1つのことを極めるのが素晴らしいという価値観が常識とされています。また、誰にも負けないところまで専門性を高めることがこれからの世界を生き残るコツだという人もいますよね。そんな中で、「1つのことを極めなければ将来が不安だ」「何かに熱中して取り組んだことが無い」などと悩んでしまってはいませんか? そんな人たちに朗報です。実は、1つの道だけを突き詰める必要はなく、むしろ無理やり1つに絞ってしまうのはかえってリスクを高めてしまう可能性があるのです。

今回は、1つのことを極める危険性と、1つのことを極めずに専門性を高める工夫をお伝えします。

1つに絞るのはこんなに危険

1つのことに一生懸命取り組んでいる人を見て羨ましく思う時もあるかもしれません。しかし実は、1つに絞って取り組むことには様々なデメリットがあるのです。

1. どれほど頑張っても上には上がいるというしんどさ
たった1つのジャンルで勝負をしようと思った場合、自分以外の全人類よりも極めない限り、頂点に立つことはできません。現実的に考えると、そんな可能性はほとんど0%に近いと思いませんか。生活の全てをつぎ込んでも、自分の人生を懸けて挑んでも勝てない誰かがいるというのは精神的に苦しいものでしょう。

2. 評価されにくい
どんな分野でも、極めていけばいくほどそれを理解できる人も減っていきます。例えば、芸術の価値を本当に理解できる一般の人はどれほどいるのでしょう。必然的に、専門性の高い部分では多くが同業者からの評価になります。同業者は見る目が厳しいので、褒められることは稀でしょう。しかし、そんななかなか認めてもらえない中でも、不断の努力を続けなくてはいけません。

突き詰めすぎることで、かえって評価を得られなくなってしまうこともあるのです。特に、仕事など周りから評価されるかどうかが重要である場合には、評価する相手のニーズやレベルに合わせたものを提供する必要があります。60点でいいのなら、無理に100点を目指すよりも、70点くらいで切り上げて他のことに時間を使ったほうが有益なのではないでしょうか。

3. 潰しが利かない
物事を極めた例の引き合いに出される代表的な人物として、イチロー選手が挙げられます。昨年、メジャーリーグ通算3000本安打を達成した彼は、まさしく野球を極めた人物と言えるでしょう。しかし、もし野球のルールが改正されて、ホームランしか得点につながらないというルールになったら、すなわち安打が無価値になってしまったとしたら、どうなるでしょうか。イチロー選手が今のように称えられることは無くなってしまいます。実際に野球がそのようなとんでもないルールになることは考えにくいことですが、現実の社会では、今まで自分がやってきたことが一夜にして無価値になり得るのです。技術の進歩は著しく、10年後には大半の仕事が無くなっている可能性のある現代で、1つの物事だけに自分のリソースを割くのは危険すぎます。

以上の点から、1つのことだけを突き詰めるのではなく、幅広く取り組むことが重要だと分かります。では、具体的にはどうやって取り組んでいけばいいのでしょうか? 次に、多くの分野で専門性を高めていくためのコツをご紹介します。

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3分野以上のことを学ぶ

1つの分野を極めずとも、代わりのいない独自の能力や魅力を持つことは可能なのです。それが、「複数分野を同時進行で学ぶ」ことです。あまりに多すぎても身にならないので、3~4個がベストでしょう。

1つの分野において、その上位1%に入るには尋常ではないほどの努力と才能が必要になります。しかし仮に3分野を同時に学ぶことができれば、それぞれの分野の上位20%に入っただけで、その3つの能力を合計して比較した場合には0.2の3乗で0.008、つまり上位1%以内に入れるのです。これをさらに広げて4つの分野にすれば上位0.2%以内に入れることになります。1つのことを極められないとしても、数でカバーすれば同じくらいの独自性が手に入るのです。物事はうまくなればなるほど成長率が下がりますから、その点でも、1つの分野に取り組むよりも多分野に渡って学んだほうが効率が良いと言えるでしょう。

このように、複数分野を組み合わせたことで成功したのが、ダンスパフォーマーの蛯名健一さん。彼はアメリカのオーディション番組「America’s Got Talent」(アメリカズ・ゴット・タレント)で日本人初の優勝を果たしました。彼自身は自分の技術の大半が二流のものだと言っていますが、それらの技術を組み合わせることで、ダンスという1つの道を極めた人達を越え、一流以上のパフォーマンスができたのです。彼のパフォーマンスは、ダンスだけでなく、武術やマジックの要素なども取り入れられています。だからこそ、観客も飽きることなく見ることができたのです。もしダンス一本のパフォーマンスをしていたら、それが超一流のものだったとしても優勝はできなかったでしょう。

パフォーマンスの世界だけでなく、ビジネスの世界でも同じことが言えるはずです。例えば、同じプログラマーであっても、本業のプログラミングだけでなく、人間心理やマーケティングも学んだ人であったら、より顧客に適したものを提供できますよね。

マッチョ社長としてインターネット上で有名なTestosteroneさんは著書の中で以下のようなアドバイスをしています。

何をやっても続かないという方にお勧めの方法があります。何かを始めるときは3つ同時に開始して下さい。
①新鮮で飽きない
②どれかが上達中なので停滞期も耐えられる。
③上達中のことに時間を集中配分できる。
④向き不向きの特定ができる
という理由から一点集中よりも長く続き身になります。

(引用元:Testosterone著(2016),『筋トレが最強のソリューションである マッチョ社長が教える究極の悩み解決法』,株式会社ユーキャン学び出版.)

重要なのは特に2と3です。どんな物事も停滞期というものは必ずありますから、1つのことしかやっていない場合、停滞期は精神的にとてもしんどくなってしまいます。しかし複数の分野に同時に取り組んでいれば、1つが停滞期に突入してしまっても他の分野に打ち込むことで自分が成長している実感を得られます。さらに、そこで学んだことが停滞期を脱するヒントになるかもしれません。

例えば仕事だけに一心に取り組んでいると、苦手な部分で同じミスを繰り返し落ち込んでしまう場合もあるでしょう。しかしそんな時に、仕事だけでなく、趣味に関する資格を勉強したり、今やっている仕事とは一見関係なさそうな分野について学んだりしてみるのです。取り組む中で向いていないと思ったら、やめてしまってかまいません。それを繰り返すことで、だんだんと自分の得意分野が分かってきて、その強みを活かした仕事の仕方、学び方が身についてくるでしょう。

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打ち込める何かがあって、それをやることが楽しくて仕方ない方は、スペシャリストになるという道もあるでしょう。しかし、そうでない人が、世間の言う通りに何かを極めようとすることはお勧めできません。自分の興味が惹かれ役に立ちそうな分野をいくつか見つけて、努力を分散させましょう。3つ4つのことをできるようにすればいいのです。他にも興味があることを簡単に知っておけば、労力に対してかなり分のいいリターンが見込めるはずです。

(参考)
蛯名健一著(2014),『見せ方ひとつで世界でも勝てる』,角川書店.
Testosterone著(2016),『筋トレが最強のソリューションである マッチョ社長が教える究極の悩み解決法』,U-CAN.
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