要領よく仕事ができる人は「ワーキングメモリ」の働かせ方がうまい。コツは15分の使い方にあり!

時間を見ながら要領よく仕事をしているビジネスパーソン

仕事と記憶は切っても切れない関係にあります。資格勉強のために暗記をするといった意味での記憶だけでなく、目の前の仕事をそつなくこなすにも、「この仕事にはあのときの進め方が合いそうだ」「あの人に相談してみよう」など、過去の経験による記憶が大きな働きを果たします。

そして、記憶能力のなかでも特に重要なものとして「ワーキングメモリ」というものを挙げるのが、脳の機能を活かした人材開発を行なう作業療法士の菅原洋平さんです。

構成/岩川悟 取材・文/清家茂樹

【プロフィール】
菅原洋平(すがわら・ようへい)
1978年8月30日、青森県生まれ。作業療法士。ユークロニア株式会社代表。国際医療福祉大学卒業後、作業療法士免許を取得。民間病院精神科勤務後、国立病院機構にて脳のリハビリテーション業務に従事。その後、脳の機能を活かした人材開発を行なうビジネスプランをもとにユークロニア株式会社を設立。現在、東京・ベスリクリニックにて外来を担当するかたわら、企業研修を全国で展開している。『あなたの人生を変える睡眠の法則』(自由国民社)、『「めんどくさい」が消える脳の使い方』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)、『「できない自分」を脳から変える行動大全』(扶桑社)、『「やらなきゃいけないのになんにも終わらなかった……」がなくなる本』(WAVE出版)など著書多数。

【ライタープロフィール】
清家茂樹(せいけ・しげき)
1975年生まれ、愛媛県出身。出版社勤務を経て2012年に独立。ジャンルを問わずさまざまな雑誌・書籍の編集に携わる。

ストックした情報を次の行動に活かす「ワーキングメモリ」

「ワーキングメモリ」とは、日本語では「作業記憶」と呼ばれます。いくつかに分類される記憶能力のひとつで、「なんらかの情報を脳内にいったんストックしておき、別の作業をしていてその情報が必要になったときにタイミングよく思い出して使う能力」のことです。

「ストックしておいた情報を、その場の作業に必要なかたちに加工して思い出す」ところが特徴ですから、単純に「覚えて思い出す」という、いわゆる短期記憶とは異なる能力となります。

ちょっと難しい説明になったかもしれませんから、このワーキングメモリがうまく働いている状況の具体例を挙げてみましょう。コロナ禍以降、在宅でリモートワークをしている人も多いと思います。その場合、仕事と並行して家事などもこなすこともありますよね。

すると、台所で食器を洗っているときにも、直前にやっていた仕事のことをぼんやりと考えているものです。「そういえば、前に同じような課題にぶつかったな」「あの方法じゃなくてこっちの方法が合っているかも」「よし、仕事を再開したらこうしてみよう」というように考えることも多いのではないですか?

それが、まさしくワーキングメモリの力が発揮された瞬間です。過去の別の作業によりストックされていた情報が、いま進めている作業に関する情報と連結されることでひらめきのようなものが生まれるのです。

ストックした情報を次の行動に活かす「ワーキングメモリ」について語る菅原洋平さん

ひとつの作業を続けると、ワーキングメモリは働かない

ですから、ずっと同じ作業を続けているとワーキングメモリを上手に使いにくいということになります。つまり、ワーキングメモリの使い方が下手な、いわば要領が悪い人は、作業が停滞していたとしても「とにかくこれを終わらせなければ」と、デスクに座りっぱなしでひとつの作業を続けるような人に多いと言えます。

お風呂にまでスマホを持ち込んでいる人は、ワーキングメモリの使い方が下手な人の典型です。本人としては「お風呂でもスマホで要領よく仕事をするぞ」と考えているのかもしれません。

でも、ワーキングメモリが働くには、入力した情報を加工する時間が必要なのです。胃や腸などの消化器官をイメージするとわかりやすいかもしれません。情報の入力をずっと続けるというのは、いわば食事をし続けて消化しないようなもの。栄養素に分解されないと食べた意味がないのと同じように、脳が加工処理できないままの情報はその後の作業に有用な情報とはなり得ないのです。

そう考えると、ワーキングメモリの上手な働かせ方が見えてきます。作業を切り替えるのです。そのために有効な手段のひとつが、目の使い方にあります。

パソコンのモニターを見て情報を得るなど、ひとつの作業に没頭しているときの目の使い方は、「焦点視」と呼ばれます。たとえるなら、目の焦点を合わせて情報を食べているのです。そこで、たまにぱっと目線を離してみましょう

そして、どこを見るというわけでもなく、ぼんやりとどこにも焦点が合わないような目の使い方をします。これを焦点視に対して「周辺視」と呼びます。この周辺視をしているときにワーキングメモリが働いて情報の加工を始めるので、たまに目線を外すだけでもワーキングメモリをより有効に使えるようになるはずです。

パソコンでの作業を止め、目線を外しているビジネスパーソン

脳の仕組みとして、集中力は16分しか続かない

ただ、目線を外すタイミングは自分ではなかなかつかみにくいものです。そこで、「15分サーキット」というメソッドをおすすめします。これは、複数の作業がある場合、それぞれの作業時間を15分ごとに区切る方法です。

この方法が有効な根拠は、「マインドワンダリング」にあります。マインドワンダリングとは、目の前にやるべき作業があるのに「あの作業も進めなければ」「このあと、なにを食べようか」というように、別の思考にとらわれてしまうことです。

そして、このマインドワンダリングは約16分に1回のペースで起こるという研究結果があります。つまり、集中力は約16分しか続かないのです。しかも、これは脳の働きとして起こるものですから、本人の頑張りや意志などとはなんら関係がありません。

16分という数字は中途半端ですから、きりがいいところで15分たったら作業を切り替えるようにします。ABCDという4つの作業があるのであれば、Aから順に15分ずつこなし、Dの作業が終わったらまたAに戻ります。

そうすることで、最初にAの作業をしていたときにストックした情報をほかの作業をしているあいだにワーキングメモリが加工処理できるため、Aの作業を再開したときに新たなひらめきなど有用なかたちで活かしてくれるようになるのです。

要領よく仕事ができる人は「ワーキングメモリ」の働かせ方がうまいことについてお話しくださった菅原洋平さん

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