「本を速く読めて記憶にも残せる人」が読書で大切にしていること。意外にも○○は後回しでいい

開いた状態で置かれている書籍

「限られた時間でより多くの本を読むため、読むスピードを上げたいけれど、内容もきちんと記憶したい」
「多くの本から知識を得て、仕事や勉強に活かしたい」

そう感じている人には、脳の特性を活かした速読術がおすすめです。

この記事では、速く読みながらもしっかり記憶する読書法を、筆者の実践も交えて紹介します。ぜひ参考にしてみてください。

【ライタープロフィール】
澤田みのり
大学では数学を専攻。卒業後はSEとしてIT企業に勤務した。仕事のパフォーマンスアップに不可欠な身体の整え方に関心が高く、働きながらピラティスの国際資格を取得。現在は国際中医師合格を目指し毎日勉強している。勉強効率を上げるため、脳科学や記憶術についても積極的に学習中。

本を速く読もうとする人が見落としがちなこと

直近で読んだ本について、「その本のどんな内容が勉強になった?」と聞かれた場合、即座に答えられますか? すぐに答えられないならば、読み進めることにばかりとらわれ、本の内容をきちんと理解できていないかもしれません。

じつはこれ、実際に筆者がされた質問です。おもしろかったという印象は残っていたものの、急いで読んだため具体的な内容を思い出せませんでした。

速く読んでも記憶に残らないのは「脳の特性に適していない」読み方だからだと話すのは、脳電気生理学者の下村健寿氏。以下のふたつが、記憶に残りにくい理由だと言います。

  1. 「内容を本質的に理解していない」
  2. 「速く読むことばかりを追求しており、そのスピードに脳の処理速度が追いついていない」

(カギカッコ内引用元:STUDY HACKER|脳科学研究で唯一有効とされた「速読術」。手書きノートも活用すれば理解と記憶がさらに進む

ひとつめは、勉強に置き換えて考えるとわかりやすいでしょう。一夜漬けで丸暗記した内容は忘れやすいのに、じっくりと理解しながら勉強したことは長く記憶に残っていますよね。読書においても、ただ読むだけの場合と理解しながら読む場合とでは、記憶の定着に大きな差が出るのです。

ふたつめを考えてみると、読んでも内容が頭に入らず、何度も直前に戻って読み返す場面が挙げられます。これはまさに、下村氏の言うように読む速さと脳の処理速度が合っていない状況。“読んだだけ” にならないためには、理解して記憶することを見落としてはいけないのです。

そうはいっても、理解しながら読むのは時間がかかりそうだと感じる人もいるでしょう。しかし、脳の特性に適した読み方をすれば「きちんと理解しながら速く読む」のが可能だと、下村氏は言います。(カギカッコ内引用元:同上)

次の章で詳しく説明しましょう。

脳の特性に適した読み方で本を読む女性

本を速く読むうえで大切にすべき “意外” なこと

1. 解説部分は後回し・飛ばし読みでいい

下村氏が脳の特性に適した読み方としてすすめるのが、「スキミング」です。

「文章の構造に着目」した速読術で、「理解しながら速く読む」ことができ、「脳科学研究でただひとつ有効だとされている」そう。やり方は、次のとおりです。

  1. 文章が「章」と「節」に分かれていることを意識する
  2. 「節」のなかの「『導入』→『解説』→『結論』」の流れを意識する
  3. 「導入」を読む
  4. 「結論」を読む
  5. 「解説」を読む

まず、何について書かれているのかを導入で把握し、それに対する結論を知ったうえで解説部分を読むのです。下村氏によれば、意外にも解説部分は「飛ばし読み」でもいいそう。導入と結論に目を通し、気になる点があったときだけ解説部分を読むようにしてもいいかもしれません。(本項内ここまで カギカッコ内引用元:STUDY HACKER|脳科学研究で唯一有効とされた「速読術」。手書きノートも活用すれば理解と記憶がさらに進む))

また、ブレインコーチ(記憶力の改善、脳の最適化、加速学習の分野で知られる世界的エキスパート)のジム・クウィック氏は、「読む量と難易度」が変化しているにもかかわらず、「子どもの頃と同じ読み方」をしているのも速く読めない理由のひとつだと指摘。(カギカッコ内引用元:東洋経済オンライン|本を読むのが「遅い人&速い人」の決定的な違い

ライフステージの変化によって、読む本に書かれている知識のレベルは変わるものです。それにあわせて、読む技術もアップデートするのが大切なのですね。

2. 読み返さない

速く読むためには、何度も読み返さないことも重要です。クウィック氏は、何度も読むことを「読書のプロセスを著しく破壊し、読む速度も遅くしてしまう」行為だと語ります。(カギカッコ内引用元:同上)

