」とする力が働き、単語の記憶が脳内により長く残りやすくなるのです。

そして単語は、発音しながら覚えるのがとても重要。正しい発音を理解して、発音できるようにしないと、うまく聞き取りができないだけでなく、英語を話す際に相手を誤解させる恐れがあります。発音を注意深く聞いて、声に出しながら単語を覚えていきましょう。   

文法

【こんな人に有効】

  • TOEIC Part 5の正答率が低い
  • 文法に苦手意識がある
  • わからない文法が多く内容が正確に理解できない など

文法は、まず問題集のPart 5を解いてみて、間違えたり時間がかかったりした文法項目を特定したあと、文法参考書で苦手な箇所の学習を行ないましょう。覚えることが多すぎて文法が理解できないという方は、「認知文法」→「パターンプラクティス」というアプローチで習得していくのがおすすめです。

1. 認知文法

認知文法」は、「ネイティブがいかに世界を認知し、それを言語に反映させているか」というアプローチを通して文法を説明しようとする文法理論を指しています。ネイティブがとらえる文法感覚を「イメージ」としてとらえるのが特徴です。

未来表現の “be going to” と “will” の違いを例に説明しましょう。“I am going to play tennis tomorrow." と “I will play tennis tomorrow." の違い、みなさんはわかりますか? 一見、どちらも「明日、テニスするつもりだ」という同じ意味だと思うでしょう。

じつは、両者は意味が微妙に異なります。前者は「明日テニスをする」という決まった「予定」を表している一方、後者は「明日テニスをするつもりだ」という話者の「意志」が強調された意味合いなのです。

この両者の意味の違いは、認知文法の観点から見ると明確になります。認知文法では、“be going to” は、ある方向(toの方向)へ進んでいる途中(going)というイメージ。すでにすることが決まっているので、もうその方向へ向かって進んでいるというイメージが使われるわけです。

一方 “will” は「意志の力」というイメージ。「必ず~する!」という意味合いがあり、未来の事柄についての意志を言い表すときにも使えるのです。

以上のイメージから “be going to” が前々から決まっている「予定」“will” がその場でもっている「意志」をより強調した意味合いになるわけです。

このように、認知文法のアプローチで学べば、丸暗記や日本語の訳に頼らずとも、英文法の意味や使い方を本質から理解することができるようになります。

2. パターンプラクティス

英文法をイメージでとらえられるようになったら、次は「パターンプラクティス」。習得したい文法項目を含む例文の主語や動詞などを部分的に変化させて、繰り返し声に出すトレーニングです。

パターンプラクティスでは次のように文を変化させていきましょう。

【例】現在完了形(have+過去分詞)を習得したいとき

  • パターンを意識しながら例文を音読
    I have been ill since yesterday.
    He has been ill since yesterday.
    They have been ill since yesterday.
  • 基本文の一部の表現を入れ替え、それ以外の部分を自分で変形
    I have been ill since yesterday. → She (has been ill since yesterday).
    ※実際は、( )内の空所を埋めながら声に出していきます。
  • 肯定文を、疑問文や否定文に変形
    He has been ill since yesterday.→ (Has he been ill since yesterday)?
    ※実際は、( )内の空所を埋めながら声に出していきます。

何度も繰り返すことで、日本語訳に頼らずに瞬間的に英文を理解するスキルが伸びていきます。

リーディング

【こんな人に有効】

  • TOEICのリーディングパートが時間内に解き終わらない
  • 基本的な単語や文法はわかるのに、読むのが遅くなる

TOEICのリーディングパートは75分以内に全100問を解き終えなければなりません。リーディングパートの点数が伸びないという方で典型的なのが、時間内にリーディングパートが解き終わらないことではないでしょうか。

単語や文法の基礎的な知識はあるはずなのに、英文を読むのが遅い代表的な原因は「返り読み」。英文を読む際にきれいな日本語に訳そうと、英文を何度も前に戻って読んでしまう読み方のことです。

TOEICのリーディングが制限時間内に解けるためのリーディングスピードを身につけるには、英文の先頭から “英語の語順で” 理解していく読み方が重要。こうした読み方は、次の方法で身につきやすくなります。

  1. チャンクリーディング
  2. サイトトランスレーション
  3. 音読

順番に見ていきましょう。

1. チャンクリーディング

チャンクリーディング」とは、意味のかたまりであるチャンクごとに英文を理解していくトレーニング。チャンクごとに内容をイメージしながら、文頭から順番にすばやく読んでいきます

以下の例を見てみましょう。

Alice was beginning to get very tired of sitting by her sister on the bank, and of having nothing to do.

