日々の仕事に追われてたまっていくストレス。仕事も勉強も毎日一生懸命やっているけど、調子よく成果がでない。それになにより、いつもいつも忙しくて、疲れが取れない……。

このような悩みを抱えているビジネスパーソンの方はいることでしょう。都会に暮らし都会で仕事をしている皆さんの、そうした心身のトラブルに拍車をかけるのが、都市の喧騒です。一般的によく知られているように、騒音は、心理的な悪影響、睡眠妨害、高血圧のような健康被害など、私たちに悪い作用をもたらします。

喧騒が良くないなら、静寂を求めたくなるもの。実は静寂には、ビジネスパーソンが享受すべき様々なメリットがあることが分かっているのです。

日々のストレス、調子の悪さは、静寂によって解消できるかもしれません。この記事では、静寂が私たちにもたらすメリットをご紹介します。

1. リラクゼーション効果

心臓病専門医のルシアノ・ベルナルディ(Luciano Bernardi)氏は、2006年に発表した論文の中で、静寂の重要性を示しています。

ベルナルディ氏は、被験者に対し、6種類の音楽を聞かせながら血圧・脈拍などを測定しました。すると、各曲の合間にある2分間の静寂のタイミングで、血圧や心拍数が平常時以下に低下するということが分かりました。

この結果を踏まえベルナルディ氏は、音楽には覚醒を促す働きがある一方で、静寂にはリラクゼーション効果があると結論付けています。

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2. 記憶力の向上

デューク大学の神経学者インケ・キルステ(Imke Kirste)氏は、2013年に、ネズミの神経形成に聴覚刺激が与える影響について実験を行いました。その結果、ホワイトノイズ(「シャー」と聞こえる雑音)、子ネズミの鳴き声、モーツァルトの楽曲をそれぞれ聞かせたネズミよりも、無音状態にあったネズミの方が、より多くの神経細胞を形成していたことが分かりました。1日2時間を無音状態で過ごした場合に神経細胞の形成が最も促進される、ということも示されています。

キルステ氏は、このような結果になった理由を、脳は無音状態の中でも本来あるべき音を聞こうとするため、それによって神経細胞が刺激されるからだ、と説明しています。

重要なのは、これらの神経細胞が海馬で形成されたということです。海馬は記憶や空間学習能力に関わる脳の部位。アルツハイマー型認知症を発症すると最初にダメージを受ける部位です。

このことから、静寂の中で過ごし、海馬内の神経細胞形成を促すことは、記憶力の向上や認知症予防につながると考えられるのです。

3. 内省の促進

外界からの刺激がない状態でも、脳が完全に休まるということはありません。ワシントン大学の神経生物学者マルクス・レイチェル(Marcus Raichle)氏は2001年に、脳にはある種の「デフォルト・モード」があるということを発表しました。たとえ脳に対する外部からの刺激がなくても、思考や創造性を担う前頭前野は情報を集めようと活動しているのです。

その後の研究の結果、デフォルト・モードは内省と関連性が高いということが判明します。2013年に認知科学の研究者であるジョセフ・モーラン(Joseph Moran)氏は、デフォルト・モードは、自身の性格や特徴について内省している際に発生することが多いことを突き止めました。

つまり、外界からの刺激がない場合、脳はデフォルト・モードになり、自らの中に刺激を求める結果、内省が促されるのです。忙しさに追われストレスがたまっている時こそ、静寂の中で、自分の考えや行動を深く顧みるのもいいでしょう。心がすっとするかもしれません。

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都会で静寂を手に入れる方法

日々都会の喧騒の中で忙しく働くビジネスパーソンの場合、静寂なんて求めている余裕がないという方もいるかもしれません。ですが、そんな方々でも静寂の恩恵にあずかる方法はいくつかあります。

一般的で手軽な手段としては、ノイズキャンセリング機能のあるヘッドホンの使用が挙げられます。また、スケジュールが許せば、図書館やレンタル自習室、あるいはビジネスホテルをデイユースで利用するなどして、休憩がてら静かな時を過ごしてみましょう。

これらに加え今回おすすめしたいのが、「お寺で座禅を組む」という方法です。座禅を組むという行為に敷居の高さを感じるかもしれませんが、現在多くのお寺で初心者向けの座禅会が開催されています。例えば、東京禅センターは都内各所で座禅入門会を開催しています。夜の座禅体験、ZEN Cafe in表参道など、ビジネスパーソンでも気軽に参加できるプログラムも開かれています。予約制の会もあるので、一度ホームページをチェックしてみてはいかがでしょうか。

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ちなみにフィンランド政府観光局は、静寂をテーマに観光客を呼び込もうとしているようです。フィンランドの大自然での静寂、ぜひ味わってみたいものですよね。

フィンランドに行ったり大自然に出かけたりしなくても、都会にいながら静寂を得ることは可能です。ストレス解消や心身のコンディション向上のために、ぜひ静寂を求めてみてはいかがでしょうか。

(参考)
教えて!認知症予防|脳と記憶のメカニズム記憶は2種類ある
成田市|第2章 騒音評価及び騒音影響に関する知見
Bernardi, L. (2006), “Cardiovascular, cerebrovascular, and respiratory changes induced by different types of music in musicians and non-musicians: the importance of silence,” Heart, 2006 Apr; 92(4): 445–452.
Kirste, Imke. (2013), “Is silence golden? Effects of auditory and their absence on adult hippocampal neurogenesis,” Brain Structure and Function, March 2015, Volume 220, Issue 2, pp 1221–1228.
NAUTILUS|This Is Your Brain on Silence
Wikipedia|ホワイトノイズ