読み返さないと内容が頭に入らない……という方は、次の方法を試してはいかがでしょう。何度も読み返すことを防ぐため「目次やまえがきを読み、概要を頭に入れてから読書をはじめ」るのです。これをすすめるのは、株式会社瞬読 代表取締役の山中恵美子氏。(カギカッコ内引用元:株式会社 瞬読|読書スピードを上げるには、音読を止めて視読にシフトしよう

最初に概要をつかむのは、先述のスキミングの考え方にも通じていますよね。構造を意識すると、読み返しを防げて、読書効率を上げられるメリットもあるのです。

それでも、読み返したくなることもあるかもしれません。その場合は、文章を指でなぞりながら読むといいでしょう。前出のクウィック氏いわく、「指を使うと逆行が大幅に減」り、「読む速度が上がる」そう。(カギカッコ内引用元:東洋経済オンライン|本を読むのが「遅い人&速い人」の決定的な違い

スキミングとあわせて指で文字をなぞりながら読めば、理解しながらもより効率的に読書ができそうです。

読み返しを防ぐために文章を指でなぞりながら読む人の手

脳に定着させるための速読術とノート活用を実践してみた

少しでも多くの本から知識を得たい筆者も、これまでのポイントをふまえた読み方を実践しました。

前出の下村氏は、「強い記憶として脳に定着」させるための「ノートの活用」もあわせてすすめています。

なぜなら、手書きすることが記憶を強化してくれるからです。できれば、内容から連想したイラストなども書き込んでいくとなお効果的でしょう。

(カギカッコ内および枠内引用元:STUDY HACKER|脳科学研究で唯一有効とされた「速読術」。手書きノートも活用すれば理解と記憶がさらに進む

筆者も、記憶をより確かなものとするためにノートを活用することに。イラストなどが描きやすいよう無地のノートを選びました。

脳の特性を活かした速読術実践のために用意した無地ノート

まずはスキミング。読み返し防止のため、文字をなぞりながら読むことを意識しました。すぐにメモできるようペンを手に持ったまま、文字をペン先でなぞって読みます。

そしてノートについては、下村氏が「左ページには、本を読みながら気になったことや疑問に思ったこと、自分なりに理解したことなどを書き込んでい」くと「短期的な記憶の形成を助け」ると説明していたので、下の画像のように左のページに書き込みをしました。(カギカッコ内引用元:同上)

振り返りやすいように、章の始まるページ数もメモしています。

脳の特性を活かした速読術の実践ノート

下村氏いわく、ここまでの過程でつくられるのは「短期的な記憶」であるため、「1か月後くらいをめどにもう一度インプットする」といいとのこと。(カギカッコ内引用元:同上)

それを実践したのが、こちらです。

脳の特性を活かした速読術のひと月後のアウトプット実践

(実践画像はすべて筆者作成)

元々空いていた右ページには、左ページにメモした内容をあらためて自分の言葉でわかりやすく書き記しました。忘れていた箇所のみ本を読み返し、その部分についてはオレンジ色にで新たにメモを記入

また、覚えてはいるものの疑問が湧いた部分は青色にして区別しました。この疑問は読んでいた本だけでは解決しないと感じたので、次回読む本を選ぶときの参考にしようと思います。

読むべき箇所の取捨選択が速くなり、アウトプット効果で記憶力もアップ

今回ご紹介した本の読み方を試した結果、読む速さと記憶定着へのよい影響を感じられました。

速く読めたのは、適度に飛ばし読みができたからだと思います。章のテーマと結論を把握したので、あいだの解説を読むべきなのかどうか判断しやすくなりました。ただ、筆者の読んだものは一節が短く、このような本の場合は章全体の最初と最後を読むといいかもしれません。

また、これまでは読書の途中で考え事をしたりぼーっとしたりして、読むのが止まってしまうこともよくあったのですが、今回の実践ではペンで文字をなぞることで自然と意識がペン先に向き、すらすら読み進められるのを実感しました。

そして、覚えている内容をノートにアウトプットすることで知識が整理され、記憶力が高まったとも感じました。読書記録であれば、筆者もいままでに何度もつくったことがあります。ですが結局忘れてしまうことが多く、今回も1か月も経てば忘れるのではと思っていたので、意外と覚えていたことに驚きました。

ノートの活用は、記憶定着のためにとても重要です。外出先で読書する際などノートを開けない場合は、付箋に簡単に記録し、あとでノートに貼ってもいいかもしれません。

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限られた時間でより多くの本を読みたい。読むスピードを上げつつ、内容もきちんと記憶したい――そんな方の参考になれば幸いです。今回ご紹介した読書法を、ぜひ試してみてくださいね。

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