(小説 'Alice in Wonderland'(不思議の国のアリス)冒頭文より抜粋)


この文をチャンクで分けると、こうなります。

Alice was beginning /
アリスは〜し始めていた

to get very tired /
とても飽きて

of sitting by her sister /
姉のそばに座っていることに

on the bank,/
土手で

and of having nothing to do. //
そして何もせずにいることに


チャンクごとの理解や、意味処理に慣れてきたら、徐々に「次のチャンクにはこんな情報が来そう」と予測を立てながら読むことができるようになってきます。すると、前に戻って無理に訳さなくても、英語の語順で理解できるため、読むスピードを速くすることができるのです。

2. サイトトランスレーション

サイトトランスレーション」とは、チャンクごとに意味を想起し、それを瞬時に日本語に訳して言うトレーニングのこと。きれいな日本語に訳せるかよりも、すぐに正しく内容が理解できるか、ということを優先して取り組むのがポイントです。リーディングスピードを上げていくためのトレーニングであるため、スピードを意識しましょう。

瞬時に日本語が出てこなかった部分は、知らない単語や文法事項が含まれているということ。知らない箇所に気づくのもこのトレーニングの目的です。日本語がすぐに思い浮かばなかった単語や文法は、単語帳や文法参考書などで復習しておきましょう。

3. 音読

チャンクごとに意味を瞬時に思い浮かべられるようになったら、次は「音読」です。音読はリーディングスピードを上げるのに最も効果を発揮します

人は英文を読む際、頭のなかで音読していると言われています。目で見た文字を脳内で音声情報に変換し、脳内にある「辞書」と照合して、すでにある語彙や文法の知識などを使って「理解」しているのです。

音読は実際に声に出して読むぶん、黙読より負荷が高くなるため、繰り返すことで脳内で文字から音に変換するプロセスを自動化(*)でき、音声情報への変換で使われる脳のリソースの消費を抑えられます。すると、次の「理解」の処理に早く移れるようになり、英文の内容を読んでスムーズに理解できるようになるのです。

*自動化:意識しなくてもできる状態になること

音読する際は、英文の情景を思い浮かべながら声に出して読んでいきましょう。

リスニング

【こんな人に有効】

  • TOEICリスニングパートでの正答率が低い
  • 英語は聞き取れないがスクリプトを見れば内容を理解できる
  • 英語の音を聞き取れても、内容の理解が追いつかない

TOEICのリスニングパートでスクリプトを読めば理解できるのに、音声を一度聞くだけではうまく聞き取れないとお悩みの方もいるでしょう。そんなとき「流れてくる英語の音声が速すぎて聞き取れない」と思うかもしれません。

じつは、それよりももっと大きな要因があります。「ネイティブスピーカーの実際にしている発音」と「私たちが想定している発音」にギャップが生じている可能性が高いことです。

リスニングには、聞き取った音声から単語を聞き分ける「音声知覚」と、聞き取った英語の意味を「理解」するふたつのプロセスがあります。耳に入ってくる音を英語の音としてうまく聞き取れていないと、聞いた音の内容を理解する段階に進みづらくなります。英語を聞き取るためには、ネイティブスピーカーが自然に発話する際にどのように発音しているかを理解する必要があります。

そこで取り組むべき学習法は、この3つ。

  1. 音声変化のルール学習
  2. ディクテーション
  3. シャドーイング

どのように行なうか、詳しく見ていきましょう。

1. 音声変化のルール学習

音声変化」とは、ネイティブが自然に発話する際に音をつなげたり省いたり、音を変化させながら「省エネ」で発音する現象のこと。ネイティブスピーカーは、単語帳に載っている発音と常に同じように発音しているわけではないのです。ネイティブの話す英語が速く聞こえるというよりも、「音声変化」が起きていることに気づいていないため、ネイティブの英語が聞き取りにくくなっている可能性があります。

学習者が知っておくとよい「音声変化」のルールは、連結、同化、脱落、弱形、ら行化の5つだけ。音声変化のルールと起こりやすい条件を理解し、音声変化を再現できるまで発音練習することで、リスニングパートの細部までしっかり聞き取れるようになります。

