仕事や勉強だけでなく、日常のさりげない時間を過ごしているときでも重要になってくる記憶力。できれば鍛えたいものですが、「記憶力は生まれつきの能力だ」と思ってあきらめている人はいませんか。

実は、記憶力は伸ばせないものではありません。アメリカで行われている記憶力選手権に出ている選手たちの多くは、地道なトレーニングの末に、素晴らしい記憶力を発揮することができているそうなのです。

つまり、記憶力は努力次第で向上させることができるということ。ではどのように鍛えたらよいのでしょうか。その方法を、世界の記憶王たちから学んでいきましょう。

記憶術の5つの基本

あのギネスブックに記憶力世界一として載ったことのある記憶王のエラン・カッツさんによると、記憶術には5つの基本があるそう。それは次の5つです。

1 注意を払う
2 連想を使う
3 整理・分類する
4 興味を持つ
5 熱意を持つ

(引用元:PRESIDENT Online|ギネス認定! 「世界一の暗記王」記憶の引き出し整理術【1】

この基本をうまく使えるようになると記憶力は飛躍的に向上するのだと言います。以下、「興味と熱意を持ち、注意を払うこと」と「整理・分類して関連付け、連想すること」にわけて、それぞれの記憶力向上効果について詳しく見ていきましょう。

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興味と熱意を持ち、注意・集中して覚える

何事でも覚える際には、「その対象に興味や熱意を持ち、注意する」ことで簡単に覚えることができます。これは言われてみれば当たり前のことですが、結構忘れがちになってしまうことでもあるのです。

例えば人の名前を覚えるとき、その人に対して興味を持って注意して覚えようとしていますか? よっぽど特徴のある人以外は、名前という一見無味乾燥としたものをそのまま覚えておくことはできませんよね。ここでその人に興味を持とうと努力したらどうなるでしょう。この人はどうしてその名前を親からつけられたのだろう、とか、この漢字はどういう意味なのだろう、などと気になっては来ませんか? また同時に、どんな顔つきで、どういう容姿なのかにも着目し始めると思います。そうやって、頭の中で憶えようとしている対象を深く考えることで、記憶として定着しやすくなるのです。

このことは、ほかのことを覚えたいときにも使えます。例えば家を出るときに、鍵をかけるという行為そのもの、かけたという事実に注意して着目すれば、あとで「鍵かけたっけ?」などと思わずに済むのです。

もちろん、仕事でも勉強でも、さまざまな場面に応用が可能。生活の場面場面で、物事に興味を持ったりいちいち注意したりすることを習慣付けるようにしましょう。

物事を整理・分類してから、関連付けして連想する

次に見ていくのは、「整理・分類して関連付け、連想する」ということ。

こんな実験があるようです。被験者たちに単語を一つ覚えてもらうのですが、ある被験者には人名のBakerを、ある被験者にはパン屋さんを意味するbakerを、覚える単語として設定します。すると、人名のBakerを覚えた人たちより、パン屋さんを意味するbakerを覚えた被験者の方が、記憶が持続したそうです。

つまり、意味があまりない単語より、意味があって容易に想像ができ、ほかの言葉(今回の例で言えば、焼き立てのパンの匂いや、好きなパンの種類など)とも関連付けられる単語の方が、記憶に残りやすいということです。

脳科学では、人間の脳は記憶するときに、すでに持っている記憶と結び付けて覚えると言われています。ですから、覚えたい物事を別のことと関連付けて覚えるということは、脳の記憶の構造から考えても非常に効率が良いといえるのです。

無意味な単語でも、そこから意味がある言葉を関連付けて連想するトレーニングを日々行っていれば、記憶が定着しやすくなります。先ほどの例で言えば、Bakerからbakerへと連想し、「パン屋を経営しているベイカーさん」を頭の中で想像すれば良いわけですね。(これは簡単すぎる例ですが……)