音声変化に関して詳しく知りたい方は、コラム「英語の『音声変化』の特徴と効果的な学習方法」をぜひチェックしてみてくださいね。

2. ディクテーション

ディクテーション」では、聞き取った英語すべてを紙に書き取っていきます。「音」に重点を置く場合、文法や文脈の推測に頼ることは極力しません。聞き取れていない箇所がどこか、明確に把握するのが目的です。ディクテーションは、TOEIC Part 1、2のような短期記憶に留めておけるぐらいの短めの英文を使って行ないます。

はじめに、聞き取った音声を紙に書き取りましょう。スペルがわからない箇所は、カタカナで書いてもかまいません。聞き逃したり、書き取りが間に合わなかったりした場合は、繰り返し聞くことも可能ですが、何度か繰り返し聞いても書き取れない箇所は、すぐに答え合わせをしたほうが効率的です。 

書き出しが終わったら、スクリプトを見て答え合わせをしましょう。それぞれの単語の発音は正しく覚えているのに聞き取れなかった箇所は、音声変化に対応できていない可能性があります。どのような音声変化が起きているかをよく聞いて分析し、音声変化を忠実に再現できるまで繰り返し発音練習をしましょう。

単語そのものの発音を間違って覚えていたり、知らない単語があるせいで聞き取れていなかったりする場合は、単語の意味や発音をその場で確認する必要があります。

ディクテーションは答え合わせをして聞き取れなかった箇所がわかればいいというわけではありません。その次に取り組むのが「オーバーラッピング」です。スクリプトを見て、流れてくる英語の音声の始めから終わりまでピッタリ重ねて英文を読み上げます

音声変化している箇所を含め、子音や母音の発音やリズム、抑揚など細部に注意を向けなければ、言い始めから言い終わりまで完全にかぶせて発音することができません。オーバーラッピングを繰り返すことで、正確な発音や英語らしいイントネーションなどが身につき、想定している発音とネイティブが実際にする発音のギャップが埋まり、細かい部分まで聞き取れるようになります。

モデル音声とぴったりあわせて発音するために、スクリプトは必ず見て行なうのがポイントです。

3. シャドーイング

音声知覚を鍛えるためのもうひとつの有効な学習法が「シャドーイング」。流れる音声に続いて、1、2語遅れで影のようについて発音していくトレーニングです。発音すると同時に先の音声も聞き取らなければならないため、負荷が高い練習法ではあるものの、慣れることで音声知覚の負荷を下げることができます。

シャドーイングは、意味を完全に理解している長文の問題(TOEICのPart4など)で行なうのが有効です。最初は視覚的な補助としてスクリプトを見てもかまいませんが、最終的には何も見ずに音声のみを頼りにスムーズにシャドーイングできることを目指しましょう。

まずは「音声」だけを意識する「プロソディ・シャドーイング」。音声を注意深く聞いて、発音や抑揚などを、モデル音声を完全に再現する意識で取り組みましょう。正しい発音で遅れずに復唱できるようになればクリアです。

プロソディ・シャドーイングがスムーズにできたら、今度は「コンテンツ・シャドーイング」。音声を正しく再現するだけでなく、英文の意味内容も思い浮かべながら行なうシャドーイングです。コンテンツ・シャドーイングができれば、聞き取った英語を理解する処理がすばやくなり、英語を聞いて瞬時に理解する力が身につきます。

TOEICスコアをたった2か月で上げるためには、以上のような学習法が有効です。

2か月でTOEICの結果を出すための秘策04

TOEICスコアを2か月で上げるのにおすすめの教材

ここではTOEICスコアをたった2か月で上げるのに最適な教材を、いくつかご紹介しましょう。 

1.「ENGLISH COMPANY MOBILE」

ENGLISH COMPANY MOBILE」はTOEICなどに役立つ語彙力、リーディング力、リスニング力をスマートフォンでいつでもどこでも鍛えられるWebアプリ。本記事で紹介している「チャンクリーディング」「サイトトランスレーション」「シャドーイング」などの、TOEICの短期間での点数アップに効果的な高密度トレーニングが可能です。

英字新聞Nikkei AsiaとThe Japan Times Alphaの記事をもとした英文教材が定期的に配信されるため、世界の最新ニュースを把握するのにも役立ちます。