また、「整理・分類する」ということが連想に大いに役立ちます。散らかった部屋よりも、服はタンス、本は本棚に分類してある部屋のほうが、どこに何を置いたか覚えやすく思い出しやすいですよね。それと同様で、情報も分類し整理をしてから記憶すると非常に覚えやすいのです。分類すると、周辺情報が関連事項になりやすいので(例えば、服とタンスが関連している)、連想がしやすくなるというわけです。

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最強の記憶テクニック「記憶の宮殿」とは

さきほど紹介した連想の訓練を積めば、最終的には、膨大な量の暗記を一気に行うことができる「記憶の宮殿」というテクニックを身に着けることができるのです。

「記憶の宮殿」とは、自分の家や大きな宮殿、会社への道のりなどに、自分の覚えたいことのイメージを次々に配置し、それを辿ることで思い出していくというテクニックです。配置するイメージは、大げさで不気味で怖ろしいものの方が思い出しやすいとされています。この方法は、人間は文字や数字よりも、空間的、視覚的なイメージの方が記憶に残りやすい、という性質をうまく利用した記憶法。実際、記憶力選手権に出場する多くの選手はこの方法を使っているようです。

例えば、この方法に興味を持ったジャーナリストのジョシュア・フォアさんは、この方法を自ら試し、なんと、全米記憶選手権で優勝してしまったそうです。

イメージを配置するという「記憶の宮殿」テクニックは、物を覚えるときに限らず、例えばスピーチをする時にも使えます。自分の話したいことをイメージし、それを順に配置していくのです。そうすれば、一語一句を覚えることは難しくても、伝えたいことや順番はすべて覚えられます。

また、数字の羅列に対しても有効。あらかじめ1→a、2→b等と対応表を作っておき、言語化し、部分ごとに区切って、宮殿に配置すればよいのだそう。例えば、「271827」という羅列を3文字ずつ区切って「bga/hbg」と言語化し、BiG AnimalとHamBurGerを配置するという具合です。詳しくは、円周率の覚え方を解説しているジョシュアさんの動画を参照してください。

「記憶の宮殿」を作り上げるには努力が不可欠です。一見、関連しない単語群を使って「記憶の宮殿」を作る訓練を行いましょう。そうすればいつか、記憶力選手権で優勝できる、かも?

ちなみに、この方法、2500年前の古代ギリシャからあるそうで、英語で「はじめに」を意味するフレーズ“in the first place”の“the first place”(直訳で「最初の場所」)とは、「記憶の宮殿」の最初の場所、つまり玄関を意味するんだとか。

***
「記憶の宮殿」というテクニックも紹介してきましたが、一番重要なことは、やはり最初に説明した、興味をもつ、熱意を持つということ。先述したジョシュア・フォアさんは次のように言います。

我々の人生は 記憶そのものだ

(引用元:TED|Feats of memory anyone can do

自分が何者かを考えるときには、必ず過去を振り返ると思います。しかしその過去とは、あくまで自分の記憶の中にあるもの。もし記憶がなくなってしまったら? そう考えると先ほどの言葉も腑に落ちるかと思います。もう一度ジョシュア・フォアさんの言葉を借りると

スマートフォンに熱中したり 自分と会話している 目の前の人に 関心を寄せなかったり 怠けて深く考えようとしないことで それでなくても短い人生を どれほど無駄にしているでしょう? どれほど無駄にしているでしょう?

(引用元:同上)

なるほど、何事にも興味を持ち記憶すること、それが人生を豊かにするための鍵なのでしょうね。

(参考)
PRESIDENT Online|ギネス認定! 「世界一の暗記王」記憶の引き出し整理術【1】
SelfGrowth.com|How To Memorize Anything. Part 1) Napoleon’s Secret Method For Memorizing Names
TED|Feats of memory anyone can do
YouTube|Memory Champion Teaches You How to Memorize Anything
wikiHow|How to Build a Memory Palace