2.『公式TOEIC Listening & Reading 問題集 9』

TOEIC対策で必需品となるのが『公式TOEIC Listening & Reading 問題集 9』。試験を作成するETSが本番と同じプロセスで作成した公式問題集です。実際のテストと同じナレーターによるリスニング音声で本番を想定した練習ができます。

付属CDのリスニング音声以外にも、リーディングセクションの一部の音声をスマートフォンやPCにダウンロードして聞ける特典つき。また、参考スコア範囲の換算表でスコア目安がわかり、自分の英語力を客観的にはかることもできる一冊です。

公式TOEIC Listening & Reading 問題集 9

3. 『キクタンTOEIC® L&Rテスト』 シリーズ

リズムに合わせて英単語を覚えられるのが特徴の『キクタン』。そのなかの「TOEIC® L&Rテスト」シリーズでは、500、600、800、990と、目標点数のレベルに応じて知っておくべき単語や表現の学習ができます。覚えるべき優先度の高い単語が品詞別に収録されているのも特徴です。

『キクタンTOEIC® L&Rテスト』 シリーズ

4. 『TOEIC® L&R TEST 初心者特急』シリーズ

TOEICテストを毎回受験している執筆者が出題傾向を分析し、頻出問題、頻出語、頻出ポイントを初心者向けにまとめたものが、『TOEIC® L&R TEST 初心者特急』シリーズ。シリーズは「パート1・2」「パート3」「パート4」「パート5」「パート6」「パート7」に分かれ、苦手なパートを重点的に学習できます。音声ダウンロードが無料でできるため、スマートフォンなどに音源を入れて学習することも可能です。

『TOEIC® L&R TEST 初心者特急』シリーズ

2か月でTOEICスコアを上げるためには、以上のような教材を活用しましょう。

2か月でTOEICの結果を出すための秘策05

2か月でTOEIC300点アップも夢じゃない!

ここまで2か月でTOEICスコアを効率よく上げる学習法を紹介してきました。しかし、ただ学習法を知るだけでは不十分。自分の課題といますべき正しい学習法を知らなければ、効率よく点数を上げるのは困難になります。やるべきことを決めておかないと、何をすればよいか迷い、あれもこれも手をつけて限られた時間を無駄にしてしまうからです。どのようにすれば、自分の課題と自分にいま必要な学習法が把握できるのでしょう。

その答えを早く知ることができる場が、英語パーソナルジム「StudyHacker ENGLISH COMPANY」。第二言語習得研究と英語教育の知見に長けたプロトレーナーが、あなたのいまの課題を発見し、課題をピンポイントに解決するための学習法をご提案いたします。

また、全トレーナーのなかで特に顕著な実績を挙げた「認定シニアトレーナー」が担当するオプションもあり、過去には、たった2か月でTOEIC500→800を実現したり一日1時間しか学習時間がとれなくても900点台に乗ったりした例も生み出しました。

あなたの課題を早く把握し、解決するための「最短ルート」を進めば、2か月でのTOEICスコア大幅アップも決して夢ではありません!

***
「本当に2か月でTOEICスコアなんて伸びるの?」と思っている方は、今回ご紹介した学習法をまず試してみてください。なんとなく勉強していたときと比べて、はるかに早く成果を出すことができるはずです。

参考資料
田浦秀幸(2016),『科学的トレーニングで英語力は伸ばせる!』, マイナビ出版.
夏谷隆治 著, 池谷裕二 監修(2013),『記憶力を磨く方法』, 大和書房.
吉田智佳(2015),「外国語習得のウソ・ホント!?――第二言語習得研究の成果から――」, 外国語教育:理論と実践, 41号, pp.11-24.

【ライタープロフィール】
STUDY HACKER 編集部
「STUDY HACKER」は、これからの学びを考える、勉強法のハッキングメディアです。「STUDY SMART」をコンセプトに、2014年のサイトオープン以後、効率的な勉強法 / 記憶に残るノート術 / 脳科学に基づく学習テクニック / 身になる読書術 / 文章術 / 思考法など、勉強・仕事に必要な知識やスキルをより合理的に身につけるためのヒントを、多数紹介しています。運営は、英語パーソナルジム「StudyHacker ENGLISH COMPANY」を手がける株式会社スタディーハッカー